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by James Russell

MSXII: LO-FI GLOWやSOUL SESSIONSなどを手がけたサウンドデザイナーをご紹介

MSXIIの創業者Mike Simpsonが、本物であることが"いかに"サウンド・キュレーション技術を習得するために重要であるかを語る。

Kompleteでアクセスできる豊富なサウンド群は、すべてが自社だけで作られている訳ではありません。業界標準のNIのシンセ、サンプラー、エフェクトは自社で作られていることが多いのですが、すべてを自社だけで完結することは容易ではありません。

例えば、特定のジャンルの音を追求するには、そのシーンに精通した人や会社を味方につけることが大切です。サンプリング音源にしても、サウンドパックにしても、専門家以外にはわからないのですから。

MSXII(以下、MSX)もその一つです。テキサス州を拠点とする同社は、これまでにSierra Grove、Elastic Thump、Aquarius EarthなどのExpansionsを手がけてきましたが、最近ではKontakt Play SeriesのLo-Fi GlowやFaded Reelsなどのローファイ音源、そしてSoul SessionsやSoul Magicなどのソウル音源にも目を向けています。

「私は2015年にMSXIIを設立しました。」と語るのは、MSimpことサウンドデザイナーのMike Simpsonです。「自分が音楽的に取り組んだすべてのビート、サウンドデザイン、サンプル、プリセット。それらを一つにしたいという前提のもと、サウンドデザインの会社としてスタートしました。そして、一般の人々にも認知してもらいたいと思い、msxaudio.comで製品を出し始めたんです。」

それから6年が経ち、MSXIIサウンドデザインは、規模、評判、そしてアウトプットの質において成長しています。同社はテキサス州に拠点を置きながらも、常にリモートで運営しており、チームメンバーはアメリカ国内だけでなく世界中に散らばっています。NIの製品を担当する具体的なメンバーは、Mike本人と、オペレーション・マネージャーのJK Swopes、プロデューサーのDaniel SteeleとTone Jonezの4人で、この4人がサウンドデザインを担当しています(上のヘッダー写真にも写っています)。

プロダクション、セッションピアニスト、トランペッター、ベーシストなどのエキスパートが集まって構成されています。

MSXIIでは、若いプロデューサーが業界で楽しめるもの、自分たちが見たいと思うものを作るために、集まった集団ですが、それが今やどんどん広がっていって、自分でも信じられないようなことが起きています。

「最近は、プロデューサーがいつでも我々の商品を手に出来ることに注力しています。現時点で3つのiOSアプリがあり、現在は4つ目と5つ目に取り組んでいます。また、AU/VSTプラグインにも取り組んでいます。膨大なサンプルライブラリを作成したり、レコーディングをしたり、限定生産のハードウェア、Bleep Drum Machineのようなこともやっています。常に好奇心を持ち続けていますよ。」

MSXIIの限定版 Bleep Drum Machine

MSXIIの活動は、彼らのサポーターに大きく影響されています。Mikeと彼のサウンドデザイナーやミュージシャンのチームは、インパクトのある仕事をして、プロデューサーのコミュニティのニーズに応えようと日々努力しています。「ユーザーからのフィードバックを聞いた上で生まれたものが、彼らの創造性に影響を与えるのを目の当たりにすることは、私にとって非常に重要なことです。私たちはこのためにこの仕事をしているんです。」

他の創作活動と同様に、ジャンルに基づいたコレクションを構築するには、大量のインスピレーションが必要ですが、MSXIIのチームにとっては、シンセを購入して研究することがそれに当たります。そのシンセの数たるや、膨大です。

部屋の中には、MellotronとEnsoniq ASR-10が置かれており、その他にも多くのアウトボード機器やペダルが用意されています。優れたシンセサイザーとは何かをしっかりと学ぶことで、彼らは自分たちで優れた楽器を作る方法を見つけ出したのです。

「簡単にプログラミングできて、すぐにインスピレーションを与えてくれるものじゃないとダメですね。ツマミを回さなくても、電源を入れればすぐに目的の場所にたどり着けるようにしなければなりません。多くの場合、私はフィルターをいじって、どう聞こえるのか試してみます。フィルターを特定の場所に設定したときのレゾナンスの音を聞きたいんです。モジュレーションや、信号をさまざまな場所に送ることができるかどうかは、私たちにとって非常に重要なんです。」

ハイクオリティなローファイ

2019年、NIはMSXIIのMikeと彼のチームに、彼らの専門知識とユニークなサウンドデザインへのアプローチをKontaktのPlayシリーズに導入することを依頼しました。当時MSXIIは、大物プロデューサーやグラミー賞にノミネートされたアーティストが使用している人気のサウンドパック『LoFi Melodics』シリーズの制作に取り組んでおり、このコラボレーションもその一環でした。Mikeは、MSXIIが得意とするこの分野をさらに発展させ、Expansionsプラットフォームで、LoFiプロデューサーがすぐに気に入るような本物のサウンドを作りたいと考えていました。この本物志向こそが、このプロジェクトにとって非常に重要だったのです。

流行を追いかけるようなことはせず、あくまで自分たちの解釈でアプローチしています。ローファイの美学である”必ずしも最高のではなく、すでに持っているものを利用する”ということに忠実でありたいんです。

「カセットプレーヤーや古いカシオのキーボード、Radio Shack(訳註:全米にある小型電化製品ディスカウントショップ)で買ったものをラボに持ち込んで、ディストーションやサチュレーションのエフェクターを通しました。例えば、Lo-Fi GlowのWriting Sessionというサウンドは、私たちがTascam Portastudioのマイクを使って録音したものです。A/BノブをB側に回しきると、テープマシンのノイズや、私が再生、巻き戻し、ボタンを押した音などが聞こえてきます。そして、それをループしたんです。テクスチャーに関してはカセットテープのノイズだけでなく、もう何でもありだと思っています。もちろん、それもありなんですが、私たちは更に突き詰めていきたいんですよ」

最終的な目標はローファイサウンドを作ることでしたが、綺麗で高解像度な音でのレコーディングを行うことはプロセスに不可欠でした。「結局のところ、ユーザーはハイクオリティなサウンドを必要としているのです。」

サンプル自体にある程度の音の加工は施されていますが、実際のサウンドデザインの多くはKontaktとMaschineの中で行われています。「ExpansionのMaschine Kitを見てみると、特定の音が他の音よりもクリーンなことに気づくと思いますが、そこからインストゥルメント内で更に加工を行っているんです。それをすべてミュートにすると、生音だけが聞こえてきます。そして、ミュートをすべて解除すると…私たちがどのように音を作ろうと考えているかがわかるでしょう。」

「私たちは、それを教材として利用しています。普段は誰にも教えないですが、たくさん分析したほうがいいですよ。」

魂(ソウル)のこもったサンプル

ビンテージギアの劣化したサウンドからレトロ・ソウルの精神まで、MSXIIは、2つのローファイ製品に続いて、素晴らしいSoul SessionsとSoul Magicをリリースしました。このシリーズは、60年代から現在までのソウルミュージックの進化したサウンドにインスパイアされており、ジャンルの進歩と、それぞれの時代を特徴づけるサウンドとなった楽器の足跡を辿っています。

「60年代は生楽器のダーティな録音が多いです。70年代になると若干よくなりますが、まだ生のドラムにフォーカスが置かれています。80年代になると、Roland Juno、FMシンセ、エレクトリック・ピアノ、DX7系など、多くのシンセ楽器が使われるようになり、90年代に入ると、もっとクリーンになってきますが、昔懐かしのサウンドも残っています。そして、2000年代半ばに入ると、ドラムに関して言えば、あらゆるものを詰め込みました。」

Mikeにとって、Soul Sessionsの制作は、それぞれの時代の最高のサウンドを探し、それらを1つの美しい楽器にまとめる良い機会でした。「これはソウルミュージックのタイムラインのようなもので、夢中になれますよ。」

Lo-Fi Glowでは、ビンテージの機材で加工・処理された楽器の音を再現することに重点を置いていましたが、逆にSoul Sessionsは、その時代の楽器の純粋な音を再現することに重点を置いています。Lo-Fi Glowパッチは、モジュレーションや加工を多用しているので、瞬時にクレイジーなサウンドデザインができるような楽器になっています。

「Soul Sessionsでは、あまり過度な処理はしていないですね。」

「これは、Soul Sessionsが生楽器をベースにしているからで、そもそもアコースティックピアノにはシンセサイザーのコントロールではなく、サスティンペダルがあるだけですからね。私は、多くの場合ユーザーが自分の好きな音に味付けしてくれることを期待しています。」

MSXIIは、Kontakt 6のウェーブテーブル機能も使って、これらのクラシックな生楽器の要素を前面に押し出しています。Soul Sessionsでは、伝統的なサンプルと、このシンセサイザーのようなアプローチをブレンドすることもできます。Mikeはその背景にある考え方を少し語ってくれました。「ツマミを回すとウェーブテーブルの中の特定の場所にいくことができて、そこから特定のセクションに到達します。それを生の楽器とブレンドすると、新しいクールなサウンドが生まれます。これがPlay Seriesの一番好きな所ですね。Aの音とBの音が用意されていて、それらを組み合わせて新しい音を作るんです。でも、いつでも元の音に戻すことができます。ウェーブテーブルは、テクスチャーを見つけて、Play Seriesの楽器からよりユニークなものを引き出すための、手段のひとつなんです。」

最後にMikeからみなさんのメッセージです。

「このような機会を与えていただき、ありがとうございました。また、今後もNIとパートナーを組めることに感謝しています。世界中のプロデューサーが私たちの作品にインスパイアされ続けてくれることを願っていますし、私たちも、常に最も影響力のある存在でありたいと思っています。皆さんに平和と祝福がありますように。」


サンプルパックを含むMSXIIサウンドデザインに関するすべての情報は、msxaudio.comをご覧ください。また、App StoreでiOSアプリをチェックすることもお忘れなく。

MSXIIはこれまでに、Native InstrumentsのSierra GroveElastic ThumpAquarius EarthFaded ReelsLo-Fi GlowSoul MagicSoul Sessionsなどを手がけています。

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