約10年前、NIとDynamedionのコラボレーション音源としてリリースされたACTION STRINGSはオーケストラのフレーズサンプリングの新時代を切り開いた。一晩にして、ライブラリに収録された生演奏は数え切れないほどの映画、そしてジャンルを問わず様々な作品を支えるストリングスのリズム要素として使用されてきた。
そのため、その後継となるACTION STRINGS 2を制作するにあたり、我々は作曲家のTilman Sillescuの在籍するDynamedionの創立メンバーの最新プロジェクト、Sonuscoreに声をかけた。KONTAKT 6の機能性を最大限に活かすため、音源のエンジンは1から再構築され、モチーフとシングルアーティキュレーションは全て新規にサンプリングされた。しかしこれからTilmanが語ってくれたように、それは物語の序章に過ぎなかった…
Action Strings 2を制作するきっかけは何でしたか?
ご好評頂いたAction Stringsのリリース以降、Sonuscoreチームはこのコンセプトをより向上させるためのアイデアをたくさん考えてきました。Kontakt 6のリリースにより扱える機能の可能性が広がった今、Action Stringsを更なる高みへと進化させるにはベストなタイミングだと判断しました。Action Strings 2は前作のアプローチを元に全てを再構築した音源であり、多くの楽しい新機能や革新的なワークフローを搭載しています。
この数年間、多くの学びはありましたか?
もちろんです。我々は自社の他の製品、Action Strikes, Emotive Strings, Mallet Flux, そしてThe Orchestraなどのスクリプト作成時にもこれらのアイデアを試していました。実際、The Orchestraにはとても高性能な連動型アルペジエーターを使用した新型のエンジンを使用しています。そしてこのような学びから得た知識はあらゆる方法でAction Strings 2に取り入れられています。例えば新機能のMelody Creatorは定めたメロディの音をシーケンスの形にアサインすることができます。
ということは、多くの改善点があったのですね?
前作のAction Stringsから進化した要素が多すぎて、何からお話すべきか悩んでしまいます。私が一番感動した点は、作曲家が自身のフレーズを作れるようになったことです。フレーズの自由度に制限が無くなったんですね。我々は前作の時のように2小節のフレーズを録音するのではなく、シングルアーティキュレーションやレガートのモチーフ、駆け上がりやフォールなどの生演奏の要素を録音しました。これらの要素は生演奏でないとどうしてもリアルな表現が出来ません。これらの生演奏のパーツはユーザーの任意でスタッカートや他のシングルアーティキュレーションと組み合わせることができ、それによってオリジナルのフレーズを作成することができます。もちろんプリセットも多数用意されており、私は特にクロマチック系のテーマが好きです。更に我々は日々の作曲に適した汎用的な要素やパーツも追加しました。テーマやプリセットを使用するのもよし、ご自身でオリジナルのものを作るのもよし、全ての作曲家におすすめできる素晴らしいツールです。
シングル系アーティキュレーションのマルチサンプルも含まれていますか?
はい、含まれています。前作のAction Stringsと同様、各キースイッチには4つのフレーズがアサインされており、それに加えて6つの異なるシングルアーティキュレーションが追加のキースイッチにアサインされているので、フレーズと自由演奏を自由に行き来することができます。そのため、トレモロ、スタッカート、マルカート、トリル等の奏法を使用したアクション曲などがより楽に作れるようになりました。
音自体に変化はありましたか?
収録された全ての音は新しいマイキングで新規に録音しました。そのため、音自体、そしてミックスの可能性は格段に上がりました。サウンドの方向性はプロジェクトの立ち上げ時から明白で、壮大なハリウッドサウンドを目指しました。そのサウンドを求めて、我々はハリウッドスタイルの演奏が得意でありながらもタイトな演奏が可能なブダペストの奏者達と録音を行いました。我々が使用した録音部屋は反響が強すぎず、素晴らしい鳴りでした (フレーズには芯のある音が必要なので、反響が強すぎないことは重要です) 。私が個人的に好きなマイクポジションはTree micのセットアップで、私が想像する王道的な映画音楽やサントラのサウンドが再現することができます。もちろん作曲家によって好みやニーズは様々ですが、調整可能な4つのマイクポジションのミックス次第で幅広い音作りができます。クローズマイクに加えてスポットマイクを足すことも可能で、より接近感のあるサウンドを得ることができます。スポットマイクにリバーブを足すと直接的でありながらも空間を感じられる面白い効果を出すこともできます。全てのマイキングのミックスを自由に調整することができるため、ユーザーは様々な空間を演出することができます。そのためAction Strings 2は他社の音源と合せて使用しても、簡単にまとまりのあるミックスを作ることができます。
ポストプロダクションでは多くの波形編集を必要としましたか?
