by James Russell

Junkie XL: シンセ愛好家が映画音楽のスーパースターに

Tom Holkenborgが、独自のサウンドを編み出し、映画スコア界のトップにまで上り詰めた経緯を振り返る。

Tom Holkenborgについてよく知らない人は、最近のハリウッド映画大ヒット作のクレジットをチェックするといい。 「トゥームレイダー」「ダーク・タワー」「マッドマックス 怒りのデスロード」「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」「カンフー・パンダ2」など、野心的な映画音楽プロデューサーなら切望してやまない作品の中で業績を積み上げてきた。

しかしこれだけではない。 Tomは別名義Junkie XL(JXL)で、あのエルビス・プレスリーのリミックス「A Little Less Conversation」を担当した。 2002年、あの古いものに新しいグルーヴを吹き込んだ流行りのトラックを聴かずして外出することはできなかった。 しかし、Holkenborgの話はこれだけでは終わらない。

世界的な大ヒットを追いかけるチャンスがありながらも、Tomはその道を選ばなかった。彼はスタジオ機材をまとめ、サウンドトラックの作曲家としてのキャリアを積むためにLAへ旅立った。 映画界で大人気のマエストロは、今どのような生活をしているのだろうか。

「3時頃に起きてバイオリンを1時間ほど勉強してから、今手掛けてる新しいプロジェクトのミックスを始めた」LAのスタジオからTomはそう言った。

キーボードやピアノのバックグラウンドがあったのは知ってましたが、バイオリンまでできるとは知りませんでした。

実を言うと、数週間前にバイオリンとチェロを手に入れたばかりなんだ。 本当に習ってみたかったし、これらの楽器についてもっと理解したかった。 すばらしいことだけど、かなり大変な道のりさ。

 

スコアでもっとリアリスティックなパートを書きたいからですか?これまでどんなことを学びましたか?

僕はギタリストだからね。ストリングスを書く時、いつもはギターでチェックするんだ。もしギターで上手く行けば、通常はバイオリン奏者も簡単に演奏できるんだ。 でも分かってもらいことは、この小さなセクション (首がバイオリンの胴部に触れるあたりの部分)が約1オクターブ半の演奏をするので、僕らはバイオリンのこの小さなセクションのための超高速なリフを書く。

その時に、もし君がバイオリン奏者なら、腕を胴体に巻きつけて完全に伸ばさないといけないんだ。 他の場所はギターとほとんど一緒だから素早く動かすことができるんだが、ブリッジに向かうと、、

これまでも演奏家たちには十分敬意を表してきたけど、バイオリンを習い始めた今では「どうしてこんな僕に我慢してくれるんだ?」って思うね。

ソフトウェアを多用する機会もまだありますよね? ソフトウェアで作曲する時はオーケストラライブラリーを使うんですか?

使っているソフトウェアの60-70%はカスタムメイドで、残りの25%は既存のものに頼ってる。 でも、そういったソフトウェアは手当が必要だ。 プラグインを分解したり、サンプルをリミックスしたり、それを元に戻したり、「使えるライブラリー」にするには多くのプロセスが必要で、それにはCubaseを多用している。

時には自分で楽器を演奏することもある。ドラム、ギター、ベース、シンセ、サウンドデザインは、どれも完全セルフメイドなんだ。 もっと手の込んだものを作るには、簡単なエディットやスクリプト作成の手助けが必要になる。

最近はフラメンコギターを丁寧にサンプリングした。 ここで全て作業したんだけど、録音を切り刻んで、すべてのサンプルをミックスして、KONTAKTの初期パッチを作成して、演奏して、満足いくまで調整を重ねたんだ。

 

そういった作業をしておくと、作曲の段階で手間が省けますよね? 

そうだね。この仕事では、時には半年先を見越さないといけないんだ。 例えば、来年の3月までに担当する映画が4本あって、どんな楽器が必要かはっきりわかっている。 今月、自分で製作しようとしている楽器が1つあるけれど、それに10か月は必要ない。 作曲の段階になった時に、必要なサウンドがないというストレスを感じることはないだろう。

 

Desert Dystopian」というサウンドパックをリリースされたばかりですが、これはご自身の映画音楽の仕事から着想を得たとのことで、 換情的なタイトルですね。

音楽的な点について話すと、今年リリース予定のサウンドパックには、それぞれ僕が手掛けた映画に非常に近いテーマがある。 「Desert Dystopian」は「マッドマックス」のスコアと共通するところがあって、ものすごく派手で攻撃的、大胆で、繊細さなんてかけらもない。みんなそれに気づいているようだね。

BPMは1種類、キーも1種類を選んだ。だから、このサウンドパックを使う人は上手くミックスできるよ。

サウンドパックの一貫したトーンとフィーリングを得るために、しばらく前の「マインドセット」を取り戻すことは難しいことですか?

