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Telefon Tel Aviv: サウンドデザイン、サイン波、なぜ「間違い」がしばしば正しいのか

「Dreams Are Not Enough」のサウンドとテクニックに迫るJosh Eustisのインタビュー。

しばらく前までTelefon Tel Avivは、グリッチ、アンビエント、IDMからシンセポップやインダストリアルまでを取り込んだ作風で知られる名高い電子音楽デュオだった。2009年にデュオの片割れだったCharles Cooperの早すぎた死を迎え、残されたJosh Eustisはプロジェクトを解散、その後数年間は新しいコラボレーションやソロ活動に専念していた。2016年にTelefon Tel Aviv再始動の一度限りのライブショーが行われ、その名義でJoshは広範囲に渡るツアーを決行、そして、ついに昨年「Dreams Are Not Enough」がリリースされた。前作のアルバム「Immolate Yourself」からちょうど10年が経っていた。

Ghostly InternationalのアーティストでありNine Inch Nailsのツアーメンバーの経験もあるJoshは、リリース以来、何週間もツアーで、忙しくヨーロッパとアメリカを縦横無尽に駆け巡っていた。最近、ベルリンにやってきた彼をNIオフィスに招待し、サウンドデザインのアプローチや、最新作に使われたお気に入りのツール、そして、なぜ「間違い」が時としてベストな方法なのかについて話を聞いた。

 

ここ数年、ソロのプロジェクト、コラボレーション作品のリリース、Telefon Tel Aviv名義や他の様々なバンドとのツアー、さらには9月に「Dreams Are Not Enough」をリリースし、今はツアーの真っ最中と、大変忙しかったですよね。スケジュールがカオスにならないようにする秘訣は?

いや、まったくのカオスだよ。本当にカオスなんだ。音楽をつくること以外、全然得意じゃないんだ。人生で他のことは全部最悪で、スタジオの外に出たら、本当に役立たずなんだ。だから、カオスをどうやって扱ったらいいか全然わからなくて、ただ、物事をこなしているだけなんだよ。時には、ひとまず座って、はっきりとしたアイディアもなく仕事をしてることもある。そんな時は、できたものを色々フォルダーに分けて「おっ、これはSecond Woman向きだな」とか 「あ、これはTelefon用だな、Second Womanには涙もろすぎる」とか、そんな感じで進めてるんだ。

ある日、アルバムをリリースしてくれたレーベルのGhostlyがやって来て、こう言った。「よお、お前さあ、このレコードを本当に仕上げたいの? それとも、永遠にのらりくらり続けるつもり? 完成できたら最高に素晴らしいし、特に今だったら、来年ツアーに出る時間ができるからいいよね」

僕が「Oh、オッケー、わかった」と答えたら、「よし、ということは、3月までにそれが必要だって意味だ。3月中旬だね、それまでに完成させなきゃだな」と言われて、それでお尻に火がついた。これまでレコードに締め切りがあったことはなかったんだけど、今回は違った。そして、1週間早く渡すことができたよ。

 

締め切りが決まった時点では、アルバムはどんな状況だったんですか?

3曲終わった状態で、Maxパッチに取り組んでて、アイディアをまとめて、サウンドデザインのパッチを保存して、そんな感じだった。それで、腰を落ち着けて全てのアイディアを振り返ってみた所、それらがどれだけ悪いかに気づいた。だから、今年のはじめに、95%ぐらいをまっさらな状態からスタートしたんだ。完成したのは3月の終わりだったと思うよ。

 

アルバムは何をもって完成とするのですか?

