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休むことなく働き続けるポルトガル人アーティスト、Violet(別名:Inês Borges Coutinho)。プロデューサーとしての彼女の作品は、テクノ、ハウス、ブレイクビートからレトロポップ、シネマティック・エレクトロニカまで、まるで万華鏡のように多岐に渡っており、彼女が制作やパフォーマンスに関わっていないジャンルはもはや無いに等しい。2012年からシングルやEPを多数発表し、2019年には瞑想的なLP作品「Bed Of Roses」を発表してる。制作活動と並行するように、彼女のDJセットはベルリンのAtonalやThe Yard、Good RoomやSmartbarなど、世界中のクラブを揺らし続けており、MixmagやDJ Mag、Phonicaなどでも配信されている。リスボンを拠点とする彼女は、アンダーグラウンドレーベル「Naive」のオーナーでもあり、2015年には、パートナーのPhotonzと共にオンラインラジオ局Rádio Quânticaを立ち上げた。また、限られたスケジュールの空き時間を埋めるかのように、LGBTQレイブ団体「mina」のレジデントDJも務めている。
制作面においては、NIのREAKTORのサウンドデザイン性と処理プラットフォームが、Violetの多彩で自由なサウンドを表現する上で重要な役割を果たしている。「REAKTORは、サウンドをより深く探求して音の合成やエフェクトがどう構成されているかを理解するのに役立ちます。私は異質な音が大好きで、REAKTORを使うと荒唐無稽で気持ち良い音にたどり着くんです」
ここでは、ユーザーライブラリとファクトリーライブラリから、Violetの音作りに欠かせない5つの無償REAKTORアンサンブルと、それぞれのデモをご紹介しよう。
Brainwaves
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Violetがまず紹介してくれたのがRoberto Norrisの奇抜な 『brain stimulation』アンサンブルだ。この素晴らしさは、実際に試してみた方が分かりやすいだろう。「セラピー的なサウンドやディープリスニングを探していたとき、バイノーラルビートを生成する『Brainwaves』に出会いました。操作は視覚的にも直感的です。フィードバックを最大にした状態でリバーブやディレイなどのシンプルなエフェクトをかけることで、混乱させながらも心を落ち着かせるような音を作ることができます。Daphne Oramがスペクトラルサウンドで絵を描いたのにちょっと似ていますね。」
FM-organ for Reaktor 4
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リリースから16年が経過したこの(少なくとも音楽技術の観点から見て)古いオルガンスタイルのアンサンブルは、見た目もサウンドも見事にオールドスクールなものとなっており、個別の’percussion’ ‘sustain’のセクションや、’drawbars’を使ったハーモニーの形成、そして三段階のボイスデチューンにより、より太い音を奏でることができる。これは、より激しい音作りを行う時に最適だ。「私はDetuned 2モードを使って、最も好きな作曲要素の一つ、歪んだオルガンを作っています」とVioletは言いう。「このFMオルガンは、8ボイス、デチューン、ディレイ、複数のモジュレーションレベルを備えているので、変わった音や不安定な音を容易に作り出す可能性を秘めています。」
Solar Loop Echo
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Violetが最近発見した、RolandのクラシックハードウェアSpace Echoを独自に改良したSolar Loop Echoは、想像力豊かなフィードバックを主体としたテープディレイ風のエフェクトを得意とする。「今はベースだけど、どんな音でも、このディレイペダルを通すと美しくなるんです」と、デモトラックを見ながら語ってくれた。「これで遊んでいると本当に魔法のような瞬間が訪れるんです。ダブのアンビエントに質感を加えて生き生きとした音にしたり、トリッピーなダンストラックのリードに使ったりしています。モジュレーション操作にもGUIが視覚的に反応して、音作りに没入感を与えてくれるところが気に入っています。最近のお気に入りで、しばらくは手放せないですね。」
Resochord
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Violetは、ユーザーライブラリから少し離れREAKTOR Factory Libraryのお気に入りのアンサンブルも紹介してくれた。6つのレゾネーターバンクを使用したResochordは、どんなに音階のない音でも入力された信号からコードやハーモニックストラクチャーを引き出すエフェクトだ。彼女が言うには、特にドラムやパーカッションとの相性が良いそう。「’Some chords’ Snapshotは、サイドチェインするとドラムブレイクに美しいハーモニーを加えることができ、レゾナンスのおかげで私の望んだ通りのゆがんだ狂気に満ち溢れたサウンドになります。LFOがこのような動きを加えてくれるのでサンプルに命を吹き込むことができるんです。」
4x4 Drone Thing V1
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この実験的なシンセは、4つのサイン波ジェネレーターと4つのノコギリ波ジェネレーターをそれぞれ2つのバンクに配置し、一連のマルチモード(ハイパス/ローパス)レゾナントフィルターに通すことで、SF的な音の空間やインダストリアル風なテクスチャーを作り出す事を得意としています。「モジュレーションのオプションが豊富なので、マルチレイヤーの連続したドローンサウンドを作るには最適です」とVioletは言う。「私は奇妙なLFOワブルを作るのが好きだし、フィルターの音がすごくドープで暖かい気持ちにさせてくれるんです」