• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

    アイルランド人プロデューサーEomacと、日本人アーティストKyokaのコラボレーションプロジェクトに迫る。…

    Interviews
by Paul Hanford

Community Drive: Peaches

フェミニストでありポップな扇動者でもあるPeachesがCOMMUNITY DRIVEのチャリティサウンドパックに提供したサウンドについて語る。

パフォーマンスアーティスト、アイコン的なパンクの扇動者、境界を超えたエレクトロの先駆者。ベルリン在住のPeachesの作品は、どんな時でも鋭いDIY精神によってエンパワーメントされている。そして、このことが彼女のCOMMUNITY DRIVEチャリティサウンドパックへの参加をとても特別なものにしている。

BTやSiaから、Georgia Anne MuldrowやJunkie XLまで、他の13人の素晴らしいアーティストと同様に音素材を寄付してくれたPeachesは、今回MONARKとMASSIVEを使ったプリセットを制作した。ブンブンと唸るようなオシレーションがお宝テクスチャーを生み出しているサウンドは、エッジが効いたアナログ感覚が満載で、「Sweet Mask」や「Staying Safe」といった時事的な名前がつけられている。

家にいることにあまり慣れてないから、私にとって確実にチャレンジね

 

ベルリンのスタジオからZoomでインタビューに答えてくれたPeachesの背景には、たくさんのシンセラックが映っていた。シーンに大きく影響を与えた彼女のアルバム「Teaches Of Peaches」から今年で20年が経っているとは信じがたいことだが、このLPがリリースされた2000年代初頭は、パンクキッズ達が、急かされるような議論に焚きつけられて、シンセを手に取りDIYエレクトロの制作を始めた時期だった。当時から年月が流れた今現在、特に#MeToo以後の世界において、ジェンダー問題を取り扱うアンセムである「Set It Off」と「Fuck The Pain Away」は、ますます時代に合ったものになってきていると感じる。

どんな内容のことでも、Peachesはいつでも、手を差し伸べながら「あなたにだってできるよ、楽器を手にとって表現してみようよ」とリスナーを励ますために叫びをあげている。PeachesのCOMMUNITY DRIVEのプリセットは、そんな実験を始めるのにもってこいだ。そして、パックからの収益は全て、Covid-19の影響で生活に打撃を受けているアーティストをサポートしているチャリティに寄付される。Peachesがインタビューの中で語ってくれたように、彼女は背後からサポートしたくてたまらないのだ。

Native InstrumentsのCommunity Driveに関わりたいと思ったきっかけはなんですか?

コロナ状況下でもクリエイティブでいようと格闘しているアーティストを助けたいと思ったからよ。今は、物理的な意味でコミュニティをつくるのが難しく、誰にとってもサバイブすることが難しい。Community Driveは良い救援ファンドだし、私がリスペクトしている大好きなアーティストの中でも、今この瞬間にも、大変な状況に直面している人がたくさんいる。だから、今回のプロジェクトに関わることで助けたいと思ったの。

 

今回の危機で、何か直接的な影響はありましたか?

実は、ちょうど大きなプロジェクトをたくさん終えたところで、新しい作品の制作を再開しようとしていた時期だったの。いくつか公演の予定もあったけど、でも、みんな精神的にパンデミックで頭がいっぱいでしょ。私自身は経済的にやっていけているから、どんな形であれ他のアーティストを助けることができたら、それはいいことだって感じてる。

 

多かれ少なかれお互いが孤立した状況になっている時期に、今回のようなプロジェクトに関わることは、コミュニティを強化する良い方法だと感じていますか?

そうね、そうだといいなと思ってる。経済的な助けにもなるしね。

 

今回はMONARKとMASSIVEのためのプリセットを制作されましたね。制作はどのように取り組み始めましたか?

自分のプリセットをつくったことはなかったので、やりながら学んでいった。それと共に、もっとダークでアグレッシブなサウンドにしたかった。テクニックを学んで理解していくことは、とても楽しかったから、 遊んでたみたいな感じね。

遊んでいた時に、「あっ、これこそ欲しかったサウンド!」となるようなポイントはありましたか?

そうね。「まさに思い通り」とか「わあ、こうなるなんて思わなかった!」とか「何これ? オッケー!」とか、そんな感じ。

 

なるほど。サウンドの名前の付け方も、とても楽しんでいたようですね。例えば、「Bad Breath」というMASSIVEのプリセットがありましたが、実際本当に嫌な匂いの息のようなサウンドでしたね。

コロナのせいで、物事に対して、みんながこれまでとは違った風に考えるようになったからね。例えば、誰かがとても近くで話してる時とか、誰かのくしゃみとか。人々の反応の仕方とか、あるいは、これまでは気にしていなかったことについてとても神経質になっていることとか。

 

どのように使いながら学んでいったのか、サウンドの制作プロセスについて教えてくれますか?

LFOの使い方とか音のいじり方について学んだり、プリセットがどうやって作られているのかについて発見したり、MONARKだけでも、そうやって操作を何回も何回も繰り返していったの。本当にいろんな操作段階があって、何からスタートしても無数にいじることができたし、1つのプリセットに対してだけでも、たくさんの違った使い方があった。

 

ループのようなものですね。

そうね! ディグってディグってディグりまくるって感じ!

もしかしたら2年後にある曲を聴いて「ちょっと待って、私のサウンドを使ってるように思うんだけど」と、なるかもしれませんね?

そうだといいね。そうなったら楽しいわ!

 

音楽のテクニカルな面でプロジェクトに参加する日が来るなんて、これまで想像したことはありましたか?

私は全然テクニカルなタイプじゃなくて、とても直感的なの。だから想像もしてなかったわ。技術的なことはもっと試したり理解したりしたいけど、ハマりすぎないようにしようと思ってて、サウンド制作と、音に熱中しすぎちゃうことの間には、はっきりと線を引いてるのよ。

 

熱中しすぎないように、自分を制御している方法はありますか?

自分にしっかりタイムリミットを与えて、制作に取り組むようにしてるわ。

 

コロナ状況下において、人々が自分自身に集中できるという意味で、希望の光のようなものはあると思いますか?

状況によると思う。もしも、生活のあれこれを心配することなく時間を過ごしたり音楽に取り組むことができるような特権を持っているなら、落ち着いて内省的な時間を過ごす良い機会になり得る。でもそれは、その人の資産や特権や能力などの環境によって状況は違ってくる。だからこそ、必要としてる適切な場所と人に寄付が行き渡るということがとても大切なのよ。

ここからPeachesのプリセットをダウンロードして、他のCOMMUNITY DRIVEサウンドパックもチェックしよう。パックは無償だが、可能ならぜひ寄付も検討してほしい。

関連記事

Cookies

このウェブサイトではより良いユーザー体験を提供するためにCookie(広告、分析、ソーシャルメディアのCookieを含む)を使用しています。

Cookieを管理する

Cookieについて詳しく知る