いや、僕にとっては簡単だ。僕は自分のハートに近い音楽しか作らないし、別人になろうとする音楽は作らない。 自分が誰だか分かっているから、スイッチを入れるだけでいいんだ。 サウンドパックは自分の一面に過ぎないから、そこに行くのはとても簡単なんだ。

オーケストラはそれほどたくさん入ってないし、オーケストラパートはガッチリ処理されている。特にストリングスとブラスはしっかりとデザインされている。ドラムとパーカッションは「集団」による同時演奏サウンドがメインだけど、実際演奏しているのは僕1人。コンプレッサーやディストーションなどの多様なミックスの技を使って、とても逞しいサウンドに作り込んだ。 でも、シンセサイザーを使ったものもたくさん入ってる。

 

あなたのシンセサイザーの経歴はとても特別に思えます。 アナログが時代遅れで、まだとても安かった時代に、楽器屋で働いていたそうですね。

そう、1982年頃から90年代まで楽器屋で働いていた。 その楽器屋に初めて「MIDIコーナー」を設置したのは僕だった。 ちょうどAtari 1040 ST、それからDX7やJuno-106といった素晴らしいデジタル機材が出て来た時代だね。 その頃はまだ誰もMIDIなんて知らなかったけど、僕は夢中になっていろいろなことを覚えていった。

北オランダにある小さな楽器屋だったけど、僕らにMIDIとシンセサイザーの知識があったおかげで、すぐに本格的な楽器屋に成長したんだ。 僕はすごく仕事が上手かったから、みんな古いアナログシンセサイザーを売り払いたくなった。今じゃ宝石みたいに扱われているっていうのにね。

客が店にやって来て、僕がMIDIのデモを見せた。DX7、D-50、Korg M1といった機材のデモだ。すると客は「最高だね。欲しいけど、(売れるものは)MemorymoogやKorg MS-20やMS-1しか持ってないんだ」って言うんだ。 ボスに話してみると、「あんなゴミくずで何ができるんだ、 もう誰も欲しがりはしないよ」って言った。

客が8000ドル相当の買い物をしたいことをボスに伝えたが、下取り価格は全部で150ドルだった。 ボスはあのようなマシンを店に置きたくなかったんだよね。でもそのおかげで、僕が150ドルでその古い楽器をすべて買い取ることができた。 あの10年間は、あの類のシンセサイザーを立て続けに買っていた。だから大量のビンテージコレクションを持っているんだよ。

その頃のシンセはまだ持っているんですか?

ああ。僕のメインの仕事部屋は「Studio Time チュートリアル」(Tomの製作テクニックやツールを紹介するYouTubeシリーズ)でも取り上げられてる。 丁寧に管理してるからね。しょっちゅう修理して、音もルックスも素晴らしい状態に保っている。

 

サウンドトラックで使うこともありますか? 一昔前の映画のサウンドトラックでは、ストリングスとブラスが当たり前でしたが、時代は変わりつつありますよね。

確かに今、波が来てるね。 1回目の波は80年代、「ビバリーヒルズコップ」とか「トップガン」の時代、それから波は消えて、今再び来ている。 少なくともこの10年、映画音楽の中でシンセや電子音が使われることが増え、特に最近では、オーケストラなしのシンセのみの形で使われるようになってきた。

2、3年前に手掛けたドキュメンタリーは100%シンセだった。僕はいつの時代もシンセを使ってきたけどね。 シンセをMIDIとしてではなくオーディオとして使うんだ。あまり実用的ではないが、パーツを特定し、オーディオをシーケンサーに録音して、切り貼りするんだ。

バーチャルアナログ・プラグインもよく使うよ。全てがパーフェクトな時は、2〜3週間かけて、ソフトシンセを本物のシンセと入れ替えて、キャラクターをもっと濃くするんだ。

 

例外はありますか? あなたの作品に上手く溶け込んでいるソフトシンセもありますか?

アナログシンセがソフトウェアバージョンよりも音がいいとは限らない。DX7やDX1でのパッチを再現するのは作業効率が悪いので、FM8のインスタンスをCubaseに残しておくことはよくある。 オールドスクールの気分ではなくて、プラグインのキャラクターが必要になる時もある。

REAKTORMASSIVEは色々なことができて、昔からお気に入りのシンセだね。 この2つのシンセは、アナログとは全く違う存在だ。だから、MASSIVEを他のシンセに置き換えたことはないんだ。

 

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