我々にとって、録音時に可能な限り完璧なサウンドを録ることがとても重要です。自然なサウンドが理想なため、可能な限り編集不要の素材を録音するように心掛けています。幸いなことに今回はほとんど編集不要でした。音量のレベル調整が適切だったのはとても重要で、演奏の質にも好影響でした。後はシングルアーティキュレーションやモジュールの音の開始点の設定にとても時間をかけることで、弓のタッチ音を含めながらもアクセントがきちんとグリッドに沿うようにしました。
どのようなフレーズやモチーフが収録されていますか?
我々は録音に向けて様々な準備を行いました。数多くの映画音楽のストリングスを分析して、どのような素材を録音すべきか考えました。Kontaktにスクリプトされた際に自然なサウンドになるように個々の要素があらゆるピッチや音量で録音される必要があったため、譜面は膨大な枚数になりました。何日間も単音や駆け上がり、素材的なパーツのみを演奏し続けるというのは奏者にとって大変な作業でした。しかし彼らは高いモチベーションを保ち続け、素晴らしい演奏をしてくれました。ポストプロダクションでは録音素材の編集という大きな仕事が待っています。全ての素材を1つずつ、完璧に整える必要があります。ユーザーが滑らかな演奏を出来るように素材の音量や波形の開始位置に拘った我々のチームにはご褒美のビールが与えられるべきでしょう。
リアルな演奏を可能とするための生演奏パーツのスクリプトについて教えて頂けますか?
リアルなプレイバックを犠牲にすることなく、ユーザーに全ての要素を自由に組み合わせられるオプションを提供したかったので、この機能については時間をかけて作り込みました。我々は補正スクリプトを作成することによって、アーティキュレーションの開始点とモジュールが拍の数ミリ秒手前から始まるように設定をし、音の発音が途切れないようにしました。弓のボーイング感を残しつつも拍のタイミングを合わせるために緻密な計算をたくさん行いました。そのおかげで全体的にフレーズのプレイバック感がとても滑らかでリアルなものに仕上がったと思います。
この幅広いオーケストレーション機能はThe OrchestraやMallet Fluxなどに備わった機能と似ています。この機能はどのような場面で役立ちますか?
日々ハードな締め切りに追われている作曲家にとって、想像力を妨げるものでない限り、どのような手助けもありがたいものです。作曲をしたいけれど何から作り始めようか悩んでしまう、という事も珍しくありません。特に難しいアレンジや壮大なオーケストレーションに取り掛かる際に、1本のクラリネットのスタッカートから書き始めるのはとても心細いと思います。そんな時にこの製品はとても役立ちます。プリセットの中からアイデアを得たり、すでに音楽と呼べる状態のフレーズ等を使用することもできます。重要なのはこれらの機能をどのように扱うかです。中には1つのボタンを押して、既存のフレーズから曲を作りたい方もいるでしょう。もちろんそれはそれで楽しいですが、より拘ってパラメータをいじったりすることであなただけのサウンドを作り出すこともできます。どちらの方法が正しい、ということはないので、我々はどちらのオプションもユーザーが自由に選べることが重要だと考えています。
Kontakt がバージョン6になったことによって、どのような機能が追加されましたか?
Action Strings 2ではMIDI書き出しの機能が追加されました。これは我々の自慢の機能で、ユーザーが細かくプログラムした駆け上がりやフォールを含めた素材を全て簡単に書き出すことができます。フレーズの録音も簡単に行うことができ、それを後にお使いのDAWにドラッグドロップで使用することも可能です。そのため、録音した素材も後に自由に変更することができます。更にその音楽的なアイデアを他のライブラリ音源や異なるサウンドに使用したり、ストリングスのレイヤーに使用したりすることもできます。要約すると、Action Strings 2で作成したフレーズを作曲のあらゆるパートで使用することが可能になったのです。
ミュージシャンにとって、Action Strings 2はどのように役立ちますか?
我々のチームには多くの作曲家が所属していて、我々の全ての製品は「簡単に素晴らしい映画、ゲーム音楽を作れるように」というニーズを元に作られています。この音源の内容的に、ほぼアクションやトレーラー音楽での使用を見込んでいたのですが、実際にはモダンなエレクトロニックミュージックに多く使用されていることにすぐに気が付きました。モダンなビートとの相性がとても良いんですね。その理由は分かりませんが、モダンなトラックにAction Strings 2のモチーフを使用するのはとても楽しく、素晴らしいサウンドを得ることができます。
ユーザー間でのフレーズ共有が可能になりましたが、その目的は何ですか?
正直、それが必要な機能なのか私にも分かりません。どちらかと言えば皆さんに提供したい面白い要素、という感じです。シンプルにコンセプトが面白いと思いましたし、少なくとも皆さんの音楽的アイデアを共有できるようにしたいと考えました。お互いを刺激しあえるAction Stringsコミュニティがある、というアイデアを私はとても気に入っています。
Action Strings 2への反響はどうですか?
今までの所、評論家を含め、作曲家の方々はAction Strings 2の強みをきちんと理解してくれていて、我々はとても喜んでいます。良い感想をたくさん頂いたおかげで、我々の影の努力が報われました。とにかく、この作品が皆さんに受入れられて我々はとても安心しました!
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