• Eomac + Kyoka = Lena Andersson

    アイルランド人プロデューサーEomacと、日本人アーティストKyokaのコラボレーションプロジェクトに迫る。…

    Interviews
by Craig Anderton

バーチャルギターを本物のセッションプレイヤーのようにする方法

セッションプレイヤー兼プロデューサーのCraig Andertonが、ギターライブラリに人間味を与えるコツを伝授する。

一見するとSESSION GUITARISTシリーズはギターリスト以外のためのものに見えるかもしれないが、実際は経験豊かなプレイヤーであっても、バーチャルセッションプレイヤーを制作ワークフローに組み込む余地がある。私自身もスタジオミュージシャンとして数年の経験があるが、他のギタープレイヤーと一緒に働くことには大変大きな価値があると実感している。たとえそれがバーチャルなプレイヤーだとしてもだ! そしてアコースティックの演奏パートを補ってくれるSTRUMMED ACOUSTIC 2は、例えば、時には独自の演奏を行い、そしてもちろん、時には私がJ-45で演奏中にブレイクを入れてくれる。

あなたがギタリストであろうとなかろうと、SESSION GUITARISTシリーズや他のギターライブラリを使う時のコツは、単に正確なだけではなく、リアリティ溢れるサウンドになるようにニュアンスや人間らしさをどうやって加えるかという部分にある。そこで今回は、次のトラック制作で使うのにぴったりの簡単なコツをまとめて紹介する。

手軽なカット&ペーストでパターンに変化を加える

パターンに変化を与える最もシンプルな方法としては、まず最初に、KONTAKTのトラックをレンダリングかバウンスして、オーディオにコンバートし、次に、八分音符でスライスして、それを動かすことができるブロックとして扱う。(八分音符以外でもいいが、これが初めの一歩としてオススメだ) この方法を使えば、ほんの少し変えただけでも、有用なバリエーションを加えることができる。 (画像1)

画像1: Audio Example 1の違いは最後の2小節にあり、画像の2つ目のグループのように八分音符のセクションが入れ替わっている。

おもしろいことに、いくつかのセクションをコピーしてどこか他の場所にペーストしても、上手くいかないことはほとんどないようだ。ぜひ試してみてほしい! 一般的には、この方法をパターンの最後の辺りで使って次のパターンへと導くやり方がオススメだが、時として、セクションをミュートしてスペースを与える方法も変化やドラマを生み出してくれる。

コードとパターンを組み合わせる

パターンは素晴らしいが、時にはただコードをかき鳴らしたい時もあるだろう。黄色のキーは「エンディング」と考えられているが、A#1は大きくフルサウンドなコードが鳴り響くのに対し、B1はスタブコードだ。A#1かB1を演奏する直前にパターンに関連したノートを弾くことで、コードの根音を指定することができる。パターンとは違い、これらはベロシティに反応するので、パターンを増やすためにダイナミックコードを使うことができる。(Audio Example 2)

リズミカルなフェーダーオートメーション

8トラックのミキサーが贅沢だった時代の話だが、 当時私がColumbia Recordのスタジオでセッションしていた際、ラッキーなことに、エンジニアが後に大ヒットした曲のミックス作業をしている所を見ることができた。彼は曲を流しながら、目を閉じ、曲にあわせてフェーダーを繊細かつリズミカルに動かしていた。その教訓を絶対に忘れないね。画像2は、Strummed Acousticで加えたフェーダーオートメーションのカーブで、ハードウェアのフェーダーコントローラーを使ってダイナミクスを強調している。マウスを使って同じオートメーションを描こうとすると、大変時間がかかるだろう。

画像2: Strummed Acousticの音量のリズミカルなオートメーション。Audio Example 3では、初めの4小節はオートメーションなし、次の4小節は音量にリズミカルな変化をつけ、違いがはっきりするように若干強調して演奏している。

ピッチホイールを超えたアクセントをつける

パターン全体を一定のベロシティ値で固定させたいとは思わないだろうから、パターンのダイナミクスを変化させる時にべロシティは使えない。その代わり、表現豊かなピッチベンドホイールを使えば、パターンにアクセントを加えたり抑揚を滑らかにさせることができる。しかし、NIのTransient Masterを使えば、演奏を強調させたり静かなセクションの中で音を抑える時に、さらに遠くまで進むことが可能だ。

Audio Example 4では、画像3のように、初めの8小節はTransient Masterでのプロセッシングなしで、その後、短いフェードに続いて、次の8小節はAttackのコントロールをオートメーションしている。また、Transient MasterのLimit機能は大変便利で、ヘッドルームを上手く保ってくれる。

