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by Danny Turner

エミー賞受賞作曲家Lolita Ritmanisがスーパーヒーロー系映画のスコアリング、お気に入りのKONTAKTライブラリ、そして夢のプロジェクトについて語る

『Blizzard of Souls』や『Batman Beyond』を手がけたラトビア系アメリカ人の作曲家、Lolita Ritmanisをご紹介します。

ロサンゼルスを拠点とする作曲家、Lolita Ritmanisは、今まで何百もの映画やテレビ番組の音楽を担当してきましたが、近年ではWarner Bros.の『Superman: The Animated Series』、『Batman Beyond』、『Justice League』などのスーパーヒーロー系アニメシリーズの作曲とオーケストレーションで知られています。

彼女自身もある種のスーパーヒーローのような存在です。彼女は、1949年に第二次世界大戦中のラトビアから逃れ、アメリカのオレゴン州ポートランドに移住した移民の両親のもとで生まれ、子供の頃からピアノ、フルート、ギター、声楽を習い、ジャズやクラシック音楽のアンサンブルに参加していました。11歳で初めて作曲を行った彼女は、母親のおかげで音楽の勉強から解放されたと感じています。それは、彼女が自分の成長に欠かせない、とある信念に基づいた行動だったと、今では思っているようです。「正直なところ、もし母が、私がピアノを叩いてうるさくしているのを聞いていたら、おそらく私を応援しなかったでしょう。母は私が音階やバッハの楽曲を練習すべきだとわかっていましたが、それでも私を止めようとしなかったということの方が重要なのです。私は幼い頃からかなりピアノが上手な方だったのですが、練習の後、数時間ぐらい脱線して、後に曲になるものを即興で演奏していたんです。」

Lolitaは、プロの音楽家であり、彼女にとって最初のピアノの先生でもある姉のBrigitaが、自分の音楽的成長に影響を与えてくれたことに恩を感じています。「私は楽譜の書き方を知りませんでしたが、15歳年上の姉というもう一人の偉大な天使が助けてくれました。創作活動とは、私たちが宇宙に向けて送るポジティブなエネルギーそのものなのです。ですから、親だけでなく誰であれ、子供や大人を指導することは本当に重要なことなんです。」  

「18歳の頃、Lolitaはロサンゼルスのディック・グローブ音楽学校で作曲と編曲を学び、プロとして音楽業界に関わるという夢に一歩近づきました。高校3年生のとき、大学の見学旅行に行ったんです。UCLAやUSCをはじめとする多くの学校を見学しましたが、当時は今のような音楽プログラムはありませんでした。ディック・グローブ音楽学校は、カリフォルニア州スタジオ・シティにある古い建物でしたが、ドアをくぐった瞬間、これだ!と感じました。どの部屋でも、ギターの速弾きが聞こえてたり、オーケストラが映画のスコアや、ジャズやポップスをアレンジして演奏していたりするのが聞こえてきたんです。私はもともとシンガーソングライターのためのボーカルプログラムに参加していましたが、映画のスコアリングにもっと興味があることに気づき、1年間の作曲・編曲プログラムを受講しました。毎週、さまざまな楽器隊のために作曲し、すべてのパートを用意していましたね。2年目は映画音楽の作曲に専念し、学校にはLalo Schifrinや、Henry Manciniなど、映画音楽の作曲家が何人も来て教えてくれましたよ。」

その学校教育はどれほど重要だったのでしょうか?また、他の方法で業界に入ることは可能なのでしょうか?「他の作曲家と一緒にいること、学生や教員とのネットワーク作り、コミュニティ作りの経験は、実際の音楽教育と同等か、それ以上に重要です」とLolitaは説明しています。「何年も一人で部屋にこもって音楽を作っていては、人とのネットワークを作るという共同作業のスキルは身につきません。この業界では、コラボする相手との間にクリエイティブな意味での居心地の良さを見出し、最高の作品を生み出すために人間関係を構築することが重要なんです。USC、Berkley、Eastman School of Music、シカゴのColumbiaなど、多くの一流の教育プログラムがありますが、もしそのような教育を受けるお金がないのであれば、自宅で機材を使って多くのことを学ぶことができます。それと並行して、AFI上映会のようなイベントに参加すると、他のクリエイティブな人たち、つまり、作曲家だけでなく、監督やプロデューサー、編集者などと出会うことができます。」

