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    Interviews
by Konstantin Grismann

Meet the makers: IRRUPT Audio

エレクトロニックに焦点を当てた最新Expansion「WARPED SYMMETRY」をリリースした 製作スタジオIRRUPT Audioに直撃。

エレクトロニカ30年の歴史にスポットライトを当てた最新Expansion「WARPED SYMMETRY」は、アナログのビンテージ美学や90年代初期のレイブカルチャーを包括している。「WARPED SYMMETRY」には、ベルリンのサウンドデザイン/プロダクションチームIRRUPT Audioの協力による入念に製作されたドラムキット、ループ、サンプル、シンセプリセットなど、エレクトロニック主体の楽曲に適した幅広い種類のコンテンツが収録されている。

「WARPED SYMMETRY」のオーディオデモは記事の最後に、製品ページはこちらでチェックできる。

ベルリン市北部のヴェディング地区に拠点を置くIRRUPT Audioチームは、これまで「District Xeo」や「Carbon Decay」を含むExpansionの開発を担当して来た。

WARPED SYMMETRY」のリリースに伴い、我々はIRRUPT Audioを訪問し、スタジオを率いているCEOのJay Ahernにチームの創造プロセスについて話を聞いた。 スタジオの制作チームNina Hynes、Andrea Lancellotti、Magdaの協力を得て、私たちはベルリンを代表する制作プロダクションの裏側に迫った。

IRRUPT Audioにはどういったメンバーが揃ってますか?

設立したのは、Eloy Lopez、Bradley Roulier、Christina Duran、Steve Blakley、そして私です。 EloyとBradはBeatportの設立者で、ChristinaはBeatport初の社員のうちの1人です。 数年前に私がDenverのBeatport本社で仕事をしていた時に彼らと出会い、それから彼らがDenverのThe Firm Graphicsを経営するSteve Blakleyを私に紹介してくれました。Steveと妻のMaike AherngがIRRUPTのビジュアルアイデンティティを担当し、Sounds.comからリリースしている150の作品のアートワークを手がけました。

Magdaにも参加してもらいました。 サウンドデザインがしたい、才能あるミュージシャンを巻き込んで何かしたい、というのがアイデアでした。

そこで私たちは「音をやってる知り合いのミュージシャンと話をして、彼らに働いてもらおう」と決めたのです。 私たちはミュージシャンに匿名で参加してもらうようオファーしました。 誰がサウンドを作ったのか名前を書き込むより、エンドユーザーにそれぞれ独自の音の解釈をしてもらいたかったからです。 私たちは皆90年代のテクノを通って来ましたが、そこにはたくさんの匿名性がありました。だから私たちも同じように遊んでいます。


スタジオのメンバーはIRRUPT Audio以外にどんなキャリアを持っていますか?

Nina Hynes はインディーロック出身で、私がDominoと仕事をしてる時代から、お互いのことを知っています。 NinaはHector ZazouやHarold Buddと仕事していました。 MagdaとNinaと私は、ライブプロジェクトを中心としたBlotter Traxのメンバーでもあります。 今年初めにfabricでUKでのライブデビューを果たし、日本ツアーもしました。 8月にはUKに戻り、Craig Richards主催のHoughton Festivalに出演します。 新しいシングルは、オランダのClone RecordsのエレクトロレーベルFrustrated Funkからリリースされます。

他にどのExpansionを開発されたのですか?

インダストリアルテクノにフォーカスした「Carbon Decay」が、IRRUPT初のExpansionです。 そのジャンルで有名なプロデューサーにサウンドを提供してもらい、それをチームでまとめました。

District Xeo」 が2作目で、これはNIのJeffrey Hortonの励ましがあったおかげでできました。 エレクトロミュージックには大いに触発されましたが、それが現代のエレクトロニック音楽のDNAなのだと思っています。 今一緒に仕事をしているMagdaは、デトロイトの共通の友達Ectomorphを通じて仲良くなりましたが、彼女もそのジャンルに大きな影響を受けています。

チーフエンジニアのAndrea Lancelottiが、スタジオで私たちの荒々しいインスピレーションをまとめ上げました。 dOPのFabienにも、制作協力者としてMIDIパフォーマンスを依頼しました。 彼はクラシックのトレーニングを積んだ人で、すべてクオンタイズなしで弾いてもらいました。そんなわけでパックのMIDIパフォーマンスは申し分ありません。 他にもエレクトロや関連ジャンルで活躍するアーティスト達から協力を得ました。 過去から現在に線を引き、ジャンルを問わず、ビートを作る人すべてに音楽的なインスピレーションを与えたかったんです。

 

他にどんなサウンドライブラリを制作されましたか?

