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by David Abravanel

不協和な合唱、サウンドデザインとスクリプト:MYSTERIAはこうして作られた

Galaxy InstrumentsのUli BaronowskyとStephan Lembkeが、緊張感を演出するボーカル音源MYSTERIAの裏側を紹介。

世界最古の楽器とも言える人間の声と比べれば、サンプラーはおそらく最新の楽器とも言えるだろう。著名な音源開発会社であるGalaxy Instrumentsは、この世界最古の楽器をパフォーマンスやカスタマイズ、さらに深堀りして再発見する新しい方法を見出し、広く様々なジャンルの傑作を描くツールMYSTERIAがKONTAKT上に誕生した。

エイリアンの静寂の中のささやきから壮大なリバーブが響き渡るアンサンブルまで、MYSTERIAは、音楽家、サウンドデザイナー、ゲームや映画などの楽曲制作に、豊かな音のパレットを提供してくれる。超低音域でのしゃべり声や、4つの異なる音源の自然なブレンドなど、人間の声で作りあげられたサウンドなのかどうかを見抜くのは難しい時がある。

ドイツのケルンにあるスタジオから、Galaxy InstrumentsのUli BaronowskyとStephan Lembkeが、合唱アンサンブルの録音やKONTAKT上でのサウンドのミックスの仕方、エフェクトのかけ方やインストゥルメントのコントロールの微調整など、努力を惜しまないMYSTERIAの制作背景について話してくれた。

MYSTERIA制作のインスピレーションの源として、どんな音楽を聴いてたのでしょうか?

Uli Baronowsky: 僕の場合、主にクラシックだね。典型的なクラシック音楽というよりは、Krzysztof Pendereckiとか、György Ligetiとか、そういったものを聴いていた。サウンドトラックで合唱を耳にすることはあまり多くないから、主に彼らのような音楽がインスピレーションの源になったと思う。あとは、一緒に働いた中に合唱の指導者のような存在の人がいて、合唱のための現代音楽を作曲したり、指揮をしている人なんだけど、彼がある種の感情を導き出す音の質感作りに際してアイディアをたくさん提案してくれたんだ。そういったものが僕のインスピレーションの源泉だね。

Stephan Lembke: 僕もUliと同じだね。様々な種類の音楽を一通り調べたんだけど、このような音楽にたどり着くのはとても難しかった。THRILLの制作時に、色々な種類のサウンドトラックとかTVシリーズとかを聴いていたんだけど、エレクトロニックなサウンドの断片やオーケストラのクラスターとかは、ほんの少しだけど見つけることができた。でも、MYSTERIAの場合、現代の映画音楽の中に合唱関係のものを見つけるのは本当に難しかった。

Uli: THRILLの時は、サウンドトラックの中にオーケストラのエフェクトは頻繁に耳にすることができて、現代クラシックの作曲家といつも関連がある。特にPendereckiのような音と関連があったたんだ。Pendereckiの作品を聞いたら、一部を抜き出してそのままサウンドトラックに使えるような部分がたくさんある。同じような関連性が今回もあったんだけど、オーケストラと比較すると、サウンドトラックの中で合唱の部分というのは本当に少なかった。

主にMYSTERIAは「アトモスフィア」と「クラスター」に分かれていて、アトモスフィアは決まったピッチから展開するのに対して、クラスターはキーボード上の異なるノートで演奏することができますね。アトモスフィアとクラスターのどちらに適しているのかを分けたのですか?