学業を終えたLolitaは、最初にディズニー、次にワーナー・ブラザースで、音楽のプルーフリーダーやオーケストレーターの仕事に就きました。昼間はMichael Kamen、Mark Snow、Burt Bacharachといった著名な作曲家のためのオーケストラの編曲を担当し、夜は自身のオリジナル曲を作曲する、という生活をしていました。1991年には、アメリカの映画・テレビ界で有名な作曲家・指揮者であるShirley Walkerの助けを借りて、『Batman: The Animated Series』の音楽をWalkerと共同で担当し、初めて公式なスコアリングの仕事をすると、その後、ワーナー・ブラザースに入社し、『Superman: The Animated Series』や大ヒットした『Batman Beyond』などを手がけた後、作曲家のMichael McCuistion、Kristopher Carterとプロとしてのコラボレーションを開始します。Dynamic Music Partnersとして知られるこの3人は、『The Zeta Project』、『Teen Titans』、『Justice League Unlimited』、『Legion of Super Heroes』などのアニメーション映画の音楽を担当しました。

「私の仕事のほとんどは、ワーナー・ブラザースやマーベル関係のもので、アニメーションの世界に属していますが、本当に重要なのはストーリーテリングです」とLolitaは語ります。「スーパーヒーロー映画は、ただ単に大きく壮大なサウンドではなく、時には多くのサウンドデザインが含まれています。そこでNative Instrumentsが大きな役割を果たすようになりました。私がNative Instrumentsの製品に出会ったのは、8~9年前、ワーナー・ブラザースの『Young Justice』に着手したときです。当時プロデューサーは、伝統的なサウンドを使わずに、音楽的な感覚を持ったサウンドデザインを求めていました。その時はFM8ソフトシンセとAbsynthをよく使いましたが、それらは今でもKontakt 5と6の中でサンプルを扱うSymphobiaと一緒に使っています。」

「まるで自分が知らなかった新しい料理を初めて味わうようなものでした」と彼女は振り返ります。「AbsynthとFM8に戻らなければ、と思いました。なぜなら、いいタイミングで何かが自分の視野に入ってくると、それがインスピレーションの出発点になるからです。私は主に、サウンドデザインを行うタイミングでテクノロジーを活用するタイプの伝統的な作曲家なので、(例えばシーンの中で何か不思議なことが起こったり、Native Instruments社のライブラリの中のとあるサウンドを発見したりする瞬間)創造性に火がつき、それが起点となります。キューは必ずしも1つの音から始まるのではなく、例えば最初はパチパチという音で、そこから魔法のようなパッドへと発展していくようなものからもインスピレーションを得ることができます。その瞬間、本物のバイオリンを持ち込んで、自分が感じた音のハーモニーパートを奏でるかもしれませんが、作業が終わる頃、そのきっかけが何であったかに気づくのです。だからこそ、我々作曲家がNative Instrumentsの製品に触れることは、インスピレーションを得る方法を広げるためにも最も重要なことだと思います。NIはワークフローを妨げるのではなく、助けてくれるのです。」

時間を節約するために多くの楽器を手元に置いておきたいタイプのLolitaは、夫である音楽プロデューサー兼ミキサーのMark Mattsonにソフトウェア・ライブラリの整理を任せています。夫妻はカリフォルニア州のスタジオシティに住んでおり、プロジェクトをシームレスに進められるよう、2つのレコーディングスタジオにそれぞれ同じセットアップを用意しているのです。「新しい番組や映画では、何を変えるか検討しながらマスター(サウンド)パレットの調整に多くの時間を費やします。例えば、ゆっくりと動いたり、進化したりするサウンドデザインが多いのか、サンプルを補完するためにもっと多くのソロ楽器が必要なのか、などです。Native Instrumentsの独創的なサウンドは非常に優れているので、正直、サンプルと呼びたくないくらいですよ。オーケストラ・パレットのホストには主にVienna Ensembleサーバーを使用していますが、その中にはSymphobia、Spitfire Strings、Berlin Strings、Absynth、FM8など、Kontakt 5と6の中にあるいくつかのライブラリが含まれています。また、Battery 3と4のドラムサンプラー、Heavyocity Loops、True Strike、KompleteのWest AfricaMassiveなどのパーカッションライブラリも愛用しています。」

Symphobiaのサンプルライブラリは、個々のマルチサンプルではなく、オーケストラのセクションやフルオーケストラを一緒に演奏するアレンジにフォーカスしており、彼女も特にお気に入りです。「Symphobiaはとてもクールです。どちらかというと耳障りが良いタイプのものですが、信じられないほどワイルドなオーケストラ・エフェクトが必要なときには、重宝しますね。例えば、一日のうち4分しか作曲する時間がないときには、とても助かります。すでに書いた曲の上にこんな迫力のある音を加えることができ、途轍もないほど刺激的なサウンドを見つけることができるからです。」デジタルファイルが生のオーケストラに取って代わることはできませんが、リアルなサウンドと高解像度のサンプルは、今日の作曲プロセスにおいて重要な役割を果たしています。「映画制作会社が生のオーケストラを使えるだけの予算を持っていたら、断る作曲家はあまりいないと思います。オーケストラとモックアップを並べてみると、どっちがどっちなのかがはっきりとわかっちゃいますし…でも、モックアップだとしてもやはり素晴らしいサウンドでなければならないんです。」

