ブラジル、サンパウロ在住のプロデューサー兼DJのBadsista (本名 Rafaela Andrade) は、この2年間で世界を席巻してきた。ブレイクネックハウス、90年代のトランス、ハードテクノ、そしてファンクカリオカのジャンルを混ぜ合わせたセットを得意とし、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アフリカなどのステージに立ってきた。そして彼女自身の音楽にも力強さ、速さ、激しさが混ざりあったエネルギーを注いでいる。
ブラジルに潜むセクシャルマイノリティ、エレクトロ界の王者であるBadsistaはゲイ、レズビアン、トランスジェンダーのアーティスト達とのコラボレーションや、Jup do BairroやLinn da Quebradaなどのプロデューサーと共にプロジェクトのディレクションを行ってきた。さらには女性のみの組織で、DJや制作ワークショップのホストを行い、ブラジル人女性のネットワークを広げるための組織、Bandida Coletivoを共同で立ち上げその運営もしている。
BadsistaによるMassive X用パッチ – デモはウガンダレーベルNyege Nyege Tapesから公開予定の映画のサウンドトラックから取り出されたフル尺のトラックだ – は彼女のグリッチポップとクラブサウンドへの愛が前面に出ている。ゆっくりと狂いだすこのトラックは時間をかけて広がりは壊れ、中間部分では様々な効果音やダブらしいグリッチが集中砲火される。以下からプリセットを入手して、その制作過程について読み続けよう。
あなたの音楽はテクノ、トランス、クラブ、ブラジリアンファンクなどのジャンルが融合していますね。意図的に混ぜ合わせているのですか?それとも、あなたの趣味が自然と形になっているのですか?
自分から自然と生まれたものだと思うわ。日常の中で耳に入ってくる音楽を自身のフィルターを通して、私の音楽に変換している。だから、私の考えることは曲を通じて伝えられていると思う。私の音楽は「自然」と「文化」が混じり合い出来ているの。自然というのは自分の内なる創造性や考え、文化というのは外からの影響。音楽というのは、街やそこに暮らす人々の状況が最初に反映される対象だと思うの。だからデトロイトではテクノが流れていて、ブラジルではバイレファンキが流れている。
あなたのワークフローはどのようなものですか?よく使用するツールなどがあれば教えて下さい。
ハードウェアは何も持っていなくて、Ableton Liveだけを使用してる。今はNative Instrumentsのものをとても多く使っているわ。今回プリセットを作成したMassive Xも、通常のMassiveも持ってる。これまではあまり好みのプラグインがなかったから、ほぼサンプルを使用して音楽を作ってた。でも今、私はパラダイスにいるわ。Kompleteはパーフェクトだからね。
Badsistaによるパッチ、Fuego SynthはMASSIVE XのPerformer sectionにあるInsert Oscillatorを使用して、音に動きを出している。
MASSIVE Xはいつから使用していますか?ソフトで好きな箇所や、小技のようなものがあれば教えて下さい。
私はMassiveに慣れていたからMassive Xと初めて出会ったときは本当に戸惑ったわ。MassiveはMassive Xよりも作りがシンプル。見た目も質素。色も少ない。より機械的で、少し懐かしい感じ。
Massive Xはとてもかわいい。ボタンがたくさんあって、色んなことができる。色がかわいい。本当に全部がかわいい!音もとてもいいわね。リードシンセに使えるし、芯のあるベースも作れる。ノイズを含め、ありとあらゆるサウンドの選択肢を与えてくれるわね。
パッチをどのように制作したのか教えて頂けますか?
まずは白紙の状態から2つのオシレーターGlitterとBipolar PWMを立ち上げて、それにLFOやモジュレーションをかけた。音の補強のためにオーバードライブ、ディレイ、リバーブなども足した。他には小石や滝を連想させるようなノイズも入ってる。Massive Xは突き詰めると、本当にクリエイティブなことが出来わね。何にでもモジュレーションをかけることができて、まるでシーケンサーのように鳴らすことができるの。まるで一つのシンセで2,3トラック鳴っているみたい。マクロのオン、オフもいくつか調整していて、エフェクトのかかり具合を変化させた。シンセの変化がとてもいい感じだったわ。私はただ録音ボタンを押して、シンセ内の全てのボタンにモジュレーションをかけたの。
丁度このパッチを作成していた時、Nyege Nyege Tapesの短編映画のサウンドトラック制作を同時進行していたの。このパッチはそのフィルムの冒頭で使用しているわ。シンセの音をゼロから作り上げるには良いチャンスだと思ったの。
制作を始める時、明確に何をしたいかが分かった状態で取り掛かりますか?それともとりあえず始めてみて方向性を探りますか?
アイデアが先にあることもある。皿洗い中にアイデアを思いついて、そのままコンピューターに向かって形にすることもある。でも、本当は自分と「ジャム」するのが好きね。だからとりあえずAbletonでMassive XやReaktorを立ち上げて、始めて見るということもある。結局はどっちもあり得るわ。「ジャム」の方が好きだけど。
現在作業中のもの、またはロックダウン後に作業予定のものはありますか?
あるわ。今はアルバムを製作中。2021年の頭にはリリースしたいと思っているのだけれど、ブラジル人アーティスト達と共に作っていて、私はボーカル、ギター、ベースを演奏してるの。Lari BXDの歌詞も使用していて、彼女はレズビアンで、他の女の子との関係について書いているのだけれど、その子はギャングスターみたいな喋り方をするの。50 Centがドラッグをやっているような。私はそんな空気を求めているの。
Words: Chloe Lula