• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

    アイルランド人プロデューサーEomacと、日本人アーティストKyokaのコラボレーションプロジェクトに迫る。…

    Interviews
by Evan James

Artist Expansion: DJ Khalilの舞台裏

LAの重鎮による特徴的なサウンドの要素をどう引き出したのか解明する

DJ Khalilは、20年以上に渡ってファンク色の濃いウェストコーストらしさを世界のヒップホップシーンに刻み続けている。その特徴的な音と数多くのスターとの制作実績からもわかるように、彼は今、最も献身的で人気のあるプロデューサーの1人である (彼の功績を聴くことのできる豪華プレイリストはこちら)  。彼以上にArtist Expansionにぴったりのアーティストは他にいるだろうか?ビンテージアナログシンセを用いたアップビートなソウルや、滑らかなファンクといった彼が手掛けた秘宝はちょうど先月リリースされたばかりだが、そもそものきっかけは数年前に始まった。

シニアサウンドデザイナーのJustin Myracksが初めてKhalilに出会ったのは、Dr. DreのいとこでLAのラッパー兼プロデューサーのSir Jinxを通してだった (彼は以前、Ice CubeをDreに紹介することで、扇動的なラップグループであるNWAに橋渡しをしたこともある) 。その後話が進み、Myracksは2014年にシアトルのプロダクション兼ソングライティングチームであるTha Biznessに出会った。Tha Biznessは、Snoop Dogg、Jay Z、Kendrick Lamarといったアーティストのヒット曲を大量に生み出したチームだ。「当時は頻繁に彼らと働いていて、Kendrickのレコードの制作過程をよくMASCHINEに取り込んでいた」と彼は説明する。Christopher John “Dow Jones” Whitacreが、メールを通して彼とKhalilを再会に導いたのは、このようなセッションが行われていた時だった。

その頃、ロサンゼルスでKhalilは、アンセムになるようなフックや特徴的な音、またプログレッシブ・ロックをヒップホップに取り入れた”実験的な楽器編成”など、彼のシグネチャーサウンドを研ぎ澄ませ仕事に励んでいた。Khalilの幅広い音のパレットは、「70年代に典型的なプログレミュージシャンが使っていた」ようなレアなビンテージシンセのコレクションに由来する部分もある。こういったKhalilの音は、”クリエイティブなパートナーシップを結んだ上で、初めてのArtist Expansionとなるプロジェクトを始よう”という確信をMyracksに与えた。当時のサウンドパックはジャンルによるもので、アンソロジー的なアプローチだった。しかし、Khalilの音はクロスジャンルなものだったため、チームはジャズフュージョンやプログレとヒップホップを混ぜるという方向性で進むことを決意した。

2014年後半に、アナログなリズムのマーチ、深くフィルターがかかったシンセリード、そして温かみやバランスを加えたクワイアパッドといった大量の音をコレクションし始めた。2015年までには、いくつかのMASCHINEキットを制作し、Expansionの明確な方向性を決め始め、同時に、Khalilのヴィンテージシンセの膨大なライブラリーを深く掘り下げ始めた。「アナログな音のパレットをMASCHINEに加える素晴らしい機会だった。それ以前のExpansionはヴィンテージなヴァイブスにあまり足を踏み入れておらず、それ故にKhalilの名で知られているようなクラシックサウンドを取り入れたかった。つまり、彼のベスト版の音をエミュレートしたMassiveとMonarkのサウンドと共に、演奏可能なマルチサンプルなシンセサウンドも、一緒に取り入れたかったんだ」

2017年、Myracksがシニアパートナーマネージャーに昇進したため、プロジェクトはサウンドデザイナーであるJustin “DJ DNA” Adamsに引き継がれた。AdamsはNIに入る以前の2012年から、Khalilとはお互いのことを知っていた。その為、Adamsがオファーをもらった時、驚きはなかった。「僕はすでにKhalilのファンであり、友達でもあったから、今回のプロジェクトのコラボレーターにならないかという話をもらった時、『簡単だよ!仲間だし』って思ったんだ」

