• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

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    Interviews
by Evan James

40’S VERY OWN DRUMS & KEYSの制作の裏側

OVOのサウンドを見事に再現した2つの新しいインストゥルメントの制作過程について、Drakeを手がけるプロデューサー、Noah “40” Shebibが語ってくれた。新しく公開された独占ドキュメンタリーもお見逃しなく。

「ある日、私は寒い街角に立ち、目の前を通り過ぎて行く車を眺めながら「なぜ私には車がないんだろう?」と自問していた。車を手に入れるなんて夢の話だった。その翌年、自分は同じ生活を続けていたにも関わらず、自分の手がけた曲がラジオのナンバーワンヒットになっていたんだ。」

これがあのNoah “40” Shebibの発言であることに驚きを隠せない。18回のグラミー賞ノミネートと2回のグラミー賞受賞歴を持ち、マルチプラチナ認定の売上を誇るDrakeの御用達プロデューサー、OVOレコードレーベルの共同設立者、そしてLil Wayne、Jay-Z、Nas、Sadeなど数多くのアーティストとのコラボレーターでもあるShebibはとても謙虚な人間だ。「ヒップホップ界において、私は自身のことを常にビジター側の人間だと考えてきた。私はDrakeにアーティストとしての可能性を十分に感じていたけれど、自身にはそのような可能性を感じていなかったし、今のような立場になるとは想像していなかったよ。」

“40”になるまで

我々はスーパープロデューサーである40と2つの新しいインストゥルメント、40’S VERY OWN KEYS40’S VERY OWN DRUMSを制作するため、彼が住むトロントへと向かった。そこで彼はトップ100のチャート入りを果たすまでの長い下積み時代について語ってくれた。

Shebibは17歳の時にアパートの地下室に引っ越し、そこで約5年間、トロントで活動するヒップホップアーティスト等のためにトラックを作り続けた。その中でも特に有名なのはラップチームのEmpireだろう。彼は間に合わせ状態のホームスタジオで次々と音楽を作り出し、当時の長期間に及ぶ不眠続きのセッションから「40 days and 40 nights=40泊40日 」と言うニックネームが与えられた。彼はエンジニアとして常に時代の先を見据えており、サウンドや個性の追求を欠かさなかった。「当時、音楽制作の中心にあったのはMPCとKorgのTritonだ」とEmpireのMC、Tony “Scandalis” Ranksは我々の新しいドキュメンタリーの中で語ってくれた。「(そんな中)40はパソコンでビートを作っていたんだ。ラップトップでProToolsを使っていることに皆驚いたし、理解が追いつかない者もいた。俺達はここに座って「この街から成功する奴なんて出てくるのか?」とよく語り合ったよ。トロントと言う街に文化がない時代から、40はすでにヒップホップ文化の一部だったんだ。」

Noah “40” ShebibとNIの独占ドキュメンタリーはこちらでチェックしよう:

40の制作哲学

次第に40は俳優のAubrey Graham、又の名をDrake、と仕事をするようになり、そこから伝説が始まった。彼には「音楽の中で一番重要なのはアーティストのための余白を作ること」というプロデューサーとしての厳格な制作哲学があり、Champagne PapiやOVOのメンバーであるPopcaanやPARTYNEXTDOORなどのコラボレーション相手を問わず、それを守り続けている。「プロデューサーとしてのマントラなんだ。音楽に限らず、何かを作る時はあまり考えすぎないようにしている。盲目的な環境に身をおいて、できるだけ素直な心の声を表現するように心がけているよ。」

この「アーティスト優先」なアプローチは彼がDrakeと作り出した作品群からも感じられる。「音楽的に説明すると、私は高音を削ることで余白を作り出しているんだ」とShebibは語る。「例えばハイハットやパーカッションの高音域に存在するトランジェントを削って、それを低音域に移動させた場合、これらの要素の上にDrakeの居場所が作られるんだ。」Sadeのサウンドに強く影響されたという40はサンプルレートの劣化、ビットクラッシュ、そして様々なエフェクトを掛け合わせることによりボーカルの周波数に余白を作り出し、Drakeの声が引き立つように設計した。その独特なサウンドは今では彼のシグネチャーサウンドとして知られている。

The 40 Macro

40s Very Own Drumsと40s Very Own Keysの特徴的な機能である「40 Macro」では彼が制作時に必ず使用するという様々なエフェクトをコントロールすることができる。「私はローパスフィルター、周波数の削除、そしてサンプルレートの劣化などの手法を使って、アーティストの声が通りやすい、ローファイなサウンドを作ってきた。」これを使えば40のサウンドを再現したり、明るすぎる音をトラックに馴染ませたりすることが可能になる。「仮に私がとても明るい音をトラックに入れたとして、このノブはその音に思いっきりダメージを与えることが出来るんだ。もちろん、良い意味でね。」

 

40’S VERY OWN KEYS

40は自身のクリエイティブな作曲手順に従って、シグネチャーインストゥルメントの制作を始めた。「プロデューサーとしての居場所を見つけて、自分らしいプログラミングスタイルやスイング感が形成されたら、それはあなたを定義する要素となる。私は一般的なヒップホッププロデューサーとは真逆の手順でトラックを作っていて、ドラムからではなく、自分の好きなキーボードやピアノ、パッドなどからトラックを作り始めるんだ。」

そのような経緯で40と彼のチームは40’S VERY OWN KEYSから制作を始め、彼の自宅、そしてトロントにある見事なState of the Art Studiosにある機材を使ってサンプリングが行われた。それらの音はダイナミクスの個性や音色を考慮してペアが組まれ、その後にリバーブ、ディレイ、コーラス、そしてフランジャーなどのマクロやエフェクトが追加された。「最終的にとても美しいサウンドに仕上がって、「すごい、こんなサウンドのする物は他に知らない」と感じたよ。これらのサウンドはどれもアーティストのために余白を作り出す様に設計されているんだ。」

 

40’S VERY OWN DRUMS

40’S VERY OWN KEYSの制作後、40は40’S VERY OWN DRUMSの制作を始めた。「私はミニマリストなドラムプログラマーなんだ。1つのキックとトムしか使わないこともよくあるよ。」そのため、40と彼のチームは各要素がそれぞれ良い音でありながら、組み合わせても使用することができるミックスキットを作り出した。それに彼らは低音部分にシンセを混ぜ込み、ハーモニクスを足し、それらを生ドラマー、古い髭剃りの刃が入った瓶、そして水ギセルなどを元に作られた多種多様なサウンドのパーカッションと組み合わせた。「キックは低音がしっかりとした鋭いサウンドで、サブベースはゴロゴロと鳴動するサウンドなんだけど、そのキットのキックとは相性が良いんだ。自分のレコードではまさしくそんなキックのサウンドが欲しいんだ。」

Visual design

製品のビジュアルデザインを担当したのは40の親友であり、オンタリオで活動するグラフィティアーティストのKWESTだ。全てのサウンドは40が所有するSOTAスタジオの機材を使って収録されたことから、スタジオ自体を製品に反映したいと言う強い気持ちが彼にはあった。「ドラム音源のデザインはスタジオで、キーボード音源のデザインは自宅なんだ。スタジオは私にとってとても大切な場所であり、自分を定義する場所でもあるから、製品には絶対反映させたかったんだ。」

Drakeも40のスタジオを賞賛しており、カナダ人のインタビュワー兼ミュージシャンであるNardwuarとのインタビューでは「State Of The Art Studiosはその名に恥じない」と語っている。「アルバム制作には最高な環境なんだ。集中して自分の世界に入り込むことができるし、そこには40という音のスペシャリストが居る。我々のアルバムが最高なサウンドに仕上がっているのは、彼が天才だからさ。」

 

Workflow

40にとって予期せぬ恩恵だったのは、これらのシグネチャー音源を使用することで彼自身のワークフローが効率化されたことだ。「(これらの音源を)最近の全ての作品で使用しているよ。Drake ft. Lil BabyのWants and NeedsやCertified Lover Boyのアルバムにも使用している。サウンドやエフェクト処理の工程がとても効率化されて、制作時間が短縮されたんだ。今は作曲のスタート地点としてこれらの音源を使っているんだけど、今後の制作に欠かせない存在になることは間違いないね。」

 

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