• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

    アイルランド人プロデューサーEomacと、日本人アーティストKyokaのコラボレーションプロジェクトに迫る。…

    Interviews
by Paul Hanford

BTが語るステイホーム期間中の生活とCommunity Driveへの参加について

トランスの先駆者が、PRISM、SKANNER XT、MONARKのエネルギー溢れるプリセットをどのように制作したかを説明

メリーランド生まれのプロデューサーであり、マルチな演奏家やDJでもあるBTの時代を超えた偉大なキャリアは、ジャンルの方向性を導いてきた数多くの楽曲が物語っている。90年代に彼の名前の2文字が、太陽の降り注ぐような高揚感溢れるUKプログレッシブハウスやトランスと同意語になって以来、Tori Amosをボーカルに迎えた「Blue Skies」を筆頭に、明け方のイビザとチャートの両方に光彩を与えるような名盤を発表してきた彼の進化は、止まる所を知らない。

Brian Transeauは、サウンドが特徴的なチョップ系グリッチエフェクトであるStutter EditとEDMの先駆者だ。後にShutter EditはiZotopeのプラグインとなった。また、彼が手掛けた映画音楽は「ワイルド・スピード」シリーズからCharlize Theronによるオスカー賞受賞作「モンスター」まで、あちこちで耳にすることができる。実際、BTがコンソールの前でボタンやサンプルをいじりながら、世界中のダンスフロアに音を届けていること以外の状況を思い描くことは難しく、忙しい合間に、Grammy賞にノミネートされたソロアルバムを生み出し、BowieやThe Roots、MadonnaやNYSYCとのコラボレーションの時間をつくり出す。そしてたった今、彼は全世界のビートメーカーと彼の情熱を共有しようとしているのだ。

今回は、そんな彼にCommunity Driveについてインタビューした。コロナの影響を受けたアーティストをサポートしているチャリティに寄付をするといったプロジェクトのCommunity Driveには、PeachesやSia、Laurel Halo、Miquelaといった総勢14名の人気アーティストが参加しており、BTもループやプリセット、サンプルを寄付している。参加アーティストのラインナップや無償パックのダウンロードはこちらから。そして、もし可能なら、ぜひとも今回のプロジェクトでサポートしている尊敬すべき団体への寄付を検討してほしい。

BTのPRISMSKANNER XT、またMONARK のプリセットを体験することは、ハウスミュージックの歴史を横断しながら音の宝探しをしているような感覚だ。もうすぐ50歳になるにも関わらず、BTは明るく活気に満ちていて、信じられないぐらい年齢を感じさせない。もしもスーパースターのDJは気取っていてミステリアスな存在だとするなら、 その定義に彼はまったく当てはまらないだろう。

今は世界のどこに?

東海岸にいるよ。たくさんのプロジェクトを抱えていて忙しく働いてる。カリフォルニアとそこに住んでる友達が恋しいけど、みんなが無事でいることはありがたいし、幸せだと思うよ。

 

たくさんの人々に囲まれてパフォーマンスをする日常に慣れているあなたにとって、そうすることができなかった最近数ヶ月の状況はどんな感じでしたか?

素晴らしい質問だし、実際の所、僕の答えはとても面白いものだよ。いつもファンの人たちが知りたがる質問が2つある。1つは「どうやってそんなにたくさんの音楽を制作して、そんなに多くのプロジェクトをこなしているのですか?」そして、もう1つは「あなたのかっこいいサウンドをどうやって作っているか、その素晴らしいテクニックについて教えてくれませんか?」なんだ。だから、死ぬまでにやっておきたいことリストの中には、僕の音楽制作とサウンドデザインのすべてのツールとテクニックと方法論のマスターコースを作ることが入ってる。そして、それは他の人に役立つプロジェクトでもあるよね。内容の多くは、クリエイティブライフを現実化するための生活方法についてや、スタジオの中ではおきないような音楽制作に繋がってくる全てについてなんだ。満たされたクリエイティブライフを送るために必要なことの80%は、すべてスタジオの外での事柄なんだよ。だから、食べ物とか水分補給とかマインドフルネスのプラクティスとか、そういったことに常に気を配ってる。それらは僕が個人的にやってるクリエイティブな鍛錬のとても重要な部分で、スタジオでの作業にもいい影響があるんだ。だけど、やりすぎなぐらい深く内向的になれるのと同時に、典型的なスタジオの中にいることが大好きな人たちと同じ部分も、びっくりするぐらいある。そして実際、どれぐらい多くのエレクトロニックミュージック界隈の人々が、僕と同じようなパーソナリティなのかっていうことについて、とても色彩鮮やかで面白い話を延々と話すことができるよ。現実として、燃え尽きて居心地が悪くなってしまうような社会環境の中に、周囲の状況によって追いやられてしまうから、自分自身のための空間を保つ鍛錬方法を学ばなくてはいけないんだ。だから、変な話だけど、今回の期間はある意味大変素晴らしい面もあった。なぜなら、充電して、スタジオに入って、飛行機に乗ってる時とかパフォーマンスをしている時にいつも温めていた様々なアイディアを実現するための時間がたくさんあったからね。飛行機に乗ることとかパフォーマンスをすることも愛していないわけじゃないけど、静かな時間を持って、黙想的に内面を見つめて、クリエイティブになれるといった良い面もあった。これらが必要なのは、内向的な部分から来てるよね。

