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by Reuben Cornell

MIDIの弦楽器演奏を向上させる5つの方法

スピッカートとスタッカートの違い? Reuben Cornellが、難解な弦楽器表現を紐解く。

何をしたいのか始めに認識する

自分の弦楽器ライブラリを引っ張り出すまえに、まずは弦楽器奏者がどのように演奏しているかを知り、何ができて何ができないかを認識しておこう。個々の楽器の音域、アーティキュレーションの種類、演奏技法といった点について説明している資料はたくさんある。この手のことについて深く掘り下げたい場合は、手始めにPaul Gilreathの「Guide To Midi Orchestration」を読むといいだろう。Samuel Adlerによる「The Study Orchestration」もいい。それより先は印刷された楽譜を読めば、作曲者自身の記譜を理解して、弦楽器がどのように加えられ、残りのオーケストラのセクションを引き立てているのかを学ぶことができる。ただし、実物に勝るものはないので、ライブコンサートに行って参考になるアイデアを得るようにしよう。弦楽器奏者が演奏中にどのやって楽器を使っているのか、ホールの前席のほうに座って観察するといい。注意深く観察しないと、弓を操る技術やビブラートの指使いを体感して、実際の演奏の抑揚を知ることはできない。スタジオに戻れば、得てきた情報を自分の弦楽器パートに変換することができる。弓の変化、ビブラート、そして演奏表現をバーチャルな楽器で再現するのだ。

適切なツールを選ぶ

どんな弦楽器パートを書くのかによって、弦楽器を打ち込む方法や使用するライブラリの種類は千差万別になる。例えば、SESSION STRINGS 2の小編成のアンサンブルは、ポップミュージックやその他のアップテンポなジャンルに適している。マイクを近くに設置して演奏が録音されているためだ。スクープやフォールなど、アクセントになる選りすぐりのアーティキュレーションは、とりわけ、ディスコミュージックの定番となっている。ただし、映画のようなみずみずしさが欲しい場合は、SYMPHONY SERIESの弦楽器のほうがいい。60人編成の表現力豊かなアンサンブルとポルタメントによる音程変化が、劇的なハリウッド感を生み出してくれる。

最新の劇伴音楽は、あまねくTV業界のトレンドに合わせている。今人気なのは、作り込まれておらず、繊細な倍音で親しみやすさを感じさせる弦楽器で、ソルディーノフラウタンドのような奏法をよく耳にする。次の例では、SonokineticによるNKS対応のSottoとHeavyocityによるIntimate Texturesのそれぞれからパッチを使って、北欧の凍える荒野の感覚を想起させている。

各セクションの音を使う

MIDIキーボードを使って弦楽器パートを書く場合、ピアノ奏者の意識に陥ってしまうことがある。弦楽器パートの作曲には独特のスタイルがあるため、打ち込みするときは単なるブロックコード(同時和音)を避けるようしよう。実際だと1つの弦楽器セクションがすべての音を同時に弾くことは滅多になく、バイオリン、ビオラ、チェロ、そしてバスの各セクションが互いにメロディーや伴奏を織りなしている。これを自分の弦楽器パートの作曲で再現するには、単に1つのアンサンブルのパッチを使うよりも、必要に応じて各セクションのパッチを複数使うといい。さらに、“divisi(ディビジ)”の指示記号があれば、どの弦楽器セクションも2パート以上に分かれることがある。自分の弦楽器ライブラリには、ディビジの部分を録った音を必ず入れておこう。そうした音を使うことで、楽器の単体パッチで和音を演奏するよりもはるかにリアルな仕上がりになるからだ。例えば、Hollywood Stringsのようなライブラリには、16人編成のバイオリンが9人と7人に分かれたディビジのパッチになって収録されている。SYMPHONY SERIESの弦楽器はさらに一歩踏み込んでおり、入力されるMIDIノートに対して正しい楽器数を自動で割り当てるAuto Divisiエンジンを搭載している。以下は、バイオリンのパッチで演奏した音の例だ。1番目はディビジになっておらず、現実ではありえない音の重なり方になっているが、Auto Divisiを有効にした2番目は、現実的な演奏者の数になっている。

空間の音

ほとんどの弦楽器ライブラリには、様々なマイク配置で録った音が収録されているほか、内蔵のリバーブで実際の空間を疑似的に再現して弦楽器を聞かせられるようになっている。この処理を行うことで、すぐに制作で使える音がいい具合に収録されるわけだが、そうした初期設定のままの音はゴール地点ではなく、スタート地点だと考えたほうがいい。異なるマイクの組み合わせやリバーブを試して、楽曲の別の楽器と同じ部屋で弦楽器が演奏されているような音にしよう。これはとても厄介な作業で、オーケストラの配置やミックスの細かな議論については、別の特集記事を組めるほどなのだが、いくつかのポイントをお伝えしておく。まず、直近のマイクをソロにして、弦楽器のインストゥルメントの内蔵リバーブを無効にする。そして、弦楽器を他の楽器と同じリバーブに接続して処理するというものだ。こうすると、おそらく音が近くドライすぎて聞こえるので、現実的な空間の感じになるまで別のマイクを導入していこう。近くに設置したマイクやEQを和らげて、とげとげしい高域を取り除かなければならない場合もある。本格的なサウンドトラックを聞くと、思っているよりもはるかに弦楽器のアンビエンスはドライな音であることが多いので、そうした音を参考にするといいだろう。

最新のレイヤーテクニック

ここまで、弦楽器パートを現実的な音にすることを紹介してきたが、それとは真逆の処理をするのも同じく効果的だ。最新の劇伴音楽では、伝統的な楽器編成ではなく、シンセと特殊効果音を使ってハイブリッドなサウンドトラックを作成していることが多い。弦楽器は引き続き使われており、聞き手の多くは弦楽器の音が“良い”ほど、重みのある音色と鋭いアクセントを伴った劇的な音だと考える。これを実現するには、通常、複数の弦楽器の音を重ね合わせるか、弦楽器をシンセの音と組み合わせる。

異なる2種類の弦楽器の音を重ねてみよう。ここでは、SYMPHONY SERIESにもともと収録されているモチーフ(以下の1番目の音)とSymphobia 1(以下の2番目の音)を用意した。互いに標準の音程から数セントだけデチューンしているので、重ねると厚みのあるみずみずしい印象になる。

スピッカートによる引き締まった音色のモチーフなら、もともとのスピッカートのパート(以下の1番目の音)を新しいトラックに複製して、MIDIの音程を6セミトーン下げる。そのあとでKontaktのノブ[Master Tune]を“+6”にすると、弦楽器がもともとのパートと同じ音程に戻り、両方を重ねると非常に攻撃的な印象になる(以下の2番目の音)。

弦楽器パートは、MASSIVEやその他のソフトシンセのシンプルな波形を使って簡単にレイヤーにできる。弦楽器の音に似せてADSRを設定したモノラルの正弦波と、少量の真空管サチュレーションを使えば、コントラバスのパートにローエンドの迫力を加えられる。次の例で、レイヤーする前と後の音を聞き比べてほしい。

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