• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

    アイルランド人プロデューサーEomacと、日本人アーティストKyokaのコラボレーションプロジェクトに迫る。…

    Interviews
by Evan Shamoon

ゲームサウンド〜創造と現実の狭間で

ゲームをテーマにしたサンプルをSounds.comに提供している製作メーカー数社にインタビューを敢行。彼らのプロセスやインスピレーションについて尋ねた。

音楽と同じように、ゲームはいつでもその時代の文化の象徴として機能してきた。Atari2600やCommodore64のような初期のゲーム機や家庭用コンピューターから、任天堂やセガが支配した8ビットや16ビット機の時代に至るまで、今やゲームは、娯楽製品としての人気を長い間保ち続けている代表的な人工遺物として、科学技術の進化を象徴している。

現代の科学技術を用いれば、クリエーターは想像しうるあらゆるサウンドをデジタルで作り出すことができる。その一方、レトロなゲームの音楽や効果音の制作に使われた旧式のチップセットは、特に技術的な制限があるが故に、近年高く評価されている。 今日では遺物となった古いハードウェアの限界を越えるために、当時のプロデューサーが臨んだ驚くべき方法が、そのサウンドを歴史に永遠に刻み込むこととなった。

ゲームで遊ぶことに費やした膨大な時間は、エレクトロニック音楽のプロデューサー達の多大なインスピレーション源となった。 Cocoa Brovasの「Super Brooklyn」やDel the Funky Homosapienの「Protoculture」といったクラシックゲームのサウンドをこよなく愛するヒップホッププロデューサー達から、現代的なメタルギアソリッドシリーズを過激にサンプリングしたBurialに至るまで、しばしば、ゲームとエレクトロニック音楽には相通じる文化的精神があるかのように見える。

このレガシーを祝うため、Sounds.comにゲームをテーマにしたサンプルを提供している素晴らしい製作メーカー数社にインタビューを行い、彼らのプロセスやインスピレーションについて尋ねた。

Haunted House RecordsのStephen Hauntsが「Old Skool Computer Games」のアイデアを思いついたのは、初期Commodore-64のタイトルの波形で波乗りをしている時だった。 「僕はC64が現役だった80年代の人間です」と言う。 「子どもの頃はC64、Dragon32、Spectrumを持っていましたが、一番好きだったのはC64の音でした。C64とSIDの音楽シーンは今でも盛んで、中には本当に素晴らしいものもあります」

しかしながらHauntsは、このリリースに収録された374のサウンドエフェクトを作るにあたり、現代的なテクノロジーに目を向けた。 彼は「Ableton Liveのビットクラッシャーやエフェクトプラグインのコンビネーション、そして時々、音源をギターペダルに通して録音しました」と言うが、実は彼は同時にサーキットベンディングのファンで、古い子供用のおもちゃの配線を弄り、荒々しいサウンドを鳴らすのが大好きなのだ。 「以前はああいった技術でバーストノイズを作り、その音を出発点にしていました。 今は主にMacとLogic Pro、それから信頼できるフィールドレコーダーと、ラップトップいっぱいのクレイジーなプラグインを使っています」

Video Game Sound Effects Vol. 1」と「Video Game Sound Effects Vol. 2」のリリースにおいて、サウンドデザイナーのAlex Retsisは、本物のCommodore-64チップを使い、様々なモジュレーション技術とマトリックスを駆使してサウンドエフェクトのプログラムと録音を行った。 「カスタムプログラムされたサウンドカートリッジを使って、改良された本物のAtari 2600やAtari 2600で作成した効果音やアクセントを付け加えながら、サウンドを強化しました」と説明した。 Retsisによると、これらの機材は、出力から不要なノイズを取り除くために「プロ仕様に改造」されているとのことだ。(しかし、彼が指摘するには、プロセスの最後で、オーディオフィルターとEQがさらに必要となるようだ)

「どのサウンドもオリジナルのソースからキャプチャーしたので、ローファイ化する特別な処理は何も必要ありません」とRetsisは続けた。 彼の主なワークフローは、機材やミュージックトラッカー内部のシーケンスやモジュレーションテーブルで実験しプログラミングすることから始まる。次に、さらに処理を加えるために、それらを高いサンプルレートで録音する。 「どのコンソールにも独自の秘密があります」と彼は言う。 「正直なところ、何10年経った今でも、電源を入れて操作するたびに素晴らしいサウンドに出会うのです!」

Retsisのローファイサンプルの制作ワークフローの詳細は、昨年行われたMASCHINE Expansion「Byte Riot」のインタビューを参照して欲しい。

Carma Studioの「Video Game Phrases」は、他とはやや発想が違う。ゲームは音源としてでなく、アイデアの出発点として機能しているのだ。 このパックに収録された600のサウンドは、80年代のレトロなアーケードマシンからインスパイアされたもので、5人の架空ゲームキャラクターのボーカルスタイル(8-bit Low-Res Man や Computer Room Manなど)で、チョッピング可能なローファイフレーズを作ることができる。 「ローファイエフェクトには、過激なEQ設定と、D16のDecimort 2を使いました」とCarmaのJim Stoutは語る。 「このビットクラッシャーは私のお気に入りです。D16の製品は長いこと使っていますが、いつも素晴らしい結果をもたらしてくれます」 一方、「Computer Voice」では、同じEQとMeldaProductionsのMComb (コム・フィルター)を使っている。 「コンピューターのボイスエフェクトの混ぜ方が見事で、元の声の抑揚がうまく残っているんです」

「Tough Guy」のサウンド(Duke Nukemを思い出して欲しい)を作るにあたり、Stoutは声優にもっと「マッチョな」抑揚をつけるようにオーダーした。そして、Lexicon Pitch ShifterとSoundToysのLittle Alter Boyを使いフレーズを加工した。 パックに収録されているボコーダーサウンドはNative InstrumentsのREAKTORRAZORで作られている。 「REAKTORは大好きですね。その可能性には限りがないように感じます」とStoutは語る。 「一方、RAZORはクリアーで効果的なサウンドを作るのに適しています。 RAZORのボコーダーはまさに天才です」

 

Old Skool Computer Games」と「Video Game Sound Effects」は、Sounds.comでダウンロード可能だ。
※現在、日本ではSounds.comをご利用いただけません。

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