by Peter Kirn

ユーザー補助機能の製品デザイン

誰でも利用できる楽器を開発するためにNIが取り組んでいること。

KOMPLETE KONTROL ユーザーの20人に1人が、視覚障害があるユーザー向けの補助機能を利用している。 1000人に1人でなく、100人に1人でもなく、20人に1人なのだ。 この数字が表していることは、アクセシビリティはニッチなものではなく、音楽制作になくてはならない機能だということだ。

「アクセシビリティが開発工程の一部になりつつある」とはどういうことなのか、シニア・ソフトウェア・エンジニアのCarl Bussey、プロダクトオーナーのTzipi Schindler、教育部門リーダーのAlexander Stamm、UXデザイナーのMatthieu Rancに話を聞いた。

「NIのユーザー層はとても多様だということ、そして、ユーザー層をさらに多様化させるにはどう改善したら良いかという点に、深く結びついていると思います」とSchindlerは言う。 NIは新規ユーザーが抱える問題の解決に取り組むのと同じように、障害を持つユーザーにも着目しているのだ。

「Native Accessで行ったのは、基本を大切にしたということです」と彼女は言う。 障害を持つユーザーにとって、インストールやアップデートなどの作業は、昔ほど困難ではなくなった。 Native Accessは、macOSを完全にサポートし、スクリーンリーダーとショートカットに最適化されている。また、Windowsのサポートも間もなく開始される。

KOMPLETE KONTROLNKS は、NI製品だけでなく、他社製のNKSインストゥルメントとエフェクトを利用するすべてのユーザーに、アクセシビリティ機能を提供している。 KOMPLETE KONTROLキーボードを使えば、視覚障害のあるユーザーでもハードウェアを操作することができる。 ハードウェアの操作を習得すれば、これらのトリガーとエンコーダーで、どんなNKS対応ツールも操作できるようになる。

NIが提供するアクセシビリティ機能について、NKSやコンテンツの開発者も注目するべきだ。 なぜなら、開発者は独自のソリューションを開発したりテストすることなく、NIのアクセシビリティ機能を実装できるからだ。

アクセシビリティ向上への動きは、個々の製品だけにとどまらない。 「私たちはもっと全体的なアプローチを取りたいと考えています」とBusseyは語る。 アクセシビリティを高める動きは社内全体にあり、「全チームが視覚障害のあるユーザーへの理解を深めようと努めています」

「機能を検討する際には、最初からこの課題に取り組みたいですね」とRancは説明する。 開発工程の始めから、チームは視覚障害のあるユーザーのニーズを考慮し、実践コミュニティは定期的にミーティングを行いアクセシビリティについて議論している。

BusseyとRancは、アクセシビリティの利点を提供し各オペレーティング・システムのアクセシビリティ機能をサポートするために、技術的な観点から、フレームワークの評価を増やしていると述べている。 これには、MacのVoiceOverやWindows Narrator、WindowsのSpeech APIのサポートへの拡張が含まれる。 近い将来、MASCHINEKOMPLETE KONTROLなどのソフトウェアにも、このような機能が組み込まれるはずだ。 これらの技術はAppleとMicrosoftによって大規模なテストが行われており、これらのコミュニティ・ユーザーは完全なサポートを期待できるだろう。

視覚障害者のための開発には、色盲障害者のための配慮も含まれる。 例えば、MASSIVE Xのような新しいソフトウェア、エフェクト・プラグイン、TRAKTOR KONTROL F1ハードウェアでは、色の見分けの支障となるような色づかいが取り除かれている。

KK ACCESS

フィードバックはコミュニティー外からも寄せられる。 イギリスの科学技術者 Chris Ankin (『Sound on Sound』『Home & Studio Recording』)は、『KOMPLETE KONTROL Access』というコミュニティを運営し、視覚障害を持つミュージシャンの間で知識や情報を共有している。 このグループは製品チームにとっての重要なリソースであり、双方で機能する関係を持っている。

「歴史的に見て、音楽ソフトは既存のスクリーンリーダーを利用した貧弱なアクセシビリティ機能しか提供してこなかったのです」とAnkinは言う。 「アクセシビリティ機能が導入されたことで、視覚障害を持つミュージシャンは初めて1人でVST音源をブラウズし、ロードし、編集できるようになったのです」

『KOMPLETE KONTROL Access』では製品の資料やレビューが掲載され、読者は自分が購入しようとしているNKS音源が自分に適したものか知ることができる。 Ankinはこのサイトを通じて、ソフトウェアやサウンドコンテンツの制作者へ向けて感想・意見を発信している。 「開発者へコンタクトをとり、彼らに製品のフィードバックを提供するようになったことで、視覚障害者に大きな影響を与えるNKSマッピングの不備について知らせることができました」

NKSの開発者は注目してほしい。 AnkinはNIを支援し、アクセシビリティのドキュメントの開発や、パラメーター・マッピングについてアドバイスを行なっている。パラメーター・マッピングは「視覚障害を持つユーザーにとって最高のアクセス手段で、ソフトウェア開発者がこれを読んで、実装してくれることを願っている」と言う。「これは誰にとってもいい話だが、特に視覚障害を持つエンドユーザーは、購入した製品からより高い価値を得ることができます」

NKSはアクセシビリティ分野への関与を望む開発者にとって重要な入り口であることが証明されており、Ankinはその開発に関心を持ち続けている。 「過去2年間、Avid(Pro Toolsのメーカー)とNative Instrumentsは、NAMMでアクセシビリティをテーマとするフォーラムを開催してきました」と語る。 「業界からも多くの人が参加し、中には開発の段階でアクセシビリティについてもっと考えてみようと思う、と語ってくれた人もいます。これは素晴らしいニュースです」

KOMPLETE KONTROLやNativeの変化に伴い、新しいユーザーも次々と現れている。 「より低価格なAシリーズと新しいM32コントローラのリリース以来、グループのメンバーは続々と増えています」とAnkinは言う。

Nativeの製品チームと『KOMPLETE KONTROL Access』の関係性は両方向に働いている。 Native Accessで実行されたアクセシビリティの変更は、ユーザーからのフィードバックから直接もたらされたもので、Ankinはさまざまなインターネットフォーラムからの情報収集に協力した。 プロダクトチームとプロダクトオーナーのTzipi Schindlerは最終的に『KOMPLETE KONTROL Access』のコミュニティでベータ版のテストグループを結成し、Native Accessの動作方法の変更を推し進めた。

「私たちの技術向上は、視覚障害者のユーザーのためだけではありません」とBusseyは言う。 既存の機能の人気が高まっていることからも明らかなように、これらの機能はソフトウェアをより良いものにする。 フレームワークと連携機能の改善、一貫したビジュアルと手で触れることのできるインターフェイスの開発、初心者が持つ苦手意識を取り除くことは、NIのツールを使うすべての人の経験を豊かにするのだ。

これは素晴らしい音楽物語にもつながる。 「視覚障害を持つKomplete Kontrolユーザーのコミュニティの中には素晴らしいミュージシャンがいて、彼らの創造的なプロセスと、彼らが我々の製品をどのように使っているかを理解することは素晴らしいことです」とStammは言う。

そんなアーティスト達のストーリーを知るには、それぞれのプロフィールをチェックしてもらいたい。そして、彼らがこれらのツールをどのように使っているか知り、これをどう改善したら良いかフィードバックを提供してもらいたい。

キーボーディストAndre Louisとの対談

KOMPLETE KONTROLが視覚障害のあるミュージシャンに与えるパワー

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