画像3: 9〜17小節目のオートメーションが、Transient MasterのAttackパラメーターをコントロールしている。

ビートの前ノリと後ノリ

音楽とはテンションとリリースが全てで、秘訣の一部にはビートの緩急が関わっている。Offsetのコントロールを使って、ビートを後ろに緩ませるとソロの後に出て来るようなリラックスしたヴァイブスになり、前のめりに急がせるとソロへの前振りになるようなビートがより押し出された感じになる。しかし、これは一度設定したらその後は忘れていいものではなく、オートメーションを適切な部分で使う必要がある。画像4は、オフセットのオートメーションをポジティブにしてパターンのビートを少し後ろに引いた例と、オフセットをネガティブにしてビートを前に進ませた例だ。

画像4: Audio Example 5では、3小節目と4小節目でビートが後ノリに、7小節目と8小節目ではビートが前ノリになっている 。オフセットの変化がわかりやすいように、メトロノームと一緒に演奏した。

Swingのオートメーションを上手くやることは若干難しいが、例えば半小節程度、比較的短い長さのSwingを少量加えると、変化がより生まれて、パターンがさらに流れるようなサウンドになる。

フレットノイズのオートメーションもまた、表現力を与えてくれる。 フレットノイズは、速く激しい演奏で運指にあまり注意を払っていない時に起きる。これを選択的に強調するには、Transient MasterのAttackを上げ、お好みならビートを押し出すためにほんの少しだけネガティブなオフセットを加えると、デフォルトのパターンより激しいサウンドになる。

全てのサウンドのパラメーターはオートメーションにできるので、他のプラグインやミキシングのテクニックなしで、曲のパートに沿った形でギターのキャラクターを必要なだけ変えることができる。Humanize、EQやCompressionの分量、Reverbのボリュームなど、これら全部がオートメーション可能だ。

低音と高音のボイシング

Strummed Acousticで2つのInstanceを用いて低音や高音のボイシングを使うことは、より大きな変化をギターに与えてくれるが、アレンジメントの一部としてモードを変更することもできる。ギタリストは大きな音で曲にアクセルをかけたい時に低音のボイシングを使う傾向があり、「より小さく」鳴るような高音のボイシングは静かで内省的な部分に使われることが多い。モジュレーションホイール(MIDI CC#1)を使えばボイシング間をクロスフェードすることができるが、特殊効果的ではなく現実的なセクションでの使い方としては、D2のキーで高音と低音のモード間のトランジションをピックアップして素早く切り替える方法がオススメだ。

 

ソングライティングにも

ギターを実際に演奏する時と比較して、コードとパターンを使った実験の可能性は、違った角度からの視点を与えてくれる。KONTAKTのドラムインストゥルメントの素晴らしいビートを使うことがクリエイティビティを飛躍させてくれるように、Strummed Acousticのパターンも同様だ。コードのプログラムはMIDIなので、CubaseやStudio Oneのように、Strummed Acousticで制作した楽曲構造を他のインストゥルメントを使ってさらに広げていくこともできる。

 

ライトガイドのプログラミング

キーボード上でキースイッチの位置を教えてくれる機能は便利だが、Strummed AcousticはNKS対応ではないので、KOMPLETE KONTROLのキーボードはライトガイドを表示してくれない。しかし幸いなことに、簡単な解決方法がある。

KOMPLETE KONTROLをスタンドアローンモードで開き、右上にあるMIDIコネクターのアイコンをクリック、新しいテンプレートを作って「Session Guitarist – Strummed Acoustic」と名前を付ける。KEYSのタブをクリックして、スプリットを全部で6つ作るために+Splitボタンを5回クリックする。その後、Key Zoneをクリックして選択し、選択したKey Zoneの上下境界線のどちらかにマウスカーソルを当てて、任意のサイズになるまでドラッグする。Key Zoneのサイズはそれぞれ、赤はC1 – G1、黄色はG#1 – C2、緑はC#2 – D#2、青はE2 – D#5になるように設定し、Strummed Acousticの範囲外については、間違ってキーを弾かないように、それ以外の色を設定しておこう。(画像5)

画像5: Controller Editorを使って、Session Guitarist – Strummed Acoustic用のライトガイドをプログラミングした。

 

ここまで終えたら、KOMPLETE KONTROLを閉じ、KONTAKTをインストゥルメントとして選んで、Strummed Acousticを立ち上げる。もちろん、設定後に他のインストゥルメントでKOMPLETE KONTROLプラグインを使うことも可能で、Strummed AcousticとKOMPLETE KONTROLプラグインのどちらなのか、選択したトラックに合わせて適切なモードにキーボードが切り替えられる。

今回紹介したコツは、Session Guitarist – Strummed Acousticについて詳しく知るための一部分にすぎない。ソロアーティストとして働く時の問題の1つは、他のアーティストとコラボレーションする時に、常に同じフィーリングを保つようにしなければいけないということだが、Strummed Acousticを使えば、DrumasonicとNIのプログラマー達やギターを演奏したプレイヤーといったアーティスト達と実際にコラボレーションしているということになる。さらに良いことに、この「セッションギタリスト」は遅刻することなく時間ぴったりにやってきて、セッションが長引いたとしても延長料金を請求されることはないのだ!

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