作曲家にとって、人生の早い段階で夢を持ち、その夢につながる瞬間があれば、それはいつまでも忘れられない魔法のような瞬間となるでしょう。

Lolitaの最近のプロジェクトで最も注目すべきは、2019年公開の映画『Blizzard of Souls』の作曲です。この映画は、第一次世界大戦の東部戦線で戦うために入隊した16歳の少年の実話に基づいており、全編がラトビアで撮影されました。監督のジンタース・ドライバーグスは、制作開始前の2016年にLolitaと映画について話し合いを始め、最終的に2019年にラトビアのRadio 1で、State Choir Latvijaと100人以上の奏者とともにオーケストラスコアをレコーディングしました。このプロジェクトは、Lolitaの最もユニークで個人的な経験の一つとなり、ラトビアの大作映画のために作曲するという生涯の夢が実現したのです。

「私の両親は第2次世界大戦後に移住しましたが、ラトビア人であることは私の人生の一部であり、私は常に自分の文化と密接に関わってきました」とLolitaは説明します。「『Blizzard of Souls』の話が私の耳に入ってきたので、この美しい映画の音楽を担当できるチャンスに飛びつきました。人生の早い段階で夢を持ち、その夢につながる瞬間があれば、作曲家としてそれはいつまでも忘れられない魔法のような瞬間となるでしょう。『Blizzard of Souls』ではそれが実現しました。作曲に関しては、単に既存の録音物を使用することはしません。アニメーションと実写とで求められるスキルは同じです。非常にパワフルなストーリーのための音楽を作ることができるという点で、私にとってアニメのスコアリングはまさに奇跡的なことなのです。私はスーパーヒーローものが大好きですが、現実のストーリーや物語を担当するのもいいものですよ。」

『Blizzard of Souls』は彼女がやりたかったプロジェクトでしたが、同時に多くの称賛を得ました。Lolitaのスコアは、アカデミー賞のオリジナルスコア部門で最終選考に残り、国内外の複数の賞を受賞しました。「アカデミー賞の最終選考に残ったり、『Blizzard of Souls』でさまざまな賞を受賞したことをとても誇りに思っています。なにせ一生懸命取り組みましたからね。しかし、仲間に認められるのは素晴らしいことですが、一部の人に「ああ、あなたにそんなことができるとは知らなかった」と言われるのは、ちょっと面白くもあります。私がここまでハリウッドで注目されるようになったのは、両親の祖国ラトビアの映画がきっかけでしたが、私以外でも、何年も前からやっているのに、まだ中途半端にしか注目されていない人たちの知名度も上げていきたいですね。」

Lolitaは、そのキャリアの中で、スコア・作曲の分野における平等性と機会の拡大を声高に訴えてきました。2014年には、Laura Karpman、Miriam Cutlerと共同で「Alliance for Women Film Composers」を設立し、女性作曲家の認知度向上と擁護に努めています。業界の中には、変化を受け入れて女性作曲家を雇用するのが他よりも早いところもあるとLolitaは言います。「業界は進化していますが、まだ主にテレビ、一部のビデオゲーム、インディーズ映画が中心です。興行収入上位250本の映画のうち、女性が担当している割合はまだ3%程度と非常に低いのが現状です。これは、女性や有色人種の作曲家がそのタイプの作品を作るのに十分な能力を持っていないということとは関係ありません。映画スタジオ側が、熟練の作曲家たちに門戸を開いていないからです。」

最近の映画音楽の成功を受けて、Lolitaは自分の”天職”であると感じている、実写映画やテレビのプロジェクトを今後さらに追求する予定です。「私のエージェントは、時代物から実写ドラマ、テレビまで、この種の仕事を積極的に進めてくるので、私は脚本を読み、そのためのオーディションに参加しています。それと並行して、私と、私のパートナーと現在、HBO Maxの『Young Justice Season 4』に取り組んでおり、それはパンデミックの間もずっと続いています。」また、彼女は「Women Warriors」に取り組めたことにも感激しています。この作品は、800年に及ぶフェミニストの歴史を80分に凝縮し、Amy Anderssonが指揮するオーケストラが映像に合わせてライブで演奏したオリジナル・ドキュメンタリーです。「現在発売中のアルバムには、9人の素晴らしい女性作曲家の作品が収録されており、そのコンサートでは約20分のオリジナル曲を演奏しています。2019年にリンカーン・センターで初演しましたが、これをぜひとも世に出したいと思っています。」

 

Lolita Ritmanisの活動については、彼女のオフィシャルサイトで確認できます。また、Alliance for Women Film Composers(女性映画作曲家同盟)では、組織の詳細やディレクトリへの参加、スポンサーになることができます。

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