Stephan: それは技術的な部分に関連していて、例えば、一緒に動く映像がたくさんある場合や、グリッサンドがあちこちにある場合は、クラスターデザイナーではコントロールが難しいけれども、逆にアトモスフィアには適した良い例だったりする。他には、インターバルがあるようなある種のメロディも、クラスターデザイナーを選ばなかった。なぜならギャップを埋めるために他のサンプルがたくさん必要だったり、そのメロディに支配されてしまうからね。クラスターでは1つのピッチにつき1つのテクスチャーという制限があるんだけど、アトモスフィアはもっと自由なんだ。だから大部分は、ピッチの変化や異なるインターバルがあるかどうかに関係してる。1ヶ所につき1つのキーやピッチに焦点を合わせられるかどうか、とかね。

Uli: そうだね。特に不協和音的な響きであろうとなかろうと、そのようなテクスチャーがあると、クラスターデザイナーでは生み出せないような偶然の複雑さを得ることがあるんだ。グリッサンドやピッチシフティングなんかを用いたある一定のテクスチャーやアーティキュレーションがあっても、常に合唱団の1人の声につきキーは1つだけだよね。だから、合唱団全員が偶然性を保ちながらグリッサンドやメロディの断片を歌っていたら、クラスターデザイナーやマルチサンプルだけでは手に入れられない複雑さが生まれるんだ。

アトモスフィアの説明で「偶然」という言葉が出てきましたが、MYSTERIAを演奏する点で、それはどういう意味ですか?同じキーを押すたびに毎回違うサウンドが出てくるということですか?それとも、ユーザーやパフォーマーを驚かす一般的な何かですか?

Uli: 散りばめられた音のテクスチャーを手に入れることが目的で、だから、この場合の「偶然」の意味は、例えばあるメロディの一片とか調性とかがあって、そこからシンガー達にランダムに歌ってもらうってことだね。そうすることによって、興味深く拡散しているテクスチャーを手に入れることができる。

Stephan: インストゥルメント自体ではなくて、そのために行った録音セッションや合唱のパフォーマンスについての話なんだ。だから、MYSTERIAに、キーを押すたびに毎回まったく違う何かが生まれるような偶然的な要素のパラメーターがあるという意味ではない。作曲家にとって、DAWを立ち上げる度に違う音になったら、映画の場面などのための作曲が複雑になってしまうからね。だから、インストゥルメントとしてはコントロール可能なものにしたいけど、合唱パフォーマンスの録音は少し偶然性を含むものだった。でも、その一方で、そういった偶然的な空気感が録音されて重なりあっているから、サウンド間のモーフィングや、サンプルの違った部分のループポイントから来るダイナミクスの変遷によって偶然的な雰囲気が生まれることもあるよね。例えば、XYコントローラを好きな部分に設定して、そのまま触らないでキーを押したままにしておく。10分ぐらい聴き続けることができて、その後繰り返しになるんだけど、オーガニックなサウンドだから繰り返しの感覚が全然ないんだ。

 

つまり、1つのループではなく、たくさんの違ったヴォイスの異なるループポイントがあるからということですね。

Stephan: ああ、違ったレイヤーとかそういうようなものだね。だから、何をどれぐらいの長さ保っているかによって、ある種の偶然的な感じが生まれるんだ。

XYコントローラーのきれいなクロスフェードを作るのに2ヶ月もかかったんだ。本当にストレスが溜まった時期だったよ。

MYSTERIAのXYコントローラーはとても素晴らしい。多くの他のサンプルインストゥルメントもサンプルを混ぜ合わせるために同様のコントローラーを搭載していますが、どこが継ぎ目なのか聴いてわかってしまいます。でもMYSTERIAの場合は本当に滑らかですよね。急に変化することがなく、気づかないうちにサウンドの変化が起こっていて、ヘル・レイザー風の囁きから天国のようなシマーサウンドまで、繋ぎ目に気づくことなく移り変わっています。このようなモーフィングをKONTAKT上でどのようにデザインしたんですか?

Uli: 初めに伝えたいのは、左と右の両側に配置された2つのサウンド間のモーフィングやフェードしているのではなくて、両側に複数のレイヤーがあることから来る組み合わせなんだ。だから、XYのどこにいるかによって、右と左のレイヤー間の組み合わせが常に違ったものになる。そして、実はこのエンジンはMYSTERIAではなくTHRILLの時に開発して、数ヶ月かかった。

Stephan: ああ、確かそうだったね。XYコントローラーのきれいなクロスフェードを作るのに2ヶ月もかかったんだ。本当にストレスが溜まった時期だったよ。

 

つまり、KONTAKTのカスタムスクリプトを書いているということですね?