 

DJやプロデューサーには、神秘的な部分がたくさんあります。グラマラスな生活を送っている派手なイメージがあって、内向的とはあまり思われていないですよね。

内向的と外交的の間にははっきりと線引きができて、そのやり方で一度考え始めたら、どれだけその間が遠く離れているかわかるようになるよ。とても有名なエレクトロニックミュージックのDJで今経済的に厳しい状況の友人がいるんだけど、それこそがまさに、NIのCommunity Driveに参加できたことを誇りに思っている理由なんだ。そして、経済的に厳しいだけでなく、典型的に外交的でもある人たちは、ダブルで致命的な打撃を受けてる。彼らは社会的な交流をとても恋しく思ってるね。最近落ち込んでる友人が4、5人いて毎日連絡をとってるんだけど、彼らは人々と繋がることができないという今の状況に右往左往してる。なぜなら、彼らのクリエイティビティは全て社会的交流と繋がっているからね。

つまり、ここ数ヶ月、あなたはご自身の知識やテクニックを、他の人々とシェアできるように準備していたということですね。アーティストは秘密主義で自分のテクニックを闇の中に隠しておくという古典的な見方がありますが、あなたはそうではないんですか?

僕は情報をシェアすることが大好きなんだ。プラグインの開発はそのいい例だね。Stutter Editは、メリーランドの田舎でスタジオの埃っぽい床に座って、カミソリの刃と柔らかい鉛筆と小さな金属テープを使ったアナログテープの作業から始まった。「よし、この部分が1分間に122拍だとしたら、1秒は15インチになるから、ということは、つまり…」ってクレージーな感じで、ティーンエイジャーの頃からアイディアを試していたんだよ。そうこうしているうちに、遂に、他の人たちと一緒にやる勇気が出てきたから、「よお、アプリケーションにしようぜ」って声をかけ、最終的に形になったものをiZotopeに売ることができて、それは世界に旅立った。本当に多くの友達が「怖くないの? 君が使ってるサウンドを他人にあげちゃってるんだよ」って僕に言ったんだけど、僕は「全然、怖くないね。だって、みんな違った風に使うでしょ」って答えた。アイディアを大切に独り占めしてしまうほど、自分の成長を妨げてしまうと感じてるんだ。他の人が使えるような形でシェアすれば、それが自分自身を成長させ続けてくれる。

 

コミュニティパックのサウンドをどうやって制作するにあたって、何か拘りはありましたか?

まっさらな状態からサウンドデザインすることが好きなんだ。新しいシンセを買ったら、まずは全部のプリセットを消し去るようなタイプの変な奴なんだ。僕の友達はその行為について信じれないみたいだけど、その楽器について学ぶことの手助けになる。そして今回のプロジェクトの中で面白いことは、僕自身まだ実際あまり使っていないREAKTOR Ensembleもいくつか含まれているということだね。そのインストゥルメントでどんなことが可能なのか、様々な違った味わいを網羅していて、「わあ、すごい面白い。どうなってるんだろう?この音の波のうねりは、どうやったら作れるんだろう?」って刺激を受けながら自分自身で学ぶことができるサウンドを作ろうととても努力した。

 

それに加えて、2年後にある曲を聴いた時に「ちょっと待って、僕のサウンドを使ってるように思うんだけど」と、なるかもしれませんね。

ああ、実はそういうことはよく起きてるよ。Stutter Editでよくあるんだけど、僕が制作したものを他の人がその人自身のやり方で使っているのを聴くのが、大好きなんだ。どういうものか詳しく知りたくなって、「ねえ、君がこれとこれを使っている部分を聴いたんだけど、すごくかっこいいね。よかったらパッチをシェアしてくれないかな?」ってInstagramでダイレクトメッセージを送るんだ。だから間違いなく、それは楽しいことだね。

 

現在の世界的危機的状況の中、クリエイティブなやり方でポジティブなものを生み出すことができると思いますか?

アーティストとしての我々の役割は、これまで以上に重要なものになっていると思う。アーティストは、コロナウィルスの最前線で病気を治療したり人々を助けるような役割ではないけど、包み込むような繋がりの感覚を創り出したり、与えられた時間に対して、ポジティブな休息のひと時を提供することができる。たとえそれがたった3分間だけであってもね。ポジティブでいること、そして自分自身の創作物を通して善い事を広めていくこと。そういった我々アーティストの役割は、未だかつて無かった程重要なものになってるんだ。

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