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by Native Instruments

How to use reverb: 音楽プロデューサーのためのリバーブガイド

how to use reverb

リバーブは、最も広く使用されている音楽制作ツールの1つです。しかし、最も誤解されているツールの1つでもあります。リバーブは、トラックにリアルさと纏まりを生み出すのに必要不可欠ですが、使い方を誤ってしまうと濁ったミックスや説得力のない音楽になってしまいます。また、リバーブはサウンドデザインツールとしての可能性が非常に大きいツールではあるものの見過ごされがちでもあります。

今回の記事では、リバーブとは一体何なのか?リバーブの種類とパラメーターについて説明します。さらに、ボーカルやインストゥルメンタルでのリバーブの使い方をご紹介します。

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iZotopeの強力なリバーブプラグインNeoverbを使用します。

NEOVERBの詳細はこちら

リバーブとは?

残響音は、音響学において、音波が、硬い表面で反射し多方向に広がり、他の物体に吸収されながらゆっくりと減衰することで発生します。その残響をシミュレートするオーディオ処理ツール (エフェクト) がリバーブです。一般的には、オーディオ信号に適用して、3次元的な空間や雰囲気を与えるために使用されます。また、リバーブを追加することで、オーディオ信号がリスナーにとってどの程度遠くに聞こえるかを制御することができます。

音波は性質的に、直線的に伝わるのではなく音源から放射状に広がります。リビングで手を叩くと、ある音波は手から直接耳に届きますが、別の音波は別の方向へ向かい、その多くは壁や机など周りのものに当たって跳ね返り、少し遅れて耳に届きます。これが残響 (リバーブ) の仕組みです。この残響が、私たちのいる空間の音的な感覚を与えてくれます。かえって、残響がないと音が少しずれたり閉塞感が出てしまうでしょう。

私たちがプロデューサーとして扱う音の多くは残響成分を含んでいません。音響処理されたスタジオで収録された演奏でも、乾いた電子音でも、素材に3次元的な空間感を与えるためにリバーブをかけてあげる必要があります。そのため、リバーブ(通常はデジタルプラグインまたはハードウェアユニット)はプロデューサーには欠かせない存在です。このような機能的な用途にとどまらず、リバーブを使うことで驚くようなサウンドや実在しない空間をも作り出すことができます。リバーブは、それ自体が表現力のあるツールなのです。

Reverb is an essential part of a music producer's toolbox.
Reverb is an essential part of a music producer's toolbox

リバーブの種類について

最近のリバーブプラグインには、実世界のさまざまな空間やアナログ制作ツールをシミュレートした、さまざまなタイプが用意されています。リバーブを使用する際の最初の作業は、どのタイプが必要かを決めることです。それでは、見ていきましょう。

簡単なドラムループを使って、それぞれのリバーブタイプのデモンストレーションを行います。以下は、ループが乾いた状態でのサウンドです。

以下の例では、リバーブは100%ウェットに設定されているので、その違いを正確に聞くことができます。

Room reverb

ルームリバーブは、部屋のようなインテリアをシミュレートします。反射音がすぐに減衰し、近くの物体に吸収されるような、狭い空間の音響をシミュレートする場合に最適です。

Chamber reverb

チェンバーとは、スタジオの中で残響音を捕らえるために設計された部屋のことです。この部屋は残響特性を誇張して作られており、音を吸収する物体がなく、広く大きな面が露出しています。スピーカーで音を流しマイクで音を拾います。デジタルリバーブはこの独特の音を再現し、その刺激的な音質がミックスに個性をもたらします。

Hall reverb

ホールリバーブは、コンサートホールの美しい音響をシミュレートしたもので、長く滑らかな減衰を持つ大きな空間が特徴です。ホールリバーブは、リアルさを犠牲にすることなく、ミックスをパノラマ的で深みのあるサウンドに仕上げることができます。アコースティックなアンサンブルや広々としたミックスに最適ですが、音が忙しなく発音されるエレクトロニック・トラックにはあまり向いていないかもしれません。

このホールリバーブはNative Instrumentsのリバーブプラグイン RC 48 を使用しています。

Plate reverb

まず、プレートとは、アナログスタジオにある特殊なデザインの金属の板です。オーディオ信号は金属の板を通して再生され、その残響はコンタクトマイクによって捕捉されます。明るく滑らかで、金属的なアタックを持つプレートリバーブは、難解なミックス場面をうまく切り抜け、主要な楽器をさらにブーストすることができます。

