高価でハイエンドな機材にローファイサウンドは関係ないかもしれないが、カセットテープを使ってビンテージ感を生み出したり、フリーマーケットで古い掘り出し物機材を探すことには、時間とお金とスタジオ空間を費やす意義がある。ありがたいことに、REAKTORユーザーライブラリは幅広いバーチャルツールを提供していて、劣化させた音やそのためのプロセッシングツールを探しているプロデューサーでもぴったりのものを見つけることができる。今回は、REAKTORコミュニティで著名な開発者による素晴らしくザラザラしたエフェクトとインストゥルメントを紹介する。ローファイな曲を作りたい人から、ダンス、ヒップホップ、ポップスのクリーンなトラックに少しだけラフな要素を取り入れたい人まで、今回紹介する5つのアンサンブルの中に、最低でも1つはヒントになるものがあるはずだ。そして、フルバージョンのREAKTORがあれば、全て無償で使うことができる。
MRX90
開発者のJames Peckは、同じようなコンセプトから作られたVHS Audio Degradation Suiteなどのコミュニティ視点のアンサンブルでその名を知られている。このレトロな「カセットテープっぽい」エフェクトは、大変シンプルで2つのコントロールしか装備していない。Noiseのノブはテープノイズで、入力シグナルによってゲートされ、もう1つのAgeのノブは、「クタクタに伸びたテープ」サウンドのように、ワウとフラッターを加え、ローパスフィルターとコンプレッションをかけてくれる。MRX90が提供しているような磁気テープのサチュレーションはローファイな音楽制作に必須だということが、これを使えば納得できるだろう。
Solar Loop Echo
想像力豊かなJörg Holzamerは、有名なRolandのSpace Echoのオリジナルデザインを「反転」させて、再生ヘッドと3つの録音ヘッドがテープループとして効果的に作動するという逆のシステムを開発した。コンセプトのポイントは、それぞれのヘッドのスピードとテープループの長さ(0.1から10秒)が個別に調整可能という点で、テンポや方向の操作を大胆に行うことができる。それに加えて、様々な方法での音質劣化を可能にするサチュレーション、ワウ、フラッター、ウェアーも装備している。
Heavens Bells
このChristopher SchollによるジェネレイティブなREAKTORブロックのパッチは、思わず我を忘れてしまうような自律推進型シンセ。元々アンビエント用に作られたが、音をローファイに変換させたい時にも向いている。シーケンスのコード、リード、ベース、ノイズジェネレーターという4つの別々な構成要素から成り立っていて、これらがミキサーセクションで混ぜられバランス調整やミュートがかけられて、予想不可能で惹きつけられてしまうようなランダムな要素を美しく繋ぎ合わせ注意深く変調させていく。もちろん、むき出しのBlocksのパラメーターは、永遠に調整し続けることも可能で、アンビエンスやテクスチャーのレイヤーとして使いやすく、インスピレーションを与えてくれる。
Waterlogged
制作者のPeter Ballによると「特に複雑なプラグインというよりは、コンセプトの実証」というWaterloggedは、ソース音源を水中で再生した時のようなサウンドを作り出してくれる。水中サウンドのクオリティとして成功しているかどうかについては意見が分かれるかもしれないが、フィルター、フィードバックディレイのテイル、ステレオモジュレーションを用いた独創的なサウンドデザインエフェクトであることは疑いなく、ローファイ音楽のプロデューサーのマストアイテムだ。
Bluewave
今回2度目の登場となるJames Peckによる、3つのオシレーターからなる減算シンセサイザーで、たくさんのローファイ感溢れる機能を備えている。シンセ自体はFM、PWM、そして統合されたサブのアナログオシレーターのモーフィングを誇り、レゾナントのローパスフィルター (14種類) とノンレゾナントのButterworthハイパスフィルター、3つのエンベロープと2つのLFOを兼ね備えている。しかしBluewaveを特徴付けているのは、そのエフェクトだ。Tape Warpモジュールは調整可能なワウとフラッターを備え、Noiseセクションではヒスやハムと共に「海岸」や 「ショッピングモール」のアンビエンスのループも加えることができる。ビットクラッシャーと調整可能なオシレータードリフトは、ケーキのアイシングのようにビンテージ感溢れるアクセントを付けてくれる。感情を喚起するオーガニックなサウンドのインストゥルメントで、素晴らしいパッドやコードはチルウェーブや日光に漂白されるようなスタイルにぴったりだ。