Stephan: そう。

Uli: 当時の焦点はカーブで、正しいカーブを手に入れたら滑らかになるって感じだった。とても長い道のりだったけれど、THRILLもMYSTERIAも結果にはとても満足している。サウンドの変遷がとても滑らかだし、違うサンプルにいつ移り変わったのかが本当にわからないからね。いつもとても滑らかな形でモーフィングするんだ。

Stephan: そこには2つの理由があると思う。1つ目は、2つのサウンド、2つのレイヤー、左側と右側の間で、XY上のモーフィングをやっている部分で、これがとても滑らかなのは、レイヤーやソース自体を僕たち自身がデザインしたからなんだ。そこはユーザーに委ねることができない。サウンドデザインの過程で、ボリュームカーブが滑らかな変遷になるソースエディターを使っているからね。ボリュームカーブがあって、それを作ったりレイヤーにしたりクロスフェードすることができて、ほぼ毎回各サンプルセット毎ににカスタムメイドしてるんだ。基本的には、使いたいサンプルを入れて、クロスフェードに合わせたボリュームでカーブセットを設定して、本当に滑らかなボリュームカーブになっているか確かめるために最終的には手動で調整している。そこからさらに滑らかにするために、EQバンドのオートメーションのようなものも使っていて、これら全ての工程がたった1つのソースのために存在しているんだ。

もう1つの理由は、間に切れ目が全くないから、あるソースを他のものと一緒にレイヤーにして、2つのレイヤーをモーフィングしたりクロスフェードしたりしても、問題なく上手くいく。そんな感じだね。

合唱の録音をしていた時、どんなことを考慮しましたか? ブラチスラバとケルンの合唱団を起用されていましたね。正しい空間、正しいマイク、そして、プロセスのための正しい機材の選び方については何を考慮されていたのでしょうか?

Uli: ブラチスラバに行った理由は、以前オーケストラの録音に行ったことがあるからで、主として、そのスタジオに大きなサウンドがあるからなんだ。ほとんどのオーケストラや合唱用の録音スタジオはちょっと小さすぎて、あれほどの空間は手に入らない。そんな理由からブラチスラバへ行って、たくさんのマイクで録音したんだけど、マイクのセットアップは昔ながらのものだったね。デッカツリーと、近接マイク、アンビエンスマイク、あとは、ええっと、100kHzマイクって名前は何だった?

Stephan: ああ、100kHzマイクは、三研マイクロホンのCO-100kだよ。100kHzまで収音できるから、合唱を192kHzで録音した。そうすれば、これまで聞いたことがないような倍音を全部捉えることができて、それをピッチダウンしたら可聴範囲にすることができるんだ。サウンドデザインなんかに使えるんだけど、サウンドは自然なままなんだよ。

もしテープマシンで普通のスピードで何かを録音して、スピードを下げて再生すると、常にモンスターや神の声みたいな音になってしまう。でも、CO-100kのようなハイレゾのマイクで非可聴範囲の倍音を収音してピッチダウンすると、それがそのまま残っていて、「ああ、テープのスピードを下げたんだね」って感じの音じゃなくて、本物のとても大きな人間みたいなサウンドになるんだ。

Uli: とても特別なマイクだよね。それで、ケルンに行った理由は、違う合唱団がいたからで、初めに話していた合唱の指導者もここに関わっていたんだ。彼らが実験的なものに慣れていることを知っていたし、現代の声楽楽曲を専門とする素晴らしいカルテットもいた。彼らとセッションをしたんだけど、それは…

Stephan: びっくりするほど素晴らしかったね。グレゴリア聖歌のような曲を歌ってくれて、「奇妙な音符をいくつか入れていただけませんか?」と頼むと間違った音をいくつか混ぜてくれたんだけど、完璧なやり方だった。それでその後、「もう一度、今度は、もう少し多めに」と伝えると、もっとクロマチックになったり、四分音になったり、そんな感じだったね。だから、彼らと一緒に仕事ができて、本当に光栄だと思っているよ。

これらのセッションが偶然的な雰囲気になったんですか?