Spring reverb

スプリングリバーブもアナログ時代の代表的な作品です。この場合、オーディオはスプリングを通して送られます。その結果生まれるバネが弾けて伸びる様なサウンドは、非常に特殊で微妙なものです。しかし、その個性は他の追随を許さず、サウンドデザインにも最適で、ダブ・レゲエなどのジャンルでは多様される特徴的な存在となっています。

リバーブの共通パラメーターについて

リバーブタイプを選択したら、次は最新のリバーブツールで提供されている主要なコントロールのいくつかを使いこなす番です。これらのパラメーターをいくつかマスターすれば、効果的なリバーブをすぐに作り出せるようになるでしょう。

Decay (ディケイ)

ディケイタイムとは、音の反響が収まるまでの時間のことです。短いディケイは、混み合ったミックスにうまく溶け込むことができ、壮大なトラックでは、ディケイタイムを長くすることで夢のような揺らぎを与えることができます。

Room size

ルームサイズとは、信号が反響する仮想の「部屋」の大きさを指します。トイレと駅のコンコースという2つのタイル張りの空間で、残響の質が異なることを想像してみてください。小さな空間ではカリっとした瞬発的な残響音になり、大きな空間は開放的な残響音になります。

ディケイとルームサイズは、リバーブにおいて最も重要なパラメーターです。なぜなら、リスナーに聴かせる空間の大きさを決定することができるからです。ディケイとルームサイズは複雑な相互作用があります。トイレと駅のコンコースの例で明らかなように、同じ材料で作られた異なる大きさの空間は、異なる長さの音の減衰が発生します。(駅構内で大声を出せば、残響はもっと長く続きます)。デジタルリバーブを使えば、現実世界では難しい、あるいは不可能な音空間を作り出すことができます。17秒の減衰を持つ小さなトイレはいかがでしょうか?

Pre-delay

元のドライ信号からリバーブ開始までの時間を決定します。音に近づけば近づくほど、ドライ信号がより多く聞こえるようになります。音をより近くに、より存在感のあるものにしたい場合は、ディケイタイムを長くして、リバーブの尾を元の信号音の邪魔にならないように移動させてみてください。

Early reflections

アーリーリフレクションとは、音が周囲の面で跳ね返された後、リスナーの耳に届く最初の反射音のことです。アーリーリフレクションによって、初期反射音の大きさを決定することができます。アーリーリフレクションが大きければ大きいほど、部屋は狭く感じられるでしょう。

Diffusion

残響音におけるディフュージョンとは、空間内での音の反射の散らばり方のことを指します。ディフュージョンが大きいと、音の反射が広く散らばり、より拡散した残響音になります。逆にディフュージョンが小さいと、音の反射がより集中し、より明瞭な残響音になります。

Damping

高域ダンピングは、リバーブの高域成分をより速く消散させます。これは、実際の部屋が音を吸収する方法をシミュレートしています。一般的に、高域は低域よりも早く吸収されます。

Wet/dry、Mix または Reverb level

ウェット/ドライ、またはミックスレベルでは、信号のリバーブ量を調整することができます。ドライ信号はリバーブの影響を受けていない原音で、ウェット信号はリバーブ効果を受けたものです。

現実の世界では、残響音はそれ自体で聞こえることはなく、常に残響音を発生させた音と一緒に聞こえます。つまり、一般的には残響音 (ウェット) と原音 (ドライ) のミックスが必要なのです。リバーブプラグインには、ウェット/ドライのミックス・ノブがあり、素早く調整できます。ほとんどの場合、50%以下のウェットミックスに設定しますが、サウンドデザインの用途では、よりウェットなミックスが効果的です。

Reverb EQ

リバーブEQとは、ミックスやレコーディングにおいて、リバーブ音の周波数成分を調整するためのイコライジング (EQ) を行うことです。  リバーブプラグインの中には、EQを内蔵 (リンク先は英語記事のみ) ているものがあります。プリEQは、入力されたオーディオ信号に影響を与え、リバーブにかかる前に、信号の中の耳障りな周波数、共鳴する周波数、または濁った周波数をカットすることができます。ポストEQはリバーブ音に作用し、ミックス内の他の要素と衝突する周波数を取り除くことで、周波数のマスキングを最小限に抑えることができます。

EQは、特定のミックスやレコーディングのニーズに合わせてリバーブサウンドをシェイプし、カスタマイズするための重要なツールです。

楽器への適用

音楽制作において残響効果は、3次元的な空間や雰囲気を加えたり、音の聴こえ方をリスナーに近づけたり遠ざけたりするために使用されます。それでは、実際にどのようにこれらのテクニックを適用していくかを見ていきましょう。

