• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

    アイルランド人プロデューサーEomacと、日本人アーティストKyokaのコラボレーションプロジェクトに迫る。…

    Interviews
by Evan James

The sound of now: 今年のグラミー賞の音のトレンドに迫る

この1年を象徴するサウンドについて迫ると共に、それらの音の再現を試みる

COVIDの影響で数ヶ月間延期されていた第63回グラミー賞が、いよいよ今週の日曜日に開催されることになりました。最優秀レコード賞はこれまでも「ヒット曲」がよく選出されるカテゴリーだが、2020年の「ヒット」は少し変わっている。それは今年のノミネートを見れば明らかだ。Say Soの感傷的なノスタルジアやDon’t Start Nowの屈託のない自己主張、everything i wantedの楽しげな絶望感からSavageの敵意に満ちた爆音に至るまで、今年のサウンドは全ての音と感情を網羅している。

スクロールして個々のトラックの概要と、曲の一番印象的なサウンドを自宅で再現するためのコツを読み進めよう。

Black Paradeのベースを軸とした支え

このカテゴリーで2度登場するBeyonceの最初の作品がBlack Paradeだ。驚きの24回のグラミー賞受賞経歴を持つ彼女は、今年はこの他に7つのノミネートを受けている。やや過度な賞賛に見えるかもしれないが、その誇大広告は本物だ。このトラックでBeyonceは彼女特有のダイナミックなボーカルパフォーマンスを魂の込もったシンコペーション、トランクを振動させるようなサブベース、そして流れ落ちるようなブラスと共に届けてくれる。ジューンティーンス(6月19日、アメリカ合衆国の奴隷解放を祝う祝日)とGeorge Floydの殺人が起こった日にリリースされたことで”Black Parade”のタイトルはより強い意味を持ち、人種差別に対する強い避難、そして黒人の歴史、カルチャー、活動、プライドに対する喜びの祝福としての役割を担っている。

その鼓舞する儀式的なグルーブを真似るため、我々はMASCHINEに強くディストーションがかったサブキックを並べ、徐々に広っていくパーカッションやシェイカーのレイヤーをまぶし散らした。それらは全てMASCHINEの内部ドラムとエフェクトを使用している。クリスタルとナグチャンパ香を忘れずに。

Colorsのクラシックギターの音色

よく出来たシンデレラストーリーが好きじゃない人なんているだろうか?Black PumasはAmazonの配達やBlack Sabbathのカバーバンド時代を経て、ジョー・バイデン大統領の就任式のゴールデンタイムスペシャルで演奏を行った。彼らのシグネチャーであるレトロファンクとサイケデリックソウルの融合は今年、彼らに3つのノミネーションをもたらした。幅広いジャンルを混ぜ合わせ、ユニークなシネマティックサウンドを作り上げるシンセサイザーの博識のおかげもあるだろう。

このトラックで最も印象的な楽器音はプロデューサーのAdrian Quesadaが演奏したザラザラとしたリードギターだ。その音は全て指によるものだが、GUITAR RIG 6のTweed Delightアンプと、それに合うキャビネットを組み合わせることで音色を近づかせることができる。ネック側のハムバッカーで力強く鳴らして、必要に応じて少しTrebleを上げてみよう。トラックで使用されている70年代のミキシングテクニックを借りるのも良いかもしれない。モノラルのギターとキーボードのパンニングを左右に振り切って、ボーカルに中心の広いスペースを与えるのだ。

Rockstarのアコースティックピッキング

勝ち誇ったタイトルとは裏腹に、“Rockstar”は悲しい曲だ。体と感情への暴力に対する胸を引き裂くような告白で詰まったこのトラックは、DaBabyの最も内省的な姿を現しているだろう。それに彼の”差別と警察の暴力で亡くなった全ての命”に敬意を表したBETアワードの映像を足せば、構造的な差別、家族の争い、そして忘れられないPTSDの影をたった背筋の冷えるような3分間で取り組むトラックの出来上がりだ。

悲しみに満ちた6弦の音を再現するため、我々はまずSession Guitarist: Picked Acousticのギターコードとアルペジオから手を付けた。それにRAUMのリバーブの大きなグラニュラーの質感と密度のあるリバーブテールで仕上げることで、抽象的なエコーに悲しみのアンビエンスを足している。

Say Soのファンクの基盤

彼女はオンラインのメイクアップチュートリアルで礎を築いたのかもしれない。しかし、MTVのBest New Artist賞と2つのAmerican Music賞を受賞し、3つのグラミー賞にノミネートされた今、高校のドロップアウトである彼女の才能が「肌の深さ」よりも深いことは明確だ。展示A:この湯気の立つ、耳から離れないディスコ色の強い曲が持つファンク感はTikTokでそれ専用のダンス動画が作られるきっかけとなり、またその動画は頻繁に共有されている。