Stephan: ああ、そうだよ。カテゴリーを見たときに、メインプリセットやブラウザの中に「quartet」ボタンがある。そこをクリックすると、そのカルテットのサウンドが全部手に入るよ。

MYSTERIAの「sub」というプリセットの中には、巨大な洞窟のインパルスレスポンスやLustmordやBurialの曲のドローンのようなサウンドなど、とても非人間的な音がありますね。100KHzマイクを使って大幅なピッチシフトを行ったとのことですが、その他のサウンドデザイン方法には、どんなものがありましたか?

Stephan: ピッチ関連のもの、スピードをゆっくりにする方法、ピッチダウンリバーブを使ったりとか、たくさんのサウンドデザインが関係しているね。人間の声はハイブリッドなものを作るためのスタート地点なんだけど、ハイブリッドなサウンドでも声にトリガーされたシンセみたいな音にすることができる。「sub」の場合はそれの極端なバージョンで、ピッチをとても低くして、周波数を支えながら骨組みだけを残して上の部分は全部取り除いたんだ。

Uli: ああ、だけど、僕が思うに、ほとんどの「sub」のサウンドの基本部分は本物の合唱団のバスのパートで、それを後から2、3オクターブピッチダウンした。そしてそこから、少しだけエンハンサーをかけたりとか、Stephanが言ったようにEQを使ったりとか、いろんなことができるけど、でも、基本の低音部分はリアルな録音から来てるんだ。

Stephan: 訓練された声だからね。ブラチスラバのバス歌手に衝撃を受けたんだけど、彼らはとてもプロフェッショナルな合唱歌手だから、「それでは次に、みなさん『アー』という母音で、できる限り最も低い音で歌ってください」と頼んだら、(低音を歌いながら) 普通は多分これぐらいの低さを予想すると思うけど、でもそれよりももっともっと低かった。本当に実体験だよ。

最後の質問は、エフェクトについて。MYSTERIAにはカスタマイズのためのエフェクトが多く揃っていますが、その中に「The Hacker」という名前のものがありますね。マニュアルでは「LFOが基となっていて音に動きを加えるエフェクト」と説明されていますが、基本的なトレモロ以上の何かをやっているように感じます。

Stephan: 大部分はトレモロなんだけど、たくさんの異なるカーブがあるんだ。基礎部分はステップシーケンサーで、KONTAKTでこういうエフェクトを作りたい場合はステップシーケンサーを使わなきゃいけなくて、まずはそこから何かを制作し始めるんだ。カーブをデザインする時は注意が必要で、サイン波と書いてあっても、それは本物のサイン波ではなくて128ステップの近似値で描かれているものなんだ。だから、「了解、じゃあ、他にできる方法何だろう」って考えて、思いついたのがディラックインパルスのようなとてもシャープな波形を用いる方法だったんだ。

Uli: 僕にとって、このインストゥルメントの中でThe Hackerがいい感じに動くことの要点は、テクスチャーだね。テクスチャーが切れ目なく常に進化し発展してるから、シンプルなHackerをその上に使うだけで、聞こえているどんな小さな部分でも全部が違ったものになる。基盤になっているソース音源が絶えず発達して変化し続けているから、常にモジュレーションフィルターをかけてるような感じなんだ。だから、ハックすると、どんな小さな部分でも全部が違ったものになって、それがHackerがいい感じになることの一番の理由だよ。

 

MYSTERIAの詳細とデモサウンドはこちら、そしてGalaxy InstrumentsがNIのために開発したMYSTERIA以外の新作であるTHRILLNOIREをチェックすることもお忘れなく。

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