1. 素材を確認する

リバーブを適用する際は、使用する素材に大きく影響します。まずは、トラックの特徴に合ったリバーブを選ぶことが重要です。それでは、まずサンプルトラックを聴いてみましょう。

はじめに、リバーブタイプは音の響き方を基準に選んでみましょう。この曲はエレクトロニックなスタイルなので、”自然な” サウンドを作ることにこだわる必要はないでしょう。賑やかなアレンジのため、何か明るい音が目立ってもいいかもしれませんね。そこで、プレートリバーブを使ってみましょう。iZotopeのNeoverbを使います。このプラグインは、簡単に使用できるインテリジェントな機能を豊富に備えています。バスまたはセンドリターンチャンネルにリバーブを追加し、信号を100%ウェットに設定します。

2. リバーブのパラメーター調整

リバーブを追加したら、次にディケイタイム (Time) とルームサイズ (Size) を設定します。ここでも素材に従います。このトラックには、8分音符のアルペジオが存在しており、あまり空間的スペースがないので、ディケイタイム (Time) を短くすると混濁を避けることがきます。ルームサイズ (Size) に関しては、より小さな空間の方がこの音が持つ親密さや近さに合っていると思うので、この設定は低めにしましょう。

Setting decay/time and size in Neoverb
Neoverbでのセッティング

3. バランスを整える

リバーブバスの設定が終わったら、どの楽器をどのくらい送るかを決めます。キックとサブベースはドライのままにしておきます。これらの低域は、リバーブをかけてもほとんど効果がありません。他の素材については、ミックスの中でどの程度「遠い」存在にしたいかによります。8分音符のアルペジオはリバーブをたっぷりかけると遠くに追いやれますし、スネアは少しかけるだけで、シャキッとクリアなサウンドをになります。

次に、リバーブボリュームのバランスを調整します。リバーブをかけすぎて、ミックスが濁ってしまうことはよくあります。経験則から言うと、リバーブレベルは常に下げめに設定するのがベストです。クリーンですっきりしたミックスに仕上がったとき、 後で自分を褒めたくなることでしょう。リバーブバスのレベルを -4 dB 下げてみましょう。

4. リバーブ信号の処理

最後に、リバーブ信号に対して、もう少し処理を加えてみましょう。リバーブは、EQやディストーションのようなエフェクトではなく、トラックに全く新しい音を加えるようなものです。この音を他の音と同じようにコントロールしないと、他の音とぶつかってしまうことがあります。最良の解決策は、リバーブを1つのチャンネルにインサートするのではなく、独立したバスまたはセンドリターン・チャンネルとして配置することです。この場合、リバーブミックスを100%ウェットに設定します。プロジェクト内の他のチャンネルからリバーブバスに信号を送り、リバーブバスのボリュームフェーダーを調整することでウェット/ドライのミックスをコントロールすることができます。

リバーブをバスやセンドリターンチャンネルで使用する場合は、リバーブの後にさらに処理を加えることを検討する必要があります。EQを使用して不要な低域や高域をカットしたり、きついレゾナンスを調整したり、サイドチェーンコンプレッションを適用して、重要な音があるときのみリバーブ音をダッキング (下げる) させるなど、さまざまな工夫をしてみてください。さらに、フランジャーやディストーションなど、クリエイティブな方法でリバーブを処理することもできます。

EQで400 Hz以下の低域をカットして濁りを防ぎ、10 kHz以上の高域をカットしてハイハットが輝くようにします。次にサイドチェーンコンプレッションをかけ、スネアがヒットするたびにリバーブがダッキングするようにします。

サウンドについてはこんな感じです。では加工後のトラックを聴いてみましょう。前半はドライで途中からリバーブが効いてきます。

リバーブは、トラックに絶妙な深みとまとまりを与えてくれるエフェクトだということがお分かり頂けたと思います。また、リバーブはボーカルのために空間を残すような、軽やかなエフェクトです。

リバーブを使いこなしましょう!

この記事では、リバーブとは何か、主なリバーブの種類とパラメータを調べ、ボーカルや楽器の制作にどのようにリバーブを使用するかをご紹介させて頂きました。

早速、Neoverbをはじめ、RAUMRC 48などいくつかのプラグインを使って、自分なりの方法でリバーブを使い始めてみてください。

NIのリバーブプラグイン製品はこちら

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