モダンなバブルガムポップ制作の裏側で、“Say So”はファンキーな先祖たち、特に70年代の名盤であるChickの”Good Times”などの影響を受けている。そのため、我々のNEO BOOGIE Expansionはこのサウンドにぴったりだ。曲に使用したドラム、ベースライン、ギターリフなどは激しいパーカッションと現代のフューチャーファンクを豊富に含んだ、この時代を象徴するExpansionパックから盗んだものだ。

Everything I Wantedのフェルトピアノのコード

去年のグラミー賞受賞式で賞を総なめにしたBillieは心に残る憂鬱なレクイエムと共に戻ってきた。レイヤーで膨らんだボーカルとミニマルな制作によって、この曲をアゲ曲とバラードの中間を揺らいでいる。ゴールデンゲートブリッジから飛び降りても誰も気にしなかった、という彼女の夢から着想を得たこの深く懺悔的な曲は、絶望に対する讃歌であり、団結や協力に対する痛烈な嘆願である。その結果は力強く、切迫し、そして哀愁的だ。しかし、それは彼女の悪夢を理想に覆すのに十分だろうか?目が離せない。

“everything i wanted”のサウンドはプロデューサーであるFinneasの深くサイドチェーンがかったメロディックなピアノの使い方が基盤となっており、それはモダンな制作テクニックと昔ながらのアナログサウンドの橋渡し的な存在となっている。このトラックのために我々はNils Frahmにより注意深くサンプルされたコンサートグランドであるNOIREをfelt-dampened設定で使用し、それに対して4分音符毎にサイドチェーンをかけた。

Don’t Start NowのKONTAKTのベースギター

健康的な生活を送ることが最高のリベンジであり、この曲はそれを証明しているかもしれない。同時に「男性と別れた後の独立への祝福」と「不安な元彼への暴力的な串刺し」であるDua Lipaの深いカタルシス的なアンセムは90年代後半から2000年代前半のフィルターハウスのトラック、例としてはAlan BraxeとFred Falkeの“Intro”やDaft Punkの“Around the World”のようなサウンドに強く寄っている。片足を過去に、もう片足を未来にしっかりと付けたこのアルバムはその名前の通り、future nostalgia(未来のノスタルジア)を完璧に具現化している。補足だが、この曲の題材となった彼は次の数年、ダンスフロアに姿を表さない方が良いだろう。

生々しくはっきりとした音は実際の4弦による演奏に聴こえるかもしれないが、このトラックの象徴的なベースラインはプロデューサーのIan KirkpatrickがSCARBEE MM-BASSをMIDIで打ち込んだものだ。サブにはRAZORの助けも少し借りている。なのであの滑らかな70年代のフラットワウンド弦のサウンドを手軽に再現するにはMM-BASSをKONTAKTに立ち上げて、DRIVERの汚れを好みで足してみよう。

Circleの力強い生ドラム

Post Maloneは渦巻くようなパーカッションと陰鬱なギターに浸された、新たな「踊れる」メランコリックな傑作と共に帰ってきた。ボーカルはこれまでのPostらしく、濁りがあり、悲しげで、とてもキャッチーだ。しかし今作の痛々しいほどに内省的な歌詞は永遠に跳ねるベースライン、パンチの効いたドラム、そして猛烈な感染力を持ったフックの上にぶら下がり、その全ては私達に共に歌うことを要求しているようだ。

この踊るようなポップ・ロックドラムのサウンドを仕留めるにはButch Vig DrumsのLSD drum kitの他を探す必要はない。ハリウッドにある象徴的なUnited Recording Aスタジオで先駆的エンジニアにより録音されたオーダーメイドセレクションのアナログとデジタルのプリアンプ、ストンプボックス、コンプレッサーは力強いハイブリッドドラムの再現に必要な全てを与えてくれるだろう。

Savageの90年代らしいシンセスタッブ

Queen Beyはこのカテゴリーで2つのノミネートをされているが、2020年、TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれたアーティストはMegan Thee Stallionしかいない。このヒューストンの歌姫2人を同じトラックに絞り出して生まれた曲が“Savage”だ。それは度肝を抜く女王的カリスマの融合であり、歌詞に出てくる”classy, bougie, ratchet”(上品、ハイクラス、自分を勘違いしている女性)の世界を目まぐるしいUKガレージハウスビートと、その上で滲む大ぼらなラップで表現している。

このトラックの目立つ型破りな要素は、Todd Terryにより有名になり、ハウスレジェンドのKerri Chandlerのトレードマークとなった90年代のハウスミュージックのコードスタッブだ。この音を再現するには、MASSIVEを開いてCATZEのプリセットをロードしよう。そしてCHORUSをFX1、SMALL REVERBをFX2にそれぞれセットし、INSERT1, INSERT2をオフし、OSC3をCICAにセットし、好みに合わせて調整しよう。

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