スケッチとは、Faze Miyakeにとって音楽の考え方の核となるものだ。東ロンドン在住のプロデューサー兼アーティストである彼は、次から次へとハイペースで作品をリリースしており、ひとつのアイデアを形にしては次の作品に取り掛かる。この「配信時代」に良く適した機転の効く方法だ。ここ数年で彼は「定期的なサイクル、音楽を作っては世に出す」を確立し、2020年には9枚のEPとシングルを自身の名でリリースしてきた。そして彼の制作のクレジットやコラボレーションにはAJ Tracey, CASISDEAD, Skepta, Novelist, Avelino, Belly Squadらが名を連ねる。「2017年から決めたんだ、アルバムを作る価値はないって」と彼は語る。「僕の好きなやり方はスケッチをたくさん作って、4つか5つくらい良いと思えるものが出来たら、EPとして世に出す。」
彼の大ブレイク曲であるTake Off(グライムのソリッドな脈感と荒れ狂うサザンヒップホップの中間に位置する、ブラスの光るグライムアンセムだ)のリリースからの10年間、Fazeは第一線で大西洋越しの影響を形にし続け、スクエア波と808を並外れた先見の明で混ぜ合わせてきた。彼のシカゴドリルへの探求は、2015年のSasha Go Hardとのコラボを含め、UKでのスピンオフをすでに見込んでいた。「始めたときの僕のゴールは、僕らの音楽がアメリカのそれを超えることで、今それが実現している」と彼は語る。「UKプロデューサーのビートを元にアメリカのアーティスト達がミリオンセラーを叩き出している!」
Faze Miyakeのスケッチのステムはここからダウンロード、そして自由にリミックスや再利用してみよう。
Fazeの素早いアプローチとはアイデアと実行の間を最小限にすることだ。彼は普段、まっさらな頭でパソコンの前に座り、その場で1つのビートを作りだす。MCとしての顔も広がる中、ボーカルも入れるかもしれない。「どんな音を作りたいか、ということを考える前からとにかく作り始めるんだ。そしてとても満足がいくトラックが出来たら、その場で完成させるよ」と彼は語る。
彼は普段通りのやり方で、メロディ要素からスケッチの作成を始めた。今回は空気感がありクリスタルのように輝くFM8の音を使用している。「まずはコードから始めて、チャンネルを複製して、その下に新たなメロディを入れて、また複製していくんだ。同じプラグインだけど違うサウンドをその都度選択する。15分あればこの工程は終わるよ。」
僕の好きなやり方はスケッチをたくさんつくって、4つか5つくらい良いと思えるものが出来たら、EPとして世に出す。
そしてビートのプログラミングは自身のドラムパックをKontaktに立ち上げて行っている。この習慣は彼がFruity LoopsからLogicに乗り変えた際、信頼するピアノロールでの作業スタイルを維持するために生まれたものだ。「ほとんどの人はEXS24かUltrabeatを使用するんだ、Kontaktをドラムのサンプラーとして使う人はいないよ」と彼は笑う。次はベースに取り掛かる。今回は使うのは厚切りの808で、彼は「僕にとって仕上げのチェリーなんだ」と言う。彼が散りばめた音のウォーターマークにも注目して聴いてみよう。警察のサイレン、犬の鳴き声、そして長年工夫を凝らして再利用してきた“Faze Miyake”のボーカルドロップなどがそれだ。「全て僕のシグネチャーなんだ。リスナーがそういう詳細に気付いてくれるのは楽しいことだよ。」
出来上がったのはFaze Miyakeらしい一曲だ。その140秒はイギリスとアメリカのベースカルチャーの交差地点でビートメイクしてきた10年が詰まっている。「僕は全てを知ることが大事だとは思っていないんだ。僕は探検家のようなもので、自分で発見することが好きなんだ。そしてもう10年、その探検家であり続けた。僕のプロセスは変わってないけど、技術はたくさん習得したよ。」
Words: Chal Ravens