• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

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Christina Vantzou

Christina Vantzou

ブリュッセル在住のプロデューサーは、SYMPHONY SERIES STRINGSにシンセを組み合わせ、さらにMYSTERIAの哀愁のある声を重ね合わせる

美術と映像制作の経歴を持つChristina Vantzouが自身の作曲に求めるものは「迫力、圧倒的な美しさ、そして不協音」だ。The Dead Texanの一員として実験音楽を始めて以来、VantzouはKranky and Shelter Pressなどのレーベルからモダンアンビエントのアルバムを5枚リリースする傍ら、いくつかのショートフィルムを彼女のスローモーション撮影技術を活かして作成してきた。

Vantzouはミズーリ州カンザスシティの生まれで、ギリシャ系の血筋だ。現在はブリュッセル在住。彼女のミニマリスト的音風景は様々なミュージシャンとのコラボを通じてビブラフォン、ベル、マリンバ、ハープ、シンセなどの音を足したり、Steve Hauschildt, Heinrich Mueller, LeyaとAngel Deradoorianなどのアーティストからのサポートを受けて作られることが多い。今年リリースされた彼女の最新ソロ・アルバムMulti Naturalではフィールドレコーディングされた音と揺らめくドローン音を重ね合わせ、消え去る世界を作り上げている。

主に生楽器を作曲の基盤としている彼女だが、Vantzouは今回のNI Sketchesをきっかけにピッチシフトしたシンセ弦やドローンの重ね合わせを試した。彼女のスケッチは呻くようなロングトーンをピッチシフトすることで様々な和声的可能性を広げ、古代と未来のコントラストを映し出す。哀愁のあるストリングスの上をレーザー光線が流れていき、曲の終盤では壮大な地殻変動の地鳴りが漂うクワイヤに引き継がれる。

以下のスケッチを聴いて、その制作過程について読み進めよう。Vantzouのスケッチのステムはここから入手可能 – 自由にリミックスや再利用してみよう。

使用されたNI製品:  MYSTERIA, KONTAKT 6, SYMPHONY SERIES, MASSIVE, RETRO MACHINES MK2

 

まず最初に、どのようにスケッチをはじめましたか?

このスケッチの中間部分にある、弦とMysteriaのクワイヤの箇所から作り始めたわ。試しにSymphony Seriesの弦を色々レイヤーしてみたんだけど、4層のレイヤーにして、その中の一つのレイヤーには強いリバーブをかけることで意図したサウンドが作れたわ。安定感のあるドローンのレイヤーにはピッチシフトをかけることで人間味を足して、MIDIキーボードのピッチホイールを使ってグリッサンドを表現したわ。実際のカルテットで作った“Glissando for Bodies and Machines in Space”という曲があるんだけど、そのサウンドを再現しようとしてViolinsとString Ensembleのプリセットを使用したの。

次にMysteriaのAbove Abyssプリセットを使用してボーカルの音を作ったの。可能性を広げるためにEQもいじったわ。Massiveは効果音作りに使ったんだけど、とても役立ったわ。Landslide, Laser Splash, Laser Dustのプリセットは全て使用した。もしかしたら大量のアニメをブリュッセルのロックダウン時に観たことが影響しているのかもしれない。最後の仕上げにはRetro Machinesを少し足したわ、弦のブランケットをかけるようにね。String Melody II, Matrix-12とArp Quadraも暖かさを足すために使用しているわ。

 

このスケッチでは何を目的としていましたか?

迫力、圧倒的な美しさ、そして不協音。

 

スケッチの中で一つ好きな点をあげるとしたら?

1分38秒から2分20秒の間、トラックに変化が起こるの。この中間部分が不安定なことで、一度崩壊しかけたものが再生されていくイメージが作られる。その部分が好きね。

 

普段の制作プロセスの中で、スケッチは行いますか?もしも行う場合はどのように?

スケッチは私にとってなんとなくアイデアを書き留める方法。私はノートパソコンや手軽なツールしか使わないから、思い立った時にいつでもできる。電車の中でも、家のテラスでも、地べたに座りながらでも、ね。

 

そのスケッチはどのように完成させますか?

スケッチは完成トラックになるまで数ヶ月かかるときもあれば、数年かかることもある。多くの場合スケッチというのは見たり聴かれたりされることのない、いわば大切な種や設計図のようなもので、曲を作り上げる鍵となるものだわ。

 

話題を変えましょう。これまでもらった制作アドバイスの中で一番役立ったものは?

一番のアドバイスは自分を導いてくれた人たちからもらったわ。何を言った、ということではなくて、どのように反応して聴いてくれたか、という所ね。

 

最後に、おすすめのオンライン教材があれば教えて頂けますか?

私は音楽学校で勉強したわけではないから、バーチャルインストゥルメンツとMIDIを通して作曲を学んだの。たくさんの音楽を聴いて、カバーをすることで適切な音のミックスを学んだわ。John ZornのThis particular pieceでは音量バランスについて学んだ。あと、ヒーリング周波数系のビデオも私にとってはチュートリアルのような存在なの。二つほど例をあげると:

 

Christina VantzouのSiren IIISpotifyでチェックしよう。

 

Words: Chal Ravens

Photography: Lena Shkoda

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