• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

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    Interviews
by Danny Turner

Ethiopian RecordsがNIのツールでジャンルを形成する方法

Ethiopiyawi Electronicの創始者であるEndeguena Muluが、スタジオでのTRAKTORの使い方、伝統楽器のサンプリング、そしてエチオピアの次世代アーティストの育成について語る。

エチオピアの首都アジスアベバを拠点とするEndeguena Muluは、過去20年間、アフリカのエレクトロニック・ミュージックのサウンドを再構築し、仲間のMikael Seifuの協力を得てEthiopiyawi Electronicというジャンルを開拓しました。ダブステップの影響を受けたエレクトロニカとエチオピアの民族音楽を組み合わせたものというだけでなく、このジャンルには技術的なコラボレーションを通じて、文化やコミュニティの多様性を取り入れようという理念が込められています。

MuluのステージネームであるEthiopian Recordsの背後には、強い受容性の意識があります。今や経験豊富なプロデューサーであるMuluは、高校時代に初歩的なソフトウェアを使って音楽制作を始めましたが、それはすぐに毎日の習慣となり、2015年にエチオピアのアズマリ族の賛美歌の音と、サンプルベースのビートや楽器を組み合わせた実験的なデビューEP「Qen Sew (For My Father)」を発表しました。

その後、「Letu Sinega」から「In My Sleep」、「Ye Feqer Edaye」まで、Muluはアフリカのジャズシーンから集めたサンプルを流動的なカット&ペーストのアプローチで使用し制作したEPをリリースしました。近代的なテクノロジーに莫大な費用がかかるエチオピアで、NI社を含む手頃な価格の音楽ソフトウェアが入手できるようになったことは、この地域の新進のプロデューサーたちに大きな影響を与えました。

Mulu自身も、自身の音楽制作だけでなく、アジスアベバの芸能事務所「WAG」の運営にもNIツールを活用しています。しかし、現在進行中のパンデミックや最近の地域の政情不安のため、今このプロジェクトは生き残りをかけて戦っています。

エチオピアで育ちのあなたは、どうやって音楽制作の世界に足を踏み入れたのでしょうか。また、あなたのアプローチは年々どのように進化しているのでしょうか?

雨季の間の3ヵ月間、ずっと学校で音楽の授業を受けていたんだ。元々短編小説や詩、歌詞を書いていたんだけど、両親がデスクトップパソコンを買ったのをきっかけに音楽に目覚めたよ。最初にインストールしたのはサンプリングソフトの「Tuareg」で、まるで新しいゲームを見つけたような気分だったね。昔は、Terminalという携帯電話を使ったネットワークでファイルをやり取りしていた。

Tuaregに触れてから、パソコンの前に座って音楽制作をしなかった日は1日たりとも無かった。大学卒業後、映画学校に通うようになってからも、毎日作曲してたよ。やがてそれが日常の一部となって、引っ越しのたびにリビングを制作スタジオにしていたんだ。今は、ミュージシャンのコミュニティと一緒に仕事をしているけど、ほとんどの場合、仕事は一人でスタジオにこもってやってるね。

 

WAG Entertainment Agencyをいつ、どのような目的で設立したのですか?

2018年に、ビジネスパートナーであり映画監督でもあるLeul Shoaferawと一緒にWAGを作ったんだ。最初は支援してくれる人を探してたんだけど、誰もリスクを取りたがらなかった。そこで大企業と交渉する際、自分たちがまっとうな存在だと理解してもらうためには事業体を作る必要があるんだと気付いたんだよ。

俺たちは主にアフリカのアーティストを代表してプッシュすることを目的としているけど、エチオピアにはそのような支援団体がいないから、すべての人にサポートを提供することも目的としているんだ。もうひとつのアイデアは、みんなが集まってジャムセッションできるスペースを作ることだった。そういう場所もここらじゃ珍しいからね。

残念ながら、WAGがより多くのアーティストを登録し始めた矢先、新型コロナウイルスの影響ですべてが止まってしまった。みんなオフィスから離れなければならず、俺はミュージシャンとリハーサルをするために作った個人用スペースから出なければならなかった。予定がすべて狂ったよ。

世界が少しずつ元の状態に戻っていく中で、どのように対応していきたいと考えていますか?

最近は「GODJO」という小さなレコーディングスタジオを作り、そこで他のアーティストと一緒に演奏したり、ジャムをしたり、実験的なレコーディングをしたりして、時間を気にせずに色んな才能を伸ばしていきたいと思ってるんだ。

アーティストの育成に取り組んでる人がほとんどいないから、エチオピアのプロデューサーとして、それに取り組みたいと思っている。エチオピアじゃ楽器は高級品に分類されていて、300%の税金を払って全て輸入しなきゃならないから、楽器なんか見つからないんだ。DIYは良いアイデアかもしれないけど、エチオピアじゃ現実的じゃないね。

 

TRAKTORを制作のツールとして使い始めたのはいつですか?