La BreaとSan Vicenteの角にあるKahlilの古いスタジオで作業は始まった。「リラックスするための部屋があったんだけど、所狭しとヴィンテージシンセが積んであるから、全然リラックス向きの部屋じゃなくなっていたんだ。Khalilはシンセをしょっちゅう入れ替えていたし。彼はヒップホップ史上最高のレコード (Dr Dreの「Kush」) に関わったため、当時、著名な音楽家やシンガーが次々に訪れていたよ。」

才能あふれるアーティストたちのスタジオへの訪問機会を生かすため、Khalilはスタジオで絶えずジャムセッションを行い、セッションを厳密にカタログ化していった。そして、録音を吟味して、Expansionのキットをつくるためのステムを選び出した。これらのセッションから直接生まれたキットは、スタジオへの賞賛の印として「La Vicente」と名付けられた。

生涯にわたるキーボーディストとして、Khalilはキーをパッドマシンとすることを選択した。そのため、今回のパックに収録されているパターンはすべて、Khalil自身がMASCHINEにKOMPLETE KONTROL S49を使って演奏した。また、Khalilのヴィンテージシンセの音はNIチームによって慎重に録音され、ユニークなアナログヴァイブスを探しているプロデューサーにとって大きなプラスとなる、マルチサンプルインストゥルメントとして仕上げられた。

「KhalilがNipseyのアルバムに取り組んでいた時、他のプロデューサー達はみんな彼のコレクションからシンセを借りていた」とAdamsは思い出を語った。「とてもレアなシンセもあったけど、Khalilのスタジオの中だと、古い建物の電力のせいもあって、いくつかの音がめちゃくちゃになるんだ。パーフェクトにはいかないから、偶発的に他ではつくれないような特徴的な音が生まれたんだ。これはKhalilのシンセからでしか手に入れることのできないサウンドだよ。他でCrumar Composerをサンプリングしても、Khalilの音と同じ音にはならないんだ。」

「Expansionを作ったのは僕たちNIチームではなくてアーティストだという事実を強調しておきたい。僕たちは、ただアーティストのクリエイティブなプロセスを手助けして、表現する自由を提供しているだけなんだ。」

この哲学に基づき、キットのすべてのパターンはKhalilによって制作され、クオンタイズなしで彼自身が手弾きしたものだ。彼のポリフォニックのヴィンテージアナログシンセの伝説的なサウンドをプリセットダイアルでエミュレートできるFairfaxキットのように、MONARKのカスタムパッチもある。他のExpansionとは違い、MASCHINEのコンプレッサー、EQ、リミッターは、元音に対し必要最小限だけ使われた。最初の2曲のデモトラックはKhalil自身によって制作され、今後他のアーティストによるプロジェクトが公開される時には、ヒップホップ文化に深く根ざしているプロデューサーによるものになることは確実だ。KhalilはBlack MetaphorやSeige Monstracityを企画案としてあげている。

制作プロセスの中で一番困難だったことは何か?それはKhalilのスケジュールだ。Eminem、Dr Dre、Nipsey Hussle、Anderson Paakなど大量のレコードを制作する時間がKhalilには必要だったため、Exspansionの作業は度々中断された。しかし、MyracksとAdamsが文句を言うことはなかった。この最高なメンバーにKhalilの時間を取られたことによって、制作が一時中断されたことは確かだが、同時に彼らとのセッションが新しいコンセプトや音のテクスチャーを生み出し、最終的には今回のパックに繋がっていったからだ。その両方が、Khalilのヴィンテージサウンドに予期せぬ現代的なエッジを付け加え、彼のアーティストとしての絶え間ない進化の記録として刻まれたのだ。

 

Watch: DJ Khalil on his new Artist Expansion

デモサウンドやArtist Expansionの詳細についてはこちら

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