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by Native Instruments

Kuniyuki Takahashi: リアルタイムで楽曲を再構築する

アコースティックサウンドと電子音を活かしたライブリミックスの手法

札幌を拠点とし、世界を舞台に活躍する音楽プロデューサーのKuniyuki Takahashi。彼の音楽は、国境を問わず常に独特の世界観を持ち、世界各国のプロデューサー、DJから高い評価を得ている。近年ではヨーロッパ、南アフリカ、南米、アメリカ等、国内外で即興性の高いダンスミュージックを独自スタイルで行なうかたわら、楽曲制作ではサカナクションのアルバム「834.194」の楽曲 「894.194」を共同プロデュース、アレンジで参加し、楽曲制作、ライブを問わず精力的な活動を行なっている。このたびNATIVE INSTRUMENTS製品を中心に自身のライブセットを一新したということで、どのような機材やセットアップになっているのかを具体的に伺ってみた。

ーライブセットの機材について詳しく教えて頂けますか?

オーディオインターフェイスのKOMPLETE AUDIO 6 MK2、キーボードコントローラーのKOMPLETE KONTROL M32のほかに、リズムマシンのRoland TR-8S、MIDIコントローラーのKORG nanoKontrolとAKAI Professional MIDI MIX、DAWはAbleton Liveです。

ライブではAbleton Liveのセッションビューに、リリースされている曲をリズム、ベース、シンセ、ボーカル、パーカッションなどの大まかなグループに分けてオーディオ化してあるものを並べていて、別の曲のベースやシンセなどのパートをDマイナーやAマイナーなどのキーで分かりやすく管理しているんです。ライブリミックスをする感覚でいくつかの異なる曲のパートを混ぜたりしますが、それが全く新しい曲になって楽しめる時があります。

具体的にはディレイとオーディオルーパーがインサートされている録音専用チャンネルが用意してあり、そこにソフトウェア音源や、マイクで収音した外部音を録音してできたオーディオ素材を、8つの異なるオーディオトラックのスロットに配置して、リアルタイムに再構築していくんです。リズム部分ははRoland TR-8Sで鳴らしていて、KOMPLETE AUDIO 6 MK2のCh.1にはマイク、Ch.3~4にはTR-8Sを入力。マイクでは身の回りにある音や民族楽器などを録音することが多く、マイクのヘッドをたたいてキックの音を作ったりすることもあります。Ch.2は予備で空けてあり、急きょセッションすることになったボーカルのほかシンセやパーカッションなどの楽器入力用となっています。

ーコントローラーを複数台使われていますが、どのように使い分けていますか?

主にKOMPLETE KONTROL M32ではMASSIVE XFM8WEST AFRICAなどのKONTAKT音源などを演奏しています。8つのタッチセンサー式ノブが、読み込んだ音源の主要パラメーターを自動マッピングしてくれるので、音色を容易に変更できて便利です。KOMPLETE KONTROL M32の右隣にあるAKAI professional MIDI MIXでは、Live内蔵のアルペジエイター、各チャンネルのボリュームフェーダー、FM8のパラメーターなどを制御、MacBook Proの手前のKORG nanoKontrolでは、録音ボタンやAUXに立ち上げたリバーブのパラメーター、各チャンネルのミュート/ソロなどを割り当てています。

ーMASSIVE Xを良く使われているそうですが、どんなところが気に入ってますか?

オシレーターも幅広く設定出来るのでアナログライクな音からFM音源、ウェーブテーブル特有の動きある音をサブモードやPM、マトリックスのシグナルルーティングを駆使して、より複雑な響きがする音が作れるのがとても好きですね。
さらにノイズを生成するパートには、工場の機械音から自然音、複雑なノイズ等、かなり豊富な波形がプリセットされているので、
抽象的なサウンドスケープをイメージ出来る、幅広い音作りが出来るのも良いと思います。
また1つ1つのツマミに表記されているパラメーターのネーミングもユニークで、インスピレーションに繋がる要素になっています。
純粋に音色作りに楽しさがリンクするという事も音楽制作においては大切な要素かと思います。

ーライブや作曲を始める時、リズム、コード、メロディーなどまず最初に取り掛かるのはどんなパートからなのでしょうか?

制作時は最初にリズムパートを組む事が多いですが、その次にMASSIVE XやFM8などでいくつかのトラックを作り、そこから音楽の要素をさらにブラッシュアップしていく方法が多いです。あとWEST AFRICAのような生楽器をベースとしたKONTAKT音源を使い、打ち込み感をなくした曲作りから始めることも好んでやっていますね。

ライブの時は、イベントの方向性にもよりますが、いきなりリズムから始まる時もあれば、マイクを使って色々な楽器やガラクタ、その場所に落ちていた空き缶や枯葉、石など、様々なものを使ってエクスペリメンタルな感じから始める時もあります。

ー楽曲制作の最終段階ではどのような音処理がされているのでしょうか?その際に気をつけられているポイントなどもありましたら教えてください。

最終ミックスでは楽器の配置や空間を意識する事が多いですね。立体的である事も重要ですし、各楽器の周波数帯域が重なる事で予想もしない
バランスの影響もあるので、使用している楽器の似た音や音階などは一度グループ化して、iZotope Ozone 9で位相の問題がないか確認をします。
後はハードシンセや最近のソフトウェア音源でもそうですが、プリセットの状態ではレンジが広く単体で聴いた時に良い音として作り込まれていることがありますが、各楽器が一緒になった時にはそこまで広いレンジで鳴る必要がないので、不要部分EQでカットして、音の居場所をしっかりと形作ることもしています。

Ozone 9を使ったエフェクト処理の仕方で個人的に好きな方法なのですが、いくつかの楽器ではリバーブ成分をステレオではなくモノラルに近い感じにしてあげて、なおかつ全体の音のバランスで左右とセンターの音の配置がうまくいくと、良い立体感が生まれて深みが増すんです。言葉でお伝えするのがなかなか難しいのですが、ミックスの段階である程度立体感を作っておけば、マスタリング時にEQ処理と音楽が持つダイナミクスの特性をしっかりと活かしたマスタリングを心がけるだけで良い曲になる事が多いと思います。

使用機材:

KOMPLETE KONTROL M32 / KOMPLETE AUDIO 6 / MASSIVE X / FM8 / WEST AFRICA / KONTAKT 6

当記事はSound & Recordingの記事を再構成したものです。

Original article: Susumu Nakagawa (Rittor Music)

Additional interview: Ryo Takahashi

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