TRAKTORを使い始めたのは2012年か13年だった。とても直感的で自然に使えて、しっくりきたんだ。ブラウザが整理されているのもいい。集中したい時、すべてがスムーズに機能するからね。

制作してる時、作品の75%は即興で作ってるよ。サンプリングされた音源のライブラリはすでにTraktorに読み込まれているから、すべてをブラウザ上で整理して、音やループを作り始める。Traktorでループを再生している間に、ベースやドラムなどのサンプルを使って遊び始めるんだ。

 

ライブでも使うんですか?

ライブでは、TraktorはEthiopiyawi Electronicのパフォーマンスと、サンプリングツールとして使ってるよ。S8MaschineKompleteにあるすべてのインストゥルメントを組み合わせて、オーディオをAbletonに流し、Ableton Linkですべてを同期させてる。

Traktorから全ては始まるんだ。例えば、2つのトラックを再生中に、MaschineとKomplete Kontrolのソフトウェアからキックとドラムを追加したりとか、基本的にTraktorをサンプリング楽器として使っている。

Traktorのキー認識機能やテンポ認識機能は、特にDJプレイには便利だ。他のアーティストに他意はないけど、俺はプレイリストを用意するよりも、その場でサンプリングするのが好きなんだ。生の緊張感を楽しんでいるわけなんだけど、TraktorのBPMとキー認識ツールのおかげで、すべてがとても楽になったよ。トラックのキーを変更するとき、検索ボタンが自動的に検索して全部の楽曲をそのBPMやキーに当てはめてくれるから、簡単に全部ハイライトして表示出来る。

Ethiopiyawi Electronicでは、ドラムが重要な役割を果たしています。サンプリングやプログラミングにはどのような楽器を使っていますか?

Maschineは主にドラムのサンプラーとして使っていて、ステップシーケンサーを使ってその場でエフェクトをかけている。自分のセットに即興的な要素を加えてくれるし、S8を補完してくれるので、スクリーンからできるだけ目をそらすことができるのがいい。ノートリピート機能は、トランジションや素早いドラム/サンプルのフィルを追加したいときによく使うし、マスタースウィング機能も気に入ってる。

ドラムの打ち込みには何時間もかかるよ。キックやスネアの音を先に組んで、その上で演奏して、いいリズムが浮かぶまで何時間もジャムるんだ。俺の音楽はほとんどがエチオピアの伝統音楽をベースにしているから、ストレートな4/4のドラムを作るのは好きじゃない。むしろ変則的なリズム作りの方が好きなんだ。

サンプリングは、あなたのサウンドに欠かせない要素ですね。あらかじめ録音されたサンプルを使っているのか、それとも自分で作っているんでしょうか?

ノートパソコンしか持っていなかった初期の頃は、ほとんどのサンプルは他の人のトラックの断片を使ってた。その後、スタジオミュージシャンを雇ったり、友人に伝統的な楽器を演奏してもらったりして、サンプルを作るようになったね。

そうやってソフトウェア・ライブラリを作ってきたけど、最近では生楽器の演奏と録音が仕事の重要な部分を占めるようになってきた。ジャズミュージシャンと一緒に仕事をするがとても好きだよ。アジスアベバにはエチオジャズの大きな伝統があるし。

誤解を恐れずに言えば、Native InstrumentsのWest African instrument libraryのようなソフトウェアは、自分の活動にとても合ってるけど、MasinkoやKirarのようなエチオピアの伝統的な楽器を物理的に見つけるのは難しいから、俺はライブレコーディングをサンプリングする方が好きなんだ。メインで使っているサンプルは、あらかじめ録音され、プログラムされたケベロ(エチオピアの伝統音楽で使われるドラム)の音だけど、Kontaktの工場出荷時のドラム設定や拡張パックのドラムも使ってる。

他にどのようにKOMPLETEを使っていますか?

昔はオーケストラ楽器をエミュレートするのに一番近い存在だったReasonを使ってたんだけど、Native Instrumentsのライブラリの方がはるかに本物に近いし、自分にとって弦楽器やベース楽器は本当に相性がいい。

Komplete Kontrolはサウンドライブラリが最高だから、すべてのトラックに使ってる。多分1TB以上のサウンドを持っていると思うし、それらのサウンドがブラウザ上で整理されているのは、即興演奏をするのにとても便利だよ。

 

今後の計画を教えてください。

今、色んな人にDJや音楽制作の仕方を紹介することを計画してるけど、Native Instrumentsは間違いなくその一部となるだろうね。機材が手に入ったら、自分の制作やライブパフォーマンス、そして創作スペースGODJOに、もっとNIのものを取り入れたいと考えている。

 

Ethiopian Recordsの最新情報はInstagramで、彼の最新リリースはBandCampでチェックできます。

 

Photos: Girma Berta

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