諦めた時が、完成の時だね。永遠に終わることはないんだ。いまだにアルバムについて「こんなことしなきゃよかった」とか「今ならここを変えたい」と思うことがあるよ。今回のアルバムで、キックドラムにDRIVERのプラグインを使っている部分があるんだけど、 そこのDRIVERをバイパスしなかったことを、いまだに気にしてるんだ。大好きなプラグインなんだけどね。

DRIVERって、全然さりげない感じにならないですよね。

ああ、本当に。さりげなく使おうと思っても難しい。しっかり制御しないといけないよね。まあ、そんな感じで、1ヶ所だけ本当にバイパスしたかった部分があって、でもアルバムの中ではそのままだから、いまだにちょっとめちゃくちゃなんだ。こういう部分がよく見つかって、いつもライブの時に変更してる。ちゃんと直したんだよ。ライブのために見返してみて、問題を全て修正した。

今回のアルバムの中で、とても目立っているディストーションがありましたが、何か特別な手法を使っていますか?

実を言うと、それはディストーションじゃなくて、クリッピングのようなものなんだ。僕の好きな方法が2つある。1つ目は、DCオフセットを北の方にググッと動かすとクレーターみたいなサウンドができるという方法。もう1つは、今回のアルバムでも何回か使われているんだけど、シータ波のディストーションで、4Hzから7Hzの間のサイン波をリミッターに入れるだけで、全てを粉々に噛み砕いてくれる。こんな感じの方法だね。

 

「Not Seeing」では、キックドラムがトリガーになって周りの音を崩壊させているように感じたのですが、どのようなテクニックを使っていますか?

最初の部分のことだよね? キックドラムはシータ波にチューニングされていて、オーディオレートより低くなってるんだ。だから聞こえるのはビートだけ。ちょっとボリュームが大きすぎたから、ミックスダウンの時に曲の最初の部分にソフトクリップみたいなものをかけて、それで音と音の関係が、キックドラムによってミックスが壊されちゃうような感じになったんだ。

キックドラムというより、それ以外についてのことで、これは今回のアルバムのテーマの1つだね。物事それ自身について、というよりも、そこにないものについてなんだ。

 

なるほど。さて、これまでのTelefon Tel Avivの作品と比べて、今回のアルバムは「three things-at-once」的なアプローチに寄り添ったものになっていましたね。

そうだね。友人のGreg Puciatoがそれについて教えてくれて、 音楽的なアイディアについて考えるクールなやり方だと思った。それで、そのアプローチを忠実にやり始めたわけじゃないけど、物事を削ぎ落とすことができるっていうことをいつも心に留めるようにし始めた。気に入ったね。この自己検閲というアイディアが好きで、とても楽しいんだ。

アルバムの別バージョンがたくさんあって、たくさんの曲がハードドライブから消去された。必要な曲だけがちゃんと選ばれてるといいなって思ってるよ。これまでのTelefonの曲の中には、確か、60、70、もしくは、80トラックあるものもあったんだけど、今回のトラック数はどれもとても少ないね。一番大きな曲でも20トラックぐらいだったと思う。要素が少ないほど、音が大きく響くということに気づき始めて、本当にミニマルに留めたんだ。

1999年以来すべてのTelefon Tel Avivトラックに REAKTORが使われているんだ。リミックスやら何やら含めてすべてだよ。


Telefon Tel Avivのトラックを制作する時、決まったやり方は無いんですか?

無いね、そして、そのことが始めた時から大きな問題だったんだ。いつも「制作プロセスについて教えてください。『Fahrenheit Fair Enough』をどのように制作したんですか?」って質問されるんだけど、僕はこんな感じに答える。「ええっと、腰を落ち着けて、何日かサウンドデザインをして、サウンドデザインに飽きたら、2人のうちどちらかがビートを作り始めたりするので、そうしたら、もう1人がその上でベースを弾いたりして」

だけど、このことだけははっきり言える。1999年以来すべてのTelefon Tel AvivのトラックにREAKTORが使われているんだ。リミックスやら何やら含めて、すべてだよ。REAKTORが全部に関わっているんだ。単にキックドラムをつくるためだけの時もあれば、様々なグラニューラプロセッシング全てに使ってる時もある…

 

今回のアルバムには、初めから終わりまで、大変特徴的なサウンドの世界観がありますね。これは意識的に選択したものですか?

「うーん、艶やかでメタリックなサウンドにしたい」って感じの意識的な選択は必要なかったけど、自己検閲して自分のアイディアを見直すことで、アナログっぽい音のするものはどんなものでも、脇に避けるようになった。その結果、ガラスのような別世界からのサウンドが残ったんだ。

前回のアルバムはとてもアナログで温かみのあるものだったので、他の方向に行きたかった。それでアナログ機材に飽きてきて、最終的には片付けちゃったんだ。今は「ソフトシンセの得意なことって何だろう?」って自問自答してる最中だね。そんな感じだよ。


どのソフトウェアを使っていますか? 今回のアルバムの中でMaxを深く使っていますよね。

そうだね。でも、実を言うと、音の生成のほとんどはFORMなんだ。FORMをたくさん使って、MASCHINEもたくさん使ってる。本当にたくさんね。

 

私もFORMが大好きです。FORMの可能性に気づいていない人が多すぎる気がします。

今回のアルバムで、FORMは僕のベイビーだったね。なんでもドラッグ&ドロップできて、簡単にクールなサウンドにしてくれるんだ。

 

「ドラッグ&ドロップ、トライ&エラー」な状況だったということですか?

トライ&エラーは、ほんの少しで、そんなに多くはなかった。基本的に、TTAの古いサウンドデザインを使ってて、それをドロップしてるんだ。すべてのサウンドに名前とタグを付けてカテゴリー分けしてあるから、長いサウンドを拾ってきてFORMにドロップすれば、それで完了。自分が何をやってるのかとか、機材が何をやってくれてるのかわかってなくても、かっこいい音が偶然やって来るんだよ。

シータ波「ディストーション」 この技で君の制作物をクラッシュさせたいって?まずはマスターにリミッターを入れたら、次に新しいトラックにトーンジェネレーターを入れ、4から7Hzのサイン波を作ってエンジン始動。もしもREAKTORを持ってるならシンプルなトーンジェネレーターがすぐに使える。無償のBlocksバンドルを手に入れよう。 Blocksのダウンロードはこちら

FORMが具体的にどの音に使われているか教えてくれますか?

1曲目の「I dream of it often」は全部FORMで、2曲目の「a younger version of myself」はLazerBassとFORMだね。

 

LazerBassも大好きです。無料なのもいいですよね。

LazerBassはこれまで聞いた中で最高にワイルドだね。とてもクレイジーだから、ディストーションを少しかけて、2曲目のビートで使ったんだ。まずは自分ではベースラインだと思ってるものをプログラムして、次に、少しづつチェーンをかけ始める。LazerBassとかそんな感じのことをやって、その後に、MIDIノートを演奏する。そこまで進んだら全体を書き出して、「おっ、シャッフルっぽくて、かっこよくなった。よし、完了だ」って感じになるまで、Liveでループポイントを動かすんだ。

 

その曲の残りの部分も、同じような流れで制作したんですか?

そうだね。FORMの気に入ってるパッチがあるんだけど、実は、プリセットに自分の音を入れて色々いじったものだと思う。ピアノっぽいんだけど、ピアノじゃない感じの。それで、途中からパッドが入ってくる。その曲ではあまり多くのことはないね。

 

そして、ここでも自作のMaxパッチを走らせているんですね?

そうだね。基本的に今回のアルバムのフレームワークはとてもシンプルなんだ。Liveを開いて、音色をつくるためにNative Instrumentsをあれこれ開いて、MaxでMIDIの大群を送る。そして、その上で僕が歌うって感じ。とっても基本的なものだよ。

だいたい、曲にはメインの部分が1つあって、普通はFORMなんだ。いくつかの例外はあるけど、大抵いつもFORMだね。そして、MaxはMIDIノートで時間を伸び縮みさせるようなことをやるんだ。

MASCHINEも使ってますよね?

そうだね。パーカッションのサウンドデザインが即座にできることに気づいて、最終的にたくさん使うことになった。スペクトラムの一方からもう片方の端まで、あっという間に行けるだろ。まず様々な音をMASCHINEの中で開いて、違う音がいろいろ起きているようにする。そこにLFOを使ってモジュレーションをかけると、ずーっと同じ音が鳴らないようにできるんだ。そして、大量のMIDIをそこからMaxに送った。

 

パーカッションのデザインプロセスはどのようなものですか?

キックドラムのEnsembleは素晴らしいね。いつも使っているよ。本当にいつもだよ。道具箱の中で最もよく使っているもののうちの1つで、本当によく使ってる。ハイハットとかそんな感じの音をつくるのが好きなんだ。決まったプロセスはなくて、かっこいいサウンドを見つけるまで、色々試してみるんだ。

 

サウンドをデザインするために時間をしっかりと配分してますか?

そうだね。そのことの秘訣をどこかに書いたことがあったと思う。アイディアに敬意を払うために、いつも意識している努力なんだ。失敗した時はそれはそれでオッケーだけど、努力が重要なんだよ。サウンドデザインの世界に没入するためのスペースを自分に与えるために必要な努力って意味だよ。

 

それでは、あなたは「違う日には違う帽子をかぶってる」ような人物なんですか?

その通り。でも、Telefon Tel Avivについては、ミックス作業というプロセスがあったことは一度もない。「よし、アルバムをミックスする時間だ」って感じじゃなくて、曲が完了した時には、全てが仕上がっているんだ。作業を進めながら、同時にミックスしていく。もちろん、他の人と一緒に仕事する時は、全然違うよ。でも、Telefonの時は、常にEQを細かく動かしてる。僕にとっては、そのような作業全てが、まとめて1つのプロセスなんだ。

ミックス作業は、完全に作曲の一部なんだ。ステレオで曲を再生してる時、音量がどうかとか、トップの空間はどれぐらいかとか、フェーズをわざとずらしたりとか合わせたりとか。。。様々な決断があると思うけど、僕にとっては、こういった選択全てが作曲行為なんだ。これらがミックスのプロセスだとは思ってないよ。

 

なるほど、わかります。

たぶん、正確にはちょっと違うかもしれないけど、ミックスや音楽制作については、一般的に2種類の考え方があると思う。1つは「アイディアを形にできるようにできる限りうまくやる」って方法で、もう1つは僕がやってる方法なんだけど、時々、間違えをつくるんだよね。なぜなら、その曲にとっては、そっちの方が作曲的な意味で適切だから。

つまり、面白いことなんだけど、他の人がオーディオを取り扱う時はだいたい「うーん、ここは間違ってて、ここはフェーズがずれてて、ここの音は歪んでるな」って感じだよね。だけど僕の場合は「まさしく、その通り。これこそまさに、僕が欲しかったサウンドなんだ」って感じで、だからそれは作曲的な選択なんだよ。

 

良い音だったら、それでいいということですか?

そうだね。例えば、Aphex Twinの「Selected Ambient Works Volume I」はカセットテープからマスターをおこしたもので、犬の糞みたいなサウンドだけど、それがパーフェクトなんだ。どこも変える必要がない。それが魅力の一部で、美しさの一部でもある。

今回のアルバムにもめちゃくちゃになってるような部分があって、マスタリングエンジニアにこんな感じで言われちゃったんだ。「お前何やってるんだ? いい加減にしてくれよ、まったく…」

 

でも最終的には、素晴らしいサウンドになりましたよね。

素晴らしいサウンドかどうかはわからない。でも、僕が欲しかった通りに鳴ってるサウンドだっていうことは確かだね。

 

Photo credits: Larissa Matheus

「Dreams Are Not Enough」 はこちら。

Before you go…

Take a deeper dive into FORM with this video from Derugrab the demo here and follow along. And if you don’t have LazerBass yet, what are you waiting for? The full version is free as part of KOMPLETE START.

Finally, make sure you’re following Josh on Twitter. Come for the political commentary and memes, stay for the no-nonsense production tips you’ll wish someone told you sooner.

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