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by Paul Nolan

Diploの楽曲への9ステップ

Diploの大ヒット曲の秘密に迫る。

Diploはこれまでのキャリアでいくつもの名義やスタイルを使い分けてきたが、そこには常に一貫した独自の制作スタイルと音響美学が存在している。Sounds.comの最新プロダクションパック「Diplo Drops」のリリースにあたり、プロデューサー/エンジニア/教育者のPaul Nolanが、Diplo作品の特徴を分析する。

Check out Diplo Drops now.
※現在、日本ではSounds.comをご利用いただけません。

1. ボーカルチョップ

Diploの作品がユニークな点は、まず第1に、ボーカルチョップをふんだんに使っていることだ。リズミカルなシーケンスを作るシンプルかつ効果的なテクニックで、曲中のフックとして繰り返されることにより、印象に強く残る効果も生み出す。

このテクニックは、Slice機能を持つサンプラー(例えばAbletonのSimpler)にボーカルテイクを読み込むだけで簡単に作ることができる。ボーカルを任意のサイズでスライスすれば、MIDIキーボードで連続的な演奏が可能。リズミカルに、または異なるピッチで演奏すれば、ボーカルが別次元の独特なフレーズやパッセージが生まれる。

2. ボーカルのレイヤー化とハーモニー

Diploが使う効果的なテクニックの2つ目は、リピッチされたボーカルテイクで、人工的かつ音楽的なハーモニーを作っていることだ。オリジナルのボーカルを複数レイヤーし、各レイヤーのピッチを音楽的な間隔(+5半音、+7半音、+1オクターブ、-1オクターブ)に置き換えてミックスするとハーモニーができる。

上記のボーカルチョップのテクニックと、この後に説明するリサンプリングのテクニックを合わせると、元のボーカルをバラバラにしているだけで、驚くほど印象的でインパクトのあるボーカルを作ることができる。

3. 過激なインストゥルメンタリスト

Diploはサウンド、ジャンル、音源、ボーカルを新しい領域へと持ち込んだことで有名だ。数々の象徴的なサウンドは、彼のルールのない自由なアプローチから生まれた。1つの音をほとんど見分けがつかなくなるまで加工し、まったく新しい方法で、新しい文脈に置き換えている。

彼の代表作では、ボーカル素材を使って、歪んだフルートに聞こえる「シンセ」リードが作られている。こういったサウンドは、ボーカルフレーズやパッセージのピッチを極端にトランスポーズすれば簡単に作れる。または、サンプラーを介して高いピッチで再生し、ピッチベンドなどのパラメーターを使えば、ピッチに面白い動きをリアルタイムで付け加えることができ、独特なメロディーが生まれる。

ボーカルを、オリジナルより少なくとも12 半音(1オクターブ)以上 高いピッチで再生してみよう。さらに、ボーカルが流れている間に、ピッチベンドを上げ下げしてみる。 スピーカーから流れてくる音にきっと驚くだろう。「Where Are Ü Now」のJustin Bieberの声は、この3つのテクニックを使った格好の例だ。

4. 極端なリバース

サウンドデザインの限界に挑戦することは、プロデューサーDiploとしての重要な側面だ。ボーカル素材をリバースしてから、極端に長いタイムストレッチ(オーディオファイルのサウンドがほぼ崩壊するくらい)をかけると、ドラマチックなイントロを作ったり、適度な場所での上昇感とリリースによるテンションのコントロールができる。

恐れることはない。ボーカルフレーズの最後をカットし、トリム、リバースをかけ、2-4小節以上使ってみよう。上昇感を作るにはフェーダー操作も加えよう。

5. セクションごとにアレンジを変える

Diploの制作スタイルで一番大きな特徴は、2 for 1型(2つで1つ)のアプローチだ。ほとんど相容れない2つのアレンジを合体し、壮大でキャッチーな全体像にまとめ上げている。これはテンポの変更、拍子記号の変更、さらにはジャンルの変更を意味する。

このテクニックは、トラックがドロップされた時に、ものすごく驚かされることに繋がる。特に音楽的なイントロの後でドロップが起こると、音がとても大きく聞こえる。さらにエネルギーを加えるには、ドラムアレンジを2倍速にするなど実験性を加えるといい。つまり、音楽的には同じままでも、ペース、エネルギー、テンポが、オーディエンスの気持ちと共に上昇する。

ドロップはBPM70、BセクションでBPM140に変更すると最高の結果が生まれる。 同じ曲の中でジャンルをチョップしたり、変更したりすることもあり得るだろう。Diploは2018年初めの「Get It Right」でこのテクニックを再び取り入れた。

6. リサンプリング

リサンプリングとは、MIDIであれオーディオであれ、音を新しいオーディオファイルにレンダリングして、さらに処理を加える技術。今ではほとんどのDAWが「Bounce In Place」(LogicやBitwig Studioなど) 機能を備えており、機能がない場合でも、作ったサウンドを新たなオーディオファイルにレンダリングして、アレンジに組み込むことができる。

ボーカルやドラムのサウンドをレイヤー化し、すべてのレイヤーを1つのファイルにバウンスしてから、さらに処理を続けてみよう。ディストーションをかけたり、ピッチを自由に変更して、元のサウンドが完全に認識できなくなるまでリサンプリングを繰り返そう。

このテクニックはDiploの作品では常に見受けられる。「Get It Right」のようにクオリティを劣化させるテクニックもしばしば見かける。

7. ヒップホップの影響

Diploがあらゆるジャンルの音楽から影響を受けているのは明らかで、その柔軟な使い分けがDiploの大きな特徴だ。しかしながら、彼の音楽に一貫して見られるのはヒップホップからの影響で、特にクラシックな909スタイルのサウンドとハイハットのパターンの組み合わせはその象徴だ。よりアップテンポな4/4セクションへ飛躍できる柔軟性を持つモダンヒップホップならではのフレーバーを与えてくれる。

まずはハイハットを8分音符で連打する。いくつかの音符を削除した後、グリッドを1/16に変更したり3連符を使いハイハットのスピードを上げ、パターンに変化を加える。「Welcome to the party」では、ヒップホップからの影響が巧みに織り交ぜられている。

8. ジャンルを過激に切り繋ぐ

楽器の適切な使い方を無視したり、曲中でペースや拍子記号を突然変えてしまうことは、Diploの音楽制作では重要なオプションだ。スタイルの違う2曲を無理やり並べ、まるで1曲の中で2つの曲を聞いているように感じさせる極端な並列テクニックもこれに含まれる。

ここでもう一度、倍速、反倍速について考えてみよう。 ヒップホップのスピード(およそbpm85)からドラムンベース(およそbpm170)のスピードに劇的にシフトしても平気だろうか? もしそうであるなら、別々のジャンルを急につなぎ合わせてユニークな曲構成を試してみるのがいい。

Silk Cityの「Electricity」のエンディングでは、ディスコハウスからファンク/ソウルへ急激にシフトする。

9. 一風変わったリズム

Diploのもう1つのリズムテクニックは、「付点」や「3連」ノートのような一風変わったリズムを使うことだ。Bar/Beatのグリッドを風変わりなノートタイミングで分割すると、メロディーがグリッドに合わせて動き回り、とても面白くなる。まるでメロディーがリズムの周りでダンスするかのようだ。

DAWのピアノロールのグリッドを「付点1/8」に設定してリードラインを作ってみよう。メロディとリズムの新しい世界が開かれるはずだ。

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