IRRUPT Audioは、Sounds.comでおよそ150のサンプルパックを発表しています。 IRRUPTAudioサウンドパックの元々のアイデアは、友人のJohn Tejadaからやってきました。 Johnが弾いてくれたサウンドを、私がAbleton Liveに取り込み、クリップをランダムに並べてプレイした時、 それがまるで作曲しているかのようで、自動生成するサウンドパックみたいだと気が付いたのです。 すぐにJohnに電話して「これって意図的にやったの?」と尋ねると、彼は「いや、たまたまだよ」って言うんです。 それはまるでライブセットで遊ぶような素晴らしい感覚だったのです。

その後、私たちは別のアーティストとも作業を始めました。それがIRRUPT Audioの背後にあるアイデアです。 私たちは彼らに向かって言ったのです。「僕たちに音楽をくれたら、すべて上手くいくよ」って。

ここには新旧さまざまな素晴らしいシンセサイザーが揃ってますね。 ざっと紹介してもらっていいですか?

私たちはモジュラーマニアなんです。 ビンテージもたくさん揃っていますが、モジュラーの中で言えばCwejman、Three Sisters、それからもちろんMetasonixですね。ツアーにも持って行きましたが、 Roland System 100mは最高でした。 それからMagdaが買ったDeckard’s Dreamもありますが、これが今の主要機材ですね。 300〜400万ドルくらいの価値になるでしょうか。 Cirklonも楽しいですね。 私たちは現代的な機材が好きです。 ビンテージ機材が大切なのは、もしそれがいかに素晴らしいか理解でき、きちんとメンテナンスされていれば、現代の機材で何に耳を向ければ良いか分かるからです。

私たちの友人EctomorphのBrendanがモジュラーシンセについてとても美しく、そして的を得たことを言っています。 「モジュラーは小さなアート作品のようなもの。すべてがアートだけど、音楽的なトラックですべてが機能するわけじゃない。 僕らはいつもうまく行ってるものに耳を傾けているんだ」って。 また、私たちはツアーに参加している人たちと話をして、彼らがどんな機材を使っているのか、どんな機材を運んでいるのか尋ねています。

 

このExpansionのレコーディングプロセスについて聞かせてください。どのようにサウンドをブラッシュアップしましたか?

「Warped Symmetry」のアイデアはエレクトロニックミュージシャンのための作曲ツールを作ることでした。 例えばR&Bのプロデューサー、 Kaitlyn Aurelia Smithのようなタイプのミュージシャンでも、彼らが望むのであれば使うことができますが、実際はそうではありません。

そのうちに、もっとすべてのグラニューラレベルを上げないといけないことに気づきました。 その時点ですでに幾つかのExpansionを仕上げていたので、さらに、MassiveとMonarkのプリセット、マルチサンプルのインストゥルメント、たくさんのMIDI情報を作りました。

このExpansionには何が収録されていますか?

MIDIファイル、ループ、ワンショット、多くのパターン。各グループ中で3〜5のパターン
は、BPM80〜130のミニソングのようになっています。だから、 幅広い可能性があります
ね。

ノートの入力には趣向を凝らしました。 スタジオにはギターがありますが、エレクトロニックミュージシャンの中には若い頃ギターを弾いていた人が多いんですよね。 Jam Originっていう素晴らしいソフトウェアがあるんですが、 基本的な機能として、ギターのオーディオをMIDIに変換してくれます。

それからベルリン在住の若手英国人ジャズミュージシャンRobert Yorkとも作業しました。彼は音楽教育、特に音楽理論が専門なので、 私たちの音楽フレーズがおかしくないかどうか確認してもらいました。 こういった作業を積み重ねた結果、素晴らしいサウンドと使い勝手の良いMIDIファイルが合体したダイナミックなExpansionが出来上がりました。

 

30年間のエレクトロニカというテーマはどのように取り込みましたか?

90年代前半には、確かIDMと呼ばれていましたよね。B12WARP Recordsの初期、Stasisなんかのことです。 面白いことに、若いアーティストたちが今彼らにハマってるんです。何より、古臭く感じさせないのがすごいですよね。 Andreaもそのジャンルの人で、 7thSign Recordingsからレコードを出していました。 私たちは音楽ジャンキーだから、スタジ
オではジャンル問わずなんでも聞きます。 この間SZAを聞いていましたが、そのアルバムの中の曲がLali PunaやNotwistとそっくりで、 驚いて顔を見合わせました。

Maschineのユーザーはアーバンスタイルで音楽を作る人が多いですね。 彼らがサウンドだけに頼って音楽制作する方法が大好きなので 「作ったものを世界に広めてみて、何が起こるか見てみよう」って思いました。 私たちをびっくりさせてくれるような曲がそこから生まれることを期待しています。 本物を差し出せば、人々にインスピレーションを与えることができるのです。

 

Expansionの製作ではNative Instrumentsのサウンドデザイナーとの作業もあったと思われますが、どのようなコラボレーションになりましたか?

Expansionの製作でいつもお世話になっているサウンドデザイナーは、Angelos Liarosです。 私はコラボレーションの力を強く信じており、最終目標は予想をはるかに上回る製品を作ることです。 最高のものを届けるために、私たちのプロデューサーやパフォーマーとしての経験が結集できたからこそ、この重要なツールセットが完成したのです。

photo credits: Yvonne Hartmann

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