• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

    アイルランド人プロデューサーEomacと、日本人アーティストKyokaのコラボレーションプロジェクトに迫る。…

    Interviews
by Evan James

2010年代を象徴する6つのサウンドを
簡単に再現する方法を紹介

我々の歴史と共に音楽シーンを振り返ってきたこの3部作の最後の記事では、2010年代の音楽を象徴したサウンドデザインの流行について紹介しよう。

2010年代の音楽シーンを一言で言い表すならば、「Change (変化)」の時代であった、というのがおそらく最も適切な表現だろう。Taylor Swift、Ed Sheeran、そしてAdeleなどの新人ソロアーティスト達がポップス界のスターダムにのし上がる中、ベテランアーティストへと成長したBritney Spears、Justin Timberlake、そしてChristina Aguileraらが残した空席をSelena Gomez、Ariana Grande、そしてYouTubeで一躍有名となったカナダ人アーティスト、Justin Bieberらが埋めていった。更に衝撃的だったのはアメリカの歴史上初めてヒップホップがロックの人気を上回り、Kendrick Lamar、Nicki Minaj、Travis Scott、そしてDegrassiを卒業したDrakeなどを始めとする数多くのレジェンド達がそのキャリアをスタートさせた。

時を同じくして、テクノロジーとソーシャルメディアの急激な成長によって音楽を取り巻く環境が一変した。誰もがソフトウェアを使用した楽曲制作を行えるようになり、音楽制作は「民主化」されたのだ。その影響からローファイ、ベッドルーム、ガレージ、そしてインディペンデントアーティストなどの音楽が多く見られるようになった。エレクトロニック系の音楽ではグライム、フットワーク、トラップ、そしてハードスタイルなどのサブジャンルが世界的に注目を集める中、ラテンポップはトロピカルやレゲトン(例えば“Despacito”)などのサウンドを世界へと発信し、SoundCloudなどのオンラインオーディオ配信プラットフォームは今では一般的となったつぶやき系ラップの細分化したジャンルやチルウェーブ、ウィッチハウス、ヴェイパーウェーブ、そしてクラウドラップなどのニッチで新しいサブジャンルの誕生の場となった。

ここからは我々が選んだ2010年代を象徴する6つのサウンドをご紹介しよう。各サウンドに対するエキスパートによる分析、そしてそのサウンドを再現するための簡単なレシピについて読み進めよう。

Kaytranadaのバウンスするビート

ハイチ系カナダ人のレコードプロデューサー兼DJであるLouis Kevin Celestin (別名Kaytranada) は瞬く間に有名になった。才能に恵まれた若きアーティストは、ミックステープやリミックスを作り始めてからわずか5年でイギリスのインディペンデントレーベル、XL Recordingsと専属契約を交わし、Rick Rubinとの仕事の噂も囁かれた。“You’re The One”は彼の評判の高いスタジオデビューアルバム、99.9%にも収録されている6枚目のシングル曲だ。Anderson .Paak、Vic Mensa、Craig David、そしてOdd Futureを脱退後にThe Internetを結成したSydなどをゲストに迎い入れて作られた“You’re The One”にはファンク、ソウル、R&B、そしてダンスなどの要素が混ざり合い、そのレトロでありながら未来的なジャンルレスなサウンドはビンテージとモダンの境界線を芸術的に跨いでいる。

暖かく揺らめくようなシンセと甘美な低音のバウンスが詰まったこのアップビートなトラックはクオンタイズのかかっていない、ハウスのテンポ感に合わせて緩くプログラミングされたDilla的なドラムの上に成り立っている。このバウンス感のあるベースラインを再現するにはMONARKのDefineプリセットを、そして、ビンテージ感のあるドラムを再現するには我々のExpansion “Conant Gardens” のワンショットを使用してみよう。

Cardi Bの空気感のあるアルペジオ

Cardi Bは2010年代、最も多くの肩書きを持った人物の一人だろう。カリスマ的な有名インスタグラマー、ラッパー、そしてソングライターである彼女のデビューシングルはKodak BlackのNo Flockinに強くインスパイアされた作品であり、それは2つのグラミー賞ノミネート、2017年度BETヒップホップアワードのシングルオブザイヤー、そしてPitchforkとThe Washington Postの2017年度ベストソングを獲得するだけでなく、女性ラッパーの曲として歴史上初めて、RIAAにダイヤモンド認定された。

この自信に満ち溢れたアンセムには生意気でうるさい自慢話と不吉で悲観的なビートの上に屈辱の言葉や大げさなスラングが多く散りばめられている。このトラックを支配する不気味なシンセサウンドを再現するには我々のExpansion “DJ Khalil”  (Combo: Am Otherun 1) を立ち上げて、2つのTransient Masterを連続でかけてみよう。Transient Masterはどちらもサステインの値を約80%カットすることで音にパンチを足すことができる。最後はお好みでRAUMリバーブを足してみよう。

Mark Ronsonのファンク感

DJ、ソングライター、プロデューサー、そしてレコード会社の重役であるMark RonsonはBruno Marsとの“Uptown Funk”製作時にはすでにAmy Winehouseの数々のヒット曲を手掛けたプロデューサーとして有名であった。しかし大成功に比例して伸し掛かるプレッシャーやストレスは大きく、特に神経を使うギターセッション中には気を失うこともあったそうだ。幸いなことに、その努力は報われた。エネルギーとノスタルジアを詰め込んだこのトラックはBillboard Hot 100に14週間もの間君臨し続け、RIAAには驚くことに11回もプラチナ認定された。

1980年代のファンク魂を継承したこの愉快でエネルギーに満ちたトラックにはソウル、ブギー、ディスコ、EDM、そしてポップスなどの要素が散りばめられている。このビンテージ感のある心地良いバイブスの再現に必要な道具は我々のAmplified Funk Expansionに全て揃っているだろう。

ダウンビートなダブステップ

イギリスのコンテンポラリーダブステップシーンから身を引いたイギリス人エレクトロニックデュオのDominic MakerとKai Campos (別名Mount Kimbie) は猪突猛進に「一般的な形式」に囚われない音楽を作ろうとし続けてきたように見える。彼らの実験的な音楽はトラディショナルな形式からあまりにもかけ離れていたことから、ポストダブステップ時代のパイオニアとして、その時代の先駆者であるJames Blake、Jamie xx、そしてThe Weekndなどに道を開いたと称されている。

シンコペーションの魔術に包まれたようなサウンドで成り立つこの曲の最も印象的なポイントは1:25に現れるコードであり、それはゆっくりと甘美なオルガンサウンドへと変化していく。その柔らかく甘い音を再現するにはVINTAGE ORGANSのBassoon 5を立ち上げて、強めのRAUMリバーブを足してみよう。

Santigoldのドライブするギター

ソロアーティストとして成功する前、Santigoldはフィラデルフィアのパンクロックバンド、Stiffedで下積みをしていた。そして、Stiffedの火付け役となったアルバムをプロデュースしたのはBad Brainsの伝説的ベーシスト、Darryl Jeniferだ。彼と関わった経歴を考えると、Santigoldのリードシングル、“Disparate Youth”に見られる推進力に満ちたポストジャンル的なバイブスにも說明がつくだろう。この一見異なる音楽スタイルを滑らかに混ぜ合わせたこの曲は商業的にも大きな成功を収めた。

このトラックは見事にBeatles的なポップスの美学とダブ的なレゲエピアノ、ニューウェーブなベースライン、そして素晴らしいスタッカートのギターリフをブレンドすることで常に動きのあるサウンドを生み出している。このドライブ感のあるサウンドを再現するにはSession Guitarist ELECTRIC SUNBURSTと、芯のある低域にぴったりのSCARBEE – JAY BASSを使用してみよう。

Rosalíaのフラメンコフュージョン

Rosalíaは「good things come to those who wait = 待つ者には福来たる」という格言をまさに体現している。スペイン人シンガーソングライターの彼女は若い頃から音楽を勉強し、スペインにあるCatalonia College of Musicを卒業した。しかし彼女は2018年にプエルトリコ人シンガーのOzunaと共に誘惑的なフュージョン曲“Yo x Ti, Tu x Mi”をリリースし、そのフレッシュなサウンドが音楽シーンをひっくり返すまで、ブレイクとは無縁の日々を過ごしてきた。この執拗にロマンチックなレゲトントラックはRIAA Goldと2つのLatin Grammy Awardsを受賞し、一夜にして彼女を国際的な音楽スターへと伸し上げた。

Rosalíaは伝統的なフラメンコとモダンなレゲトン、ヒップホップ、そしてUSポップスの美学をブレンドし、それを原始的なラテンアメリカ的リズムと融合させることで完全オリジナルなサウンドを生み出している。そのトロピカルサウンドのパッチワークは我々のCaribbean Current Expansionで再現することができるだろう。

我々の25周年記念を祝福する要素はまだまだあります。こちらをクリックしてTWENTY FIVEを無償でダウンロード、そして特別なKOMPLETEを含む25th Anniversary Collectionも忘れずにチェックしよう。MASCHINE、そしてTRAKTORのハードウェアはそれぞれUltravioletとVapor Grayの2色が展開されている。

Sound design: Konstantin Grismann

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