人間の声は、サンプルでエミュレートすることが難しい楽器のうちの1つだが、ハイエンドなKONTAKTライブラリならうまく表現してくれる。多少のお金を払えば、多種多様で表現豊かなバーチャルシンガー、声が混ざり合うシネマティックな聖歌隊、そして、精巧に構築された合成ボイスを入手することができるだろう。しかし、良質な喉頭部音源を使って制作を始めるために、大金を大盤振舞いする必要はない。このことを証明するため、今回は厳選された無償のKONTAKTボーカルライブラリーを5つ紹介する。
パワフルなBVやスムーズなレガートのサステインから、奇妙なボイスのサウンドデザイン、そして、最高に素晴らしいボーカルプロダクションのエミューレーションまで。今回紹介するライブラリはすべて、デスクトップスタジオを一味違うものにしてくれて、ダウンロードする価値がある。まさに節約家にぴったりだ。5つのうち4つはフルバージョンのKONTAKTが必要だが、Soniccouture Tape Choirはここでダウンロード可能な無料のKONTAKT PLAYERだけでも使う事ができる。
Decent Samples Dave Choir
Dave Choirは焦点が絞られたボーカルアンサンブルライブラリ。制作のために開発者のDave Hilowitzは、彼自身が歌う 「oh」と「ah」を16回、合計で352音以上を録音し、演奏可能な合唱隊にまとめあげた。個々にサンプルされた22音はバリトンの音域で、「oh」か「ah」単独で使うこともできるし、モジュレーションホイールを使えば、レイヤーかクロスフェードとして2つを一緒に使うこともできる。ダイナミックに波形を描くためのADSRエンベロープを搭載、アンビエンスを与えてくれるコンボリューションリバーブも備えており 、ラウンドロビンがないにもかかわらず、手軽で使いやすい男性ボーカルパッドだ。
Rastsound Vocal Morphs II
IDM、シネマティック、アンビエントといった知的な電子音楽向きに開発されたVocal Morphs IIは、様々なボーカルループとワンショット (パッド、カットアップ、グリッチ、フォルマントシフト、純粋な録音など合計90サンプル) を集めて、色彩豊かで様々な使い方ができる楽器としてまとめあげた。LFOモジュレートフィルタリングやリピッチング、ASRエンベロープ、ステレオ音像を広げるエフェクト、そして、リヴァーブ、ディレイ、コーラス、ディストーションなど、数多くのプロセッシングが搭載されている。ポルタメントを使えば、流れるようなパフォーマンスも可能に。一般的なボーカル用というよりもサウンドデザインツールとして、Vocal Morphs IIは真に素晴らしいノイズを創り出してくれる。
Soniccouture Tape Choir
このSoniccoutureの尊敬すべき無償ライブラリは、KONTAKTライブラリの中でも一番ニッチなもので、たった1つの事柄を行うためにつくられた。そのたった1つの事柄とは、10ccの70年代のヒット曲「I’m Not In Love」の中の、マルチレイヤーでつくられた「永遠に続く」伝説的ボーカルパッドを再現することだ。パイオニアであるオリジナルのトラッキング、テープループ、そして、ミキシングは、歴史的に偉大な試みだったが、Tape Choirはそのプロセスを直感的なエンジンにまとめあげた。2オクターブの音域に渡るキーは個別に録音されたボーカル音を束として奏で、ランダマイズされた開始点と調整可能なデチューンが、壮大な合唱音を生み出す。テープエミュレーション、マルチモードフィルター、ADSRエンベロープ、膨大なコンボリューションリバーブのセレクションによって「合唱」を形づくることも可能だ。それに加えて、このライブラリはKONTAKT PLAYER用なので、KONTAKTのフルバージョンを持っていなくても使うことができる。
SoundBetter Singers
オンラインセッションエージェンシーのSoundBetterは、KONTAKTエンジンから指先ひとつで雇うことができる5人の素晴らしいバックシンガーを用意してくれた。2つのノブのうち1つを使ってシンガー(Mickey、Thomas、Jessica、Scott、もしくはJordiii)を選び、もう1つのノブで母音の発音(「Ah」「Oh」「Ooh」、それぞれSoftとLoudのバージョン)を選ぶことができる。音域はシンガーによって違い、それぞれの音は個別にサンプルされて4つのユニゾンのレイヤーの束になっている。艶やかで直球のSingersは、ポップス、R&B、そして、商業音楽にぴったりのバックボーカルライブラリだ。
Ivy Audio Clare Solo
表現力豊かな操作性と、核となるボーカルレコーディングの素晴らしいクオリティが際立っているライブラリー。著名なアメリカ人シンガーであるClare Demerが、言葉を用いないでサステインを歌い上げたボイスを収録。別々のリリースサンプルやフルレングスのレガートの変遷も含まれており、使われた機材は、ハンドメイドのCloud JRS-34リボンマイク、Millenniaのプリアンプ、 そしてAuroraのコンバーター。その結果、コンボリューションリバーブをかけなくても大変美しいサウンドに仕上がった。セッティングパネルでは、サンプルにレガートやリリースをかけるオフセットとエンベロープのタイミングを調整可能なため、最初の印象からさらに深くカスタマイズすることができる。
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サウンドデザイン: Konstantin Grismann