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by Paul Hanford

「レポーター・ガール」の作曲家Nathan Lanierのサウンドとストラテジー

Apple TV+の最新ミステリードラマの作曲家による伝統とデジタルの融合 – そして、無償REAKTORエフェクトの情報も。

LA在住のアーティストNathan Lanierは憧れの作曲家だ。20年に渡り、Justin Bieberのコンサートフィルム「Believe」からヒットしたSFウェブシリーズの「Halo 4」まで、世界中の映画やゲームの大規模プロジェクトに作曲家として関わってきた。 Lanierの最新作は、先月公開されたApple TV+のミステリードラマ「レポーター・ガール(英題: Home Before Dark)」のサウンドトラックだ。幅広い映像作品に関わってきたポートフォリオに魅了されながら、ハリウッド最前線の生の声に迫る。

映画を見て、その楽曲に心を奪われ、そして、それを自分の仕事にしたいと思ったことはあるだろうか? Nathan Lanierのインスピレーションの原点は、学生時代を過ごしたニューヨークの身近な街角にあった。

「常に映画が好きだった」とLanierは言う。「通学時、毎日撮影現場の横を通っていたんだけど、いつも何かが足りない気がしてた。そしてある夏、ちょっとした音楽を作り始めてみたんだ」

そこから数十年経って、当時の”きっかけ”は驚くべき結果へと変貌をとげていた。Lanierは多くの有名な映画、TV、ゲーム、そして、コマーシャルのために作曲してきた。それに加え、様々なジャンル、雰囲気、媒体等、多岐に渡るプロジェクトに関わりながらも、芸術的手腕とプロフェッショナルな才能の両方を披露してきた。具体的には、人気ダンス映画「ハートビート」のアップビートな振り付けのリズムから、テンションを最高潮に盛り上げてくれる「マックス・スティール」のスリリングな楽曲までを網羅し、それに加えて、マイクロソフトやアメリカンエクスプレスのCM曲も手がけている。

LAの家から電話インタビューに答えてくれたNathanは、明るくエネルギッシュな印象だった。 彼はLAで、Apple TV+の新番組「レポーター・ガール」の曲作りに熱中していた。「レポーター・ガール」は、現代のウェブシリーズの鋭いエッジと80年代の素晴らしいアンブリン映画の思い出を混ぜ合わせたような雰囲気のミステリースリラーだ。まずは彼に、John Williamsの楽曲を思い起こさせるような要素について質問した。

「その時代について、製作者のDana Fox、John M. Chu、そして、Dara Resnikがとても好きなことは、多くの映画がこどもの目を通して描かれているということなんだ。そのマジックを音楽にも取り込みたかったんだけど、同時に、現代的な要素の融合も必要だった」

予想を超える展開を保ちながらレトロな驚きのエッセンスを取り込むために、Lanierが準備した音のパレットは、自身のバックグラウンドであるクラシック音楽のオーケストレーションに電子音楽の巧みな表現を混ぜ合わせたものだった。今回の楽曲の中でREAKTORが使われているのは、この部分だ。

「胸焼けがするような感情を、サウンドとして音楽的に作りたかったんだ」

「このVHSビデオプレーヤーの周りに全てが集約してるんだ」と、ユーザーライブラリでダウンロードできる無償エフェクトについてLanierは言った。「キャラクターについては言いたくないけど、確実に、物語の中心的なものになってるね」そのビデオのトラッキングを調整する時のような不安定なピッチの音質が、彼にインスピレーションを与えた。「胸焼けがするような感情を、サウンドとして音楽的に作りたかったんだ。だから、チェロを録音して、その音をREAKTORで混ぜ合わせて、VHSの不安定な音みたいなパッドを作った」

Lanierのお気に入りのNI製品はREAKTORで、約15年前にKONTAKTを紹介されて以来、彼のスタジオの中核を力強く担っている。

「KONTAKT PLAYERは本当にいろいろな使い方ができる。Logicを使っていて、381トラックくらいのテンプレートがあるんだけど、そのうち95%のトラックは、たぶんKONTAKTを通して走らせてると思うよ。ほとんどのインストゥルメントは、KONTAKTのものかKONTAKTで使えるサードパーティのサンプルライブラリなんだ。まさしくオペレーションの主力だね」とLanierは言う。

Lanierは、彼が学んできたクラシック音楽を補うものとしてNI製品を使っている。音楽を愛する一家に育ったが、家族の中でアカデミックな音楽の道に進んだのは、彼と彼の兄弟が初めてだった。若きNathanが街角で映画の撮影現場に出会ったのは、名門であるニューヨークのマネス音楽大学でヴァイオリンを学んでいた時のことだった。大いに鼓舞された彼は「学生ローンのお金の一部を使って、初めてのコンピュータとキーボード、 Roland XV5080を買った。僕の初めてのシンセだった」と語る。やがて、これが初めてのプロフェッショナルな仕事に繋がっていった。

「映画『ロード・オブ・ザ・リング』の2作目のアシスタントとして、ほんの少しだけHoward Shoreと一緒に働く機会を手に入れたんだ」その後ロサンゼルスに引っ越した彼は、長編映画に初めて関わることになった。スタントマン達のグループが製作した低予算映画だ。「90分の音楽を制作するのに500ドルもらうみたいな感じだったと思うよ」と、当時を思い出し、笑いながら語った。

Lanierは、ロサンゼルスらしい自信と太陽に照らされた禅マインドを兼ね備えたユニークな人物だ。「ハリウッドで成功してる人たちは、家に帰らないんだよ」と彼は言うが、同時に、無邪気な思慮深さから、家で音楽制作をするプロデューサーなら誰もが共感できるこんな告白もしてくれた。「夜に何か曲をつくって、自分は天才なんじゃないかと盛り上がる。だけど、次の日の朝にその曲を聞き返して、人生はこれでいいのかと考え直し始める。こんなことが何回もあったね」

そんな彼は、映画音楽制作の困難な道を歩み始めようとする人々に、どんなアドバイスをするだろうか?

「初めてスタートする時、物事がこうなって欲しいとかこうなるんじゃないかって予想していることがあると思う。でも現実には、『こうなるなんて、全く思ってもみなかった』と思うような状況に遭遇して、簡単に失望してしまうだろう。ゴールを設定してそれに向かうことはとても重要だけど、紆余曲折も必ずやってくる。想像通りに物事が進まない時には、流れに身を任せて、楽しみながら成り行きに適応する。そして、この瞬間を味わうことだね」

Lanier は続ける。「僕には一緒に働いてくれるチームがあるんだけど、新人が入ってきて曲を一緒に作る時、こう言うようにしてる。『まさに今この瞬間、仕上がったサウンドに興奮してるだろ? この瞬間を楽しんで。なぜなら、今がこの音を楽しめる最後の時だから。クライアントに曲を送った後に何が起こるかというと、クライアントはそのサウンドを変えちゃうんだ。彼らはプロだから、プロジェクトを最高なものにするための変更を加えて、最終的には、君の作ったオリジナルのサウンドとは全く別のものになってしまうんだよ』」

バンドのメンバーやソロのプロデューサーとしての仕事に比べて、映画製作の現場では、個人的なエゴを超えてのチームワークが極めて重要だという点を、Lanierは強調する。

「アーティストは自分自身の声を重要視して執着することが多いよね」と彼は言う。「だから、音量を小さくされたりとか、曲の一部がカットされたりとか、誰かが曲を変更すると、失望してしまう。でも、僕たちは貢献するためにここにいるんだよね。特にコラボレーションが重要な映画やTVの現場では、ギブ&テイクをすべきだと思う」

Lanierは、セレンディピティの重要性についても強調している。特に、間違えから生まれる予期せぬ素晴らしい驚きは重要だ。「人は物事をネガティブな方向に考えがちだけど、これまでにどれだけ多くのハッピーアクシデントに出会ったことがあるか考えてみて。例えば、プラグインを間違ったトラックに入れてしまったことで、逆に、素晴らしい音が生まれて曲が完成するといったアクシデントに出会ったことがあるだろ?」と彼は説明する。

テクニカルな点でどんなことが彼を助けてくれているかについて、質問してみた。「話半分に聞いて欲しいんだけど、 テンプレートを楽譜の順番にきちんと整えることだね。正直に告白すると、僕はちょっとだけ強迫性障害気味で、とても保守的な音楽学校に通っていた。 だから、僕のバックグラウンドから考えると、きちんと並べることは正しいやり方なんだ。誰でも簡単に理解できるような普遍的な方法だから、編曲家との仕事のときにも役立つよ」

最後に、Lanierは、作曲に果てしなく長い時間をかけたり、プラグインの選択に取り憑かれたりして、道を失うべきではないと考えている。

「6時間制作作業をして『しまった、時間はどこに消えてしまったんだ? 僕は一体何をやってたんだ?』って感じになることは、簡単だよね」Lanierはバランスが重要だと言う。「制作作業だけに没頭してしまうかもしれないけど、素晴らしいアーティストになるためには、外に出て、他の人々と交わって、様々な体験をすることが重要だと思ってる。多くの偉大なアーティストは、人生の様々な体験、感情、記憶を生かして、そこから、音楽やアートを生み出しているんだ」

 

レポーター・ガールのシーズン1が配信中。サウンドトラックはこちら、そして、Apple TV+で本編をチェックすることもお忘れなく。

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