中国で今まさに花が開きつつあるエレクトロニックミュージックシーンの最先端を代表するHowie Lee。彼のサイバーパンクなサウンドコラージュは、時間と空間を自在に横断する。北京を拠点とするパーティとレコードレーベルのDo Hitsの共同設立者でもある彼は、実験的なサウンドスケープやトラップ、ベース、テクノといったグローバルな言語を、民俗的な伝統と融合させた新しい音楽言語のパイオニアだ。
彼が2019年にリリースした最新作「Tiān Dì Bù Rén」は、二胡やラワープといった中国楽器と、鉄琴、フラメンコギター、オートチューンのヴォーカルなどの様々なグローバルサウンドを組み合わせたもので、ナショナリズム、キャピタリズム、そして、環境破壊といった思想と向き合っている。ロンドンや台北に滞在していた時期に、サウンドアートの修士過程を終え、台湾の3DアニメーターであるTeom Chenと一緒にオーディオビジュアルのショーを制作、そして、コンセプチュアルなアルバムシリーズである「Socialism Core Value」を始めた。
Howie LeeのNI Sketchは、短い中に彼の遊び心溢れる「Made In China」の美学をしっかりと捉えている。彼のラワープ(ネックが長い中国の弦楽器)を録音したメロディラインから始まり、グローバルなサウンドが深く重なり合うコラージュへと進行し、アフリカとインドのパーカッションが予想できない形で一緒にもつれながら、強いリズムが形作られていく。
彼のSketchを聴いて、制作についての記事を読もう。そして、リミックス、再利用、その他の目的のためなど、自由に使うことができるHowieのSketchのステムは全てここからダウンロードできる。
使用されているNI製品: REAKTOR 6, KONTAKT 6, POLYPLEX, DAMAGE, ABSYNTH 5, WEST AFRICA, INDIA.
どのように今回のSketchを作ったのか聞かせてください。どの部分を一番最初に作りましたか?
最初はPOLYPLEXで色々演奏してみて、メイン部分として録音できるような良いドラムを探した。次に、DAMAGEを使ってもっとディストーションがかかったサウンドの上に重ねて、WEST AFRICAサウンドパックのパーカッションを加えた。
イントロを作るために、自分でラワープを演奏して、その録音のピッチを2オクターブ下げて古いピアノみたいな音にした。そこにABSYNTHでアンビエントの響きを加えて、完成するまでサウンドを組み立てて、一番最後にKONTAKTのシタールサウンドでドラムの上にメロディを乗せたんだ。
あなたにとってSketchとは?
僕にとってSketchとは、具体的なアイディアがあろうとなかろうと 書き留めて記録していくようなものだね。もし具体的なアイディアがあるなら、 全体の音と構造という観点から曲の基本的な骨組みを書き下ろすという意味になる。でも、大抵の場合はアイディアなしでSketchするから、みつけたサウンドからインスピレーションを得て楽しいジャムセッションをするような感じだね。
今回のSketchで達成したかったことは何ですか?
サウンドライブラリを探求したかったんだ。すごくたくさんの色々なサウンドがあるから、ただ音を聞くだけでもインスピレーションを受ける。作っていた時は、インド風のドローンみたいなサウンドにハマってたね。
今回のSketchで、あなたが一番気に入っている所は?
ベースラインの合間に隠れているドローンみたいな、はっきりとはわからないような部分が気に入ってる。あとは、ライブラリのアフリカンドラムのサウンドがとても素晴らしくて、使いやすかった。
このSketchから、どうやってトラックを完成させますか?
僕にとって、そこが時々難しい部分だね。Sketchをそのまま残しておくことがよくあるんだけど、それは、生っぽさがあると音が生き生きするってことを発見したからなんだ。でも、曲として完成させるという点については、たぶん自分かレーベルが締切を作って、それで何としても1曲完成させなきゃいけないようにするね。
今までに受けた中で、最も良かった制作アドバイスは何ですか?
ある友達が言ってたんだけど、もし音楽を作りたいなら、音について考えないで、制作しているものの視覚的要素について考えろ。つまり、画面上で見栄えのいいものを作るんだ。全部ブロックなんだけど、クリエイティブな楽曲のブロックは違った感じに見える。楽譜を読むのも同じなんじゃないかって思ってて、良い音楽は見かけも美しい。(でも、もちろん、音楽言語をちゃんと理解する必要はあるけどね。)
制作について学ぶ上でのお気に入りのオンラインリソースは何ですか?
ジャズについて、YouTubeのOpen Studio Networkのチャンネルをたくさん見てる。本当に素晴らしいんだよ。ジャズのコードプログレッションにハマってるんだけど、原理をあまりよく理解してなかったんだ。コロナの時期にこのチャンネルを偶然見つけて、チュートリアルをたくさん見た。異なるモードや意味を示唆するようなコードとメロディの書き方とか、マイクロトーナルな手法を使ったとても微細な表現方法を理解したりとか、すごく助けになったね。
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みなさんは次は誰の話を聞きたいですか?
既に様々なプロデューサーのインタビューが決定していますが、あなたがSketchesで誰の話を聞きたいかを教えてください。ユニークなサウンドの新進気鋭のプロデューサーを知ってる、奇抜な音を創るサウンド・デザイナーを知ってるなど、情報があればTwitter, Facebook, or Instagramnにてお知らせ下さい。
これまでのSketches 50アーティストのプレイリストは Soundcloudより。
Words: Chal Ravens