• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

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    Interviews
by Vivian Host

Real Talk: Amanda Jones

エミー賞にノミネートされた作曲家兼ギタリストが、映画音楽業界でキャリアをスタートして成功し続ける秘訣を紹介する。

映画賞の季節に、LA在住の作曲家兼ギタリストであるAmanda Jonesにインタビューする機会を手に入れた。Apple TVのデザインシリーズである「Home」の作曲で2020年エミー賞にノミネートされた彼女は、エミー賞のゴールデンアワーの作曲カテゴリーでノミネートされた初めてのアフリカ系アメリカ人女性だ。作曲を学んだVassar Collegeを2010年に卒業して以来、休むことなく働き続けた結果が彼女に成功をもたらした。(ちなみに、2014年にはバークリー音楽大学の映画音楽作曲と管弦楽法のプログラムにも参加している。) これまでに彼女は、低予算の自主制作映画や短編映画の作曲やHans ZimmerとHenry Jackmanの元でのインターンを経験し、Lena Waitheの「Twenties」、Ava DuVernayの「Cherish the Day」、Tim&Ericの「Beef House」、マクドナルドの「トロールズ ミュージック★パワー」のコマーシャル等の作曲を手がけていて、最近では、Freeformシリーズの「Love in the Time of Corona」でエピソード4つ分の作曲を1週間をかけずに完成させた。

Amandaは、DAWの中で映像の作曲ができるLogicとともに、NIのMASCHINE 2.0を、特に力強いキックを重ねる時や70年代風のスネアをドラムの生録音に加える時に使っている。それに加えて、様々な時代のクラシカルなサウンドのドラムからオーケストラのストリングスやアンビエントなサウンドスケープまで、幅広い選択肢があるKOMPLETE Suiteもプラグインとして使用している。彼女の作曲プロセスは、その時の気分に合わせた形で流れるように始まる。「プロジェクトを始める前に、アイディアを温めて、携帯のボイスメモに保存しておくんです」と彼女は言う。「紙と鉛筆を使ってメモしておくこともあるし、ギターの音とか部屋の音を録音しておくこともあります。時には、すぐにオーディオインターフェースに向かったり、GUITAR RIGのプラグインを使うこともあります。全部、創作することや楽器について知るための行為なんです。そうやってユニークな点を大切にしながら楽しんでいると、ミキシングのきっかけになる部分に辿り着いて、最終的には、キックにどうやってアクセントを加えるかというようなことに繋がっていくんです」

Real Talkの最新エピソードの中でAmandaは作曲家志望者のために多くの必須アドバイスを提供している。今回の記事では、仕事を始める方法とディレクターをハッピーにさせる方法について、8つの秘訣を紹介するが、テーマの作り方やトレイラー音楽、ミキシングについてなど、その他のアドバイスは、完全版のエピソードで見ることができる。

作曲する前に耳を傾けること

まず全ては、ディレクターが何を求めているかについて話し合うことから始まります。ディレクターが音楽的なアイディアをどうやって表現するかについてよく知らない場合、Spotifyのプレイリストを作ってもらったりmp3を何曲か送ってもらって、好きな音楽と嫌いな音楽について教えてもらうことがベストです。そこから何かを掴んだり、音色やテクスチャーを見つけ出すための手がかりになりますからね。作曲家の仕事の大部分は良い人でいるということで、つまり、チームの中に入って耳を傾けて、クリエイター達がどんな人物で何をしたいのかを素早く把握する必要があるんです。一種の超能力者のような存在でもあって、とても恐ろしいことでもあるんですが、できる限り素早く彼らが望んでいるものは何か把握する必要があります。


自分から連絡を取って、一緒に成長していく

一緒に成長できそうな新進気鋭のディレクターやある程度成功している中堅ディレクターを探し出してコンタクトしてみるのは、オススメですね。すごく気に入った作品があったら、恥ずかしがらないで、その制作者に連絡を取ることです。私も最近Netflixでドキュメンタリーを見た後、そのディレクターに「あなたがやっていることが大好きなんです。もし一緒にお仕事できたら大変光栄です」ってメールを送っちゃいました。こういった人達、例えばLena WaitheやMiranda Julyといった人達は、イベントを開催しています。今はコロナの影響で違うかもしれないけど、彼らはTwitterやInstagramにイベント情報をのせているので、イベントに足を運んで彼らに実際会って自己紹介することができるんです。これまで本当にたくさんの短編やウェブシリーズに関わってきたのですが、そのディレクター達がどんどん有名になっていくのを作曲家として一緒に味わうことは、本当に興味深い経験です。2014年に小さなプロジェクトで一緒に働いたディレクター達は、今や、サンダンスで映画を上映したり、大きな映画スタジオで初の長編映画に取り組んでいたり、Netflixの仕事をしていたりするんですよ。

リールを準備する

私は新しい作曲リールを毎年作ってます。初めのうちは、映像の使用許可が出なくて、あまり注目されていない短編映画からの映像が数個だけかもしれません。でも、毎年続けていって、リールを改良したり手を加えて、より良い内容とより美しいサウンドのものにしていくんです。リールをVimeoやYouTubeにあげることも大切で、視覚的な作曲リールは、実際映像に音がついた時どんな感じなのかを伝えてくれます。音楽だけを聴くことができるようにリンクを貼ることも重要で、これまで作曲してきた仕事とともに、まだ一度も映画に使われていないけど大好きな曲を紹介することもできます。映像や音が載ってる、わかりやすい内容とナビゲーションのウェブサイトも作りましょう。そして、それがあなたの名刺がわりになるので、チャンスがやってきた時のために早めに準備しておきましょう。「これが私のウェブサイトとリールです」と自己紹介したことがきっかけで、有名ディレクターとのコマーシャルの仕事に繋がることもあります。前もって準備しておくことで、きっかけが来た時に、しっかりとチャンスを掴み取ることができるんです。

著作権団体に助けてもらう

ASCAP、BMI、 SESACなどの著作権管理団体に、あなたが作曲や映画音楽に興味があるということを知ってもらうことは大切です。ASCAPには映画やTV部門があって、 ウェブサイトには掲載されていない情報を持っています。まだ全く未経験だった2014年ごろ、「作曲の仕事を始めたいと思っているので、もし何かイベントがあったら教えてください」という感じでASCAPにリールを持って行ったら、彼らは私のことをとてもたくさん助けてくれました。Film Independentを通してディレクターとマッチングしてくれるプログラムを紹介してもらえて、L.A. Film Festivalで初演される短編に関わることができたんです。今はASCAPで新人作曲家向けのどんなプログラムがあるかはわからないですが、常に新しい機会があると思います。

動き続ける

映画音楽を作曲する時、拍子にぴったり合うようなものはほとんどないので、どうか楽しみながら実験的な形式の奇妙なものを作ってください。とりとめなく進んだとしても問題はないし、変なものならすぐに作ることができるでしょう。映画音楽とは、トラディショナルな意味での楽曲ではなく、映像のための音楽なのです。若い作曲家がやりがちな間違いに、4小節のループだけを作って全く変化をつけないことがあります。飽きない曲にするための簡単な方法に、1つのテーマをある楽器から次の楽器へと渡していくという手法があって、例えば、まずあるテーマをピアノで演奏して、その後同じメロディをオーボエで演奏することで新鮮さを生み出し、こんな感じで調整しながら次の楽器に移っていくのです。ポップソングの構造を知っておくことは悪くないですが、映画音楽の場合、新鮮さを与えるために音楽についてもう少し実験的に考えることが大切です。ハーモニーや音楽理論についてのクラスを取ったり、クラシック音楽や現代音楽の楽譜について学ぶことはとても素晴らしく、各セクションの成り立ちや反復がどこで起こるかといった曲の構造について理解することに繋がるでしょう。

ヒットポイントに注目する

頭の中の想像の世界から出てきて、シーンの中で起きていることをしっかり観察することが大切です。例えば、誰かが微笑んだ瞬間やドアから外へ歩き出した瞬間など、ある瞬間にアクセントを付けたい時に、多くの作曲家はDAWで拍子をセットして、ヒットポイントが起きている所をマークします。ヒットポイントとは音楽に動きや変化をつけるきっかけになるタイミングのことで、例えば、アクション映画だと、誰かが窓の外を見たり、突然誰かが銃を打ち始める瞬間のことです。ヒットポイント以外には、7/8拍子や5/4拍子といった奇妙な拍子で演奏することも、アクションキューとして興奮状態を与える簡単な方法です。私の場合、ビートではなくメトロノームを使って、ピッピッピッという感じで、常に同じ音色のパルス音が聞ける状態にしています。拍子から外れて音楽が自由に動けることが重要なので、激しいビート以外の何かが必要なんです。もし楽譜を書いている最終段階で拍子から外れたパートが必要になった時は、アレンジャーや管弦楽編曲家に曲を見てもらって、オーケストラ奏者やセッションミュージシャンが理解できる形でアレンジしてもらいます。

セリフが最も重要

基本的にフィルムやテレビ番組におけるセリフとは、シンガーのような存在です。音楽がどんなに素晴らしかったとしても、まず最初にセリフがミキシングされるので、音楽がその邪魔にならないかどうか気を配らなくてはいけません。セリフがある部分では、うるさすぎる複雑なリズムは避ける必要があり、周波数に注意して声がよく聞き取れる音楽にする必要もあります。女性の声は高め、男性の声は低めの周波数になる傾向があるので、例えば、もし男性が話しているなら、ベースの低音部は音楽の中からカットします。最終的にミックスエンジニアが音の調整を行うのですが、その際、ミックスの中にセリフのための空間がないと音楽がめちゃくちゃにされてしまう可能性があるので、曲をミックスする時はセリフのことをしっかり念頭に置いておきましょう。

Say yes

自分の頭の中で制限を作らないこと。始めるための秘訣は、ただyes、yes、yesと言うことなんです。どうしていいか100%はっきりと分からない時でも、ひとまずyesと言って、その後、解決策を探しましょう。「これ持ってる?車はある?」と聞かれた時でも、まずはyesと言って、もしも実際は持っていなくても解決策を考えましょう。「私が何でもやる候補者だということを、彼らに納得してもらえたわ。お金が全然なくなってしまったけど、やり抜くことができた」というのが、初めの一歩なんです。初めは誰もが最悪なぐらい貧乏で、だから押し分けて進む必要があるのです。まったく馬鹿げた経済的な競争ですが、誰が10週間のインターンシップを無給でできるというのですか?「誰のソファーで泊めてもらえるかな? 誰の車を借りれるかな? 実現するためにはどんなバイトをする必要があるかな?」という風に、初期の頃は友人や家族を大いに頼ることになるでしょう。自分のゴールに集中して、それを押し進め続けることが大切なのです。

 

Amanda JonesのReal Talkエピソードはこちら: https://www.instagram.com/tv/CEF-ctbnqvy/ 

Real Talkの全てのエピソードはこちら: https://www.instagram.com/nativeinstruments/channel/ 

Vivian Host (@stareyezzz)がホストを務めるReal Talkは、毎週木曜 1PM Pacific / 4PM Eastern / 9PM GMTに @nativeinstruments アカウントのInstagram Liveからお